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ゴシゴシ 自在に石運び…カーリング

 カーリングは、ハウス(円)の中心に、ストーンをより近づけたチームだけが得点できる。相手のストーンをはじくなどの戦略が重要だが、ストーンをどう狙うのか。投げる技術とともに、全体重をかけた激しい動きで、氷をこするスイーピング技術が鍵を握る。ストーンは3〜4メートルも伸びることもある。

スイーピングの指示、「ヤッヤッ ウォー」…

 「ヤッヤッ(掃いて)……ウォー(止めて)」「クリーン(ゆっくり掃いて)」

 ハウスに向かって進むストーンの進路を見ながら、スイーピングの指示が響く。指示を受けた選手は通過するストーンを先回りし、氷面を1秒間に4〜5回激しくこする。

 「大声の時ほど予想外の動きに対処していることが多い」と日本カーリング協会の倉本憲男さんは解説する。回転をかけたストーンは、スピードが速いうちは直進し、低速になると、回転方向に曲がり始める。この動きを分析し、スイーピングの指示を主に出すのが、日本代表のスキップ(リーダー)の目黒萌絵。

 スイーピングの目的は、ストーンの移動距離を伸ばすこと。戦略的には2通りある。

 一つは、相手ストーンをはじき飛ばす「テークアウトショット」や、味方のストーンの距離を真っすぐ伸ばしたい場合。ストーンが直進している時に激しく掃くとよい。

 もう一つは、大きく曲げ、相手のストーンをすり抜けてハウス中心を狙う「ドローショット」など。直進の速度が落ち、曲がり始めた後にスイープすると、曲がりはさらに大きくなる。

氷温1度アップで距離伸ばす

 なぜ、距離を伸ばせるのか。富山大学の対馬勝年・客員教授は、スイーピングで、氷面温度が瞬間的に約1度上昇するためという。「氷は温度が上がると、摩擦力が小さくなる。このためストーンが滑りやすくなると考えられる」と説明する。すぐに温度が下がるので、ストーン近くを掃かないと効果がない。

 野外競技で始まったカーリング。スイーピングは、元々ごみを除くのが目的で、道具は箒だった。現在はナイロンなどの化学繊維製のブラシが主流で、選手の負担軽減のため軽量化も進んだ。

最後に1投 後攻有利

 カーリングは、野球のイニングのように先攻、後攻の10回のゲーム(エンド)で競う。各エンドは、1チーム計8個(1人2個)のストーンを、交互に1投ずつ投げる。最終的にハウス中心に最も近いところにストーンを置いた方が得点。相手チームの内側にあるストーンの数だけ点数になる。ただ、そのエンドで得点すると、次は先攻になるので、作戦が必要だ。

 それでも圧倒的に有利なのが後攻。最後の1投を中心近くに置けば最低1点は取れるからだ。後攻の目標は2点以上の獲得。1点をとり、次のエンドで不利な先攻をとるのか、引き分けに持ち込み、後攻を維持して2点以上を狙うか選択する。ストーンは、最後の1投が中心を狙いやすいよう、ハウスの外側に集める作戦が基本だ。

 一方、先攻は、相手が最後の1投で中心を狙うのを妨害するため、ハウス中心部にストーンを集める。

 作戦司令塔であるスキップは、過去の試合展開を正確に記憶し、多数の引き出しを持つ。最後に投げることも多く、責任は重い。

 トリノ五輪にも出場した目黒萌絵は「作戦のパターンは倍くらいに増えた。一つに凝り固まらず、余裕を持って複数の作戦から選べるようになった」と話す。

1試合150分以上 心身はヘトヘト

 2時間半の長い試合となるカーリングは、集中力を保つ体力が勝負となる。

 スイーピングは、息を止め、全体重をブラシに預ける力業。数十秒間潜水するような無酸素運動に近い。

 足を蹴って、重さ20キロのストーンを投げるスローワーも筋力が不可欠だ。特に、力強くストーンをはじき出すテークアウトショットを狙う時は、スピードが必要で強く蹴り出す脚力が求められる。

 投げるフォームが世界一美しいと言われる本橋麻里の強みは、体の軸がぶれない強い体幹(体の中心の筋肉)と柔軟性だ。ひざを外側に向け、重心を出来る限り下げながら、腕を伸ばした状態で、ストーンと一緒に滑る。ブラシでバランスを保つが、体重を支えているのは左足1本だけだ。

 女子でもスピード、パワーの勝負になる中、日本代表は、トリノ五輪以降4年間かけ、体幹とおしりの筋肉(大臀筋)、肩甲骨の周囲の筋肉を重点的に強化。以前に比べ、ショットの正確さとパワーが向上した。

2010年2月23日  読売新聞)


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