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勝てば英雄、負けると…「金」ラッシュ北朝鮮

 【ロンドン=竹腰雅彦】金正恩(キムジョンウン)体制になって初の五輪となったロンドン大会で、北朝鮮が1日までに過去最多タイの金メダル4個を獲得し、注目を集めている。

 北朝鮮は、特別な報酬制度を設け、中国と同様、国家丸抱えで選手を育成してきたが、今回の活躍ぶりを新しい最高指導者の威信強化や国威発揚に利用していくとみられる。

 北朝鮮の五輪金メダルは1992年バルセロナの4個が最高だった。今回は11競技に56人が参加。欧米主要スポーツメディアは金メダルゼロと予想したが、1日までで柔道女子52キロ級、重量挙げ男子56キロ級、同62キロ級、同女子69キロ級で優勝。男子重量挙げは世界新記録と五輪新記録も樹立した。銀メダルはないが、銅メダルも一つ獲得した。

 北朝鮮メディアは、「世界の耳目を集める輝かしい成果」「一部の偏見と予想をひっくり返した」などと活躍を報道。選手の家族や市民が金正日(キムジョンイル)総書記と正恩氏に感謝し、礼賛する声を繰り返し伝えている。

 北朝鮮にとって今回の五輪は、金日成(キムイルソン)主席生誕100年と重なった特別な大会でもある。在日本朝鮮人総連合会機関紙・朝鮮新報によると、平壌での選手壮行会では、旅行用品など正恩氏からの「贈り物」が選手に渡されたが、正恩氏は事前に一つ一つを自らチェックする気遣いようだったという。

 北朝鮮におけるスポーツは、肉体鍛錬で軍事力強化に役立てるものという位置づけだ。スポーツ政策は政府機関の「体育指導委員会」が統括。能力のある子供を選抜し、各地の青少年体育学校で英才教育を施す。各地の体育クラブなどで特訓を続け、さらに軍主体の職業体育団体などに属して五輪を目指す。

 選抜選手は、親元を離れ合宿生活を送る。朝鮮中央通信によると、柔道女子金メダルのアン・グムエ選手の母親は、「20年間家にも帰れず、他の女性のように化粧もせず、訓練を積み重ねた結果だ」と号泣した。

 五輪金メダリストなどには、「人民体育人」「共和国英雄」などの特別な称号が贈られる。「人民体育人」となれば、高級アパートや乗用車、特権階級である朝鮮労働党幹部の待遇が与えられるとされる。96年のアトランタ五輪柔道女子で谷亮子を破り優勝したケー・スンヒや99年の世界陸上女子マラソンで優勝したチョン・ソンオクらが有名だ。

 だが、失敗には容赦がない。サッカーの北朝鮮代表は、93年のW杯予選後、98年まで国際舞台から姿を消した。予選で日本と韓国に敗れたことに金総書記が激怒し、選手やコーチを工場や炭鉱送りにし、対外試合を禁止したためだとされる。

2012年8月3日10時00分  読売新聞)

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