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    最高難度の「エア」育んだ…堀島選手のふるさと訪問

    • 冬季アジア札幌大会・男子モーグルで優勝した堀島行真選手(2017年2月26日)=笠井智大撮影
      冬季アジア札幌大会・男子モーグルで優勝した堀島行真選手(2017年2月26日)=笠井智大撮影

     昨年3月のフリースタイルスキー・モーグル世界選手権で2冠に輝き、平昌オリンピックでメダル獲得が期待されている堀島行真選手(20)(中京大学2年)。実は雪が少ない地域で生まれ育ったと聞くと、どこでモーグルと出会ったのだろうと不思議に思う人は少なくない。常に最高難度にこだわる「エア」(空中技)のセンスをどこで磨いたのか? 堀島選手のふるさと、岐阜県池田町を訪れた。(笠井智大)

     堀島選手の名前が一躍有名になったのが、昨年3月にスペイン・シエラネバダで行われた世界選手権。初出場ながらモーグル予選を1位通過すると、決勝でも高得点を(たた)き出して優勝した。ワールドカップ(W杯)総合6連覇を成し遂げた絶対王者、キングズベリー(カナダ)を抑えての勝利に日本中のモーグルファンが驚いた。翌日のデュアルモーグルでも優勝し、その実力は世界に知れ渡った。今季はシーズン序盤こそ低迷したが、1月のW杯第7戦で初優勝。オリンピックの足音とともにグンと調子を上げてきた。

     堀島選手が生まれ育った池田町は、広大な濃尾平野の最北端に位置する人口2万4000人の小さな町だ。冬でも雪はあまり降らないため、スキー場もスケートリンクもない。多くのスキー選手を輩出した北海道や長野と異なり、はっきり言ってスキーは身近なスポーツではない。


    町始まって以来のオリンピック選手


    • 世界選手権王者となり、故郷の岐阜県池田町から町栄誉賞を贈られた=湯山誠撮影
      世界選手権王者となり、故郷の岐阜県池田町から町栄誉賞を贈られた=湯山誠撮影
    • エールを送る池田町の岡崎和夫町長
      エールを送る池田町の岡崎和夫町長

     そんな池田町が「町始まって以来のオリンピック選手」と堀島選手の応援に躍起になっている。世界選手権で2冠達成後、第1号となる町栄誉賞を授与すると、町長が呼びかけ人となって「応援する会」を結成した。堀島選手が滑る当日は公民館に町民を集めてパブリックビューイングを行うことを計画している。

     昨年11月、岡崎和夫町長に話を聞くため、町役場を訪れた。正面玄関には「祝2冠達成 堀島行真選手 目指せ平昌オリンピック」の垂れ幕が設置され、町を挙げての応援ムードが漂っていた。

     岡崎町長によると、堀島選手は町内の小・中学校を卒業した生粋の“池田っ子”。中学生になってからモーグルの大会で優勝するたび、町長室まで結果報告に来てくれたという。両親が学校の先生で、礼儀正しいことでも評判だ。

     堀島選手がスキーを始めたのはスキー好きの両親や姉の影響だった。冬になると週末は家族と車で県外のゲレンデに通ったという。モーグルに取り組むようになったのは小学4年から。スキー大会に出場し、賞品としてウォータージャンプ場のチケットをもらったのがきっかけだったという。

     ウォータージャンプ場には、モーグル選手も夏場のオフシーズンに練習によく訪れる。水着姿で板を履き、人工芝のジャンプ台を飛んでプールに飛び込む。堀島選手は後に「雪だと怖くて飛べない高さのジャンプも水なら怖くない」と、夢中で取り組んだ当時を振り返っている。そこで身につけた技術を、今度は雪の上で試してみたいと思うのは当然かも知れない。

     モーグルは「ターン」「エア」「タイム」の三つの要素で競う採点競技。そのうち堀島選手が最も自信を持つのが、エアだ。複雑なひねりを加えた最高難度のエアを武器に、ターンの技術を磨いてここ数年で急成長を遂げた。幼い頃にエアの魅力に取り付かれ、夏場にプールで技術を磨いたことが大きく影響したと言えそうだ。

     ある時、堀島選手は町長に「町としてできることがあれば」と聞かれ、エアの練習用にトランポリンを購入してほしいと打診したという。だが、町の収入で手が届く金額ではなかったため、断念せざるを得なかった。「その後の努力で自らトップ選手になってくれて良かった」と岡崎町長は胸をなで下ろす。

    • 【動画】メダル獲得を期待する、ふるさと池田町
      【動画】メダル獲得を期待する、ふるさと池田町

    夏場に磨いた「エア」のセンス


    • ウォータージャンプでエアの技術を磨く堀島行真(三重県桑名市で)=原田拓未撮影
      ウォータージャンプでエアの技術を磨く堀島行真(三重県桑名市で)=原田拓未撮影

     堀島選手が通うウォータージャンプ場「K-air」を見たくなった。町役場を後にして、単線の養老鉄道に揺られて1時間40分。桑名駅からタクシーで10分ほどの小高い丘に「K-air」はあった。シーズンオフで営業はしていなかったが、所長の浜田聡さんが快く対応してくれた。

     ジャンプ台は大小7つあり、大きいものだと、斜面の長さは30メートル以上。人工芝のような斜面に水をたっぷりまいて雪面の状況に近づけて使用するという。水着にライフジャケットを着用するほかは、本物のモーグルと同じ要領でプールに向かってジャンプする。

     堀島少年は毎週末のようにここを訪れ、多い日は100回もジャンプを飛んだという。父親の行訓さんがその様子をビデオカメラで撮影し、回転やひねりを加えたジャンプに挑戦。親子そろって研究熱心で、基本的なバックフリップから一つずつ高度なジャンプを身につけていったという。

    • ウォータージャンプ場「K-air」の浜田聡所長
      ウォータージャンプ場「K-air」の浜田聡所長

     浜田所長によると、堀島選手は自宅から50キロほどの距離を自転車で乗り付けたこともあるほどの練習好き。「夏場のウォータージャンプで幼い頃からセンスを磨いたことが、その後の成長の土台になった」と解説する。

     堀島選手は世界王者となった今もシーズンオフはここで練習するという。「ダブルバックフルツイスト」(後方宙返り2回ひねり)や「コーク1080」(横3回転)といった最高難度の技の完成度を高めるためだ。浜田所長は「飛び出す時の角度など、本人にしか分からないような細かい所を調整している」と目を細める。

    • 【動画】幼い頃から通うウォータージャンプ場
      【動画】幼い頃から通うウォータージャンプ場
    2018年02月08日 15時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

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    1 norノルウェー 11 9 8
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