文字サイズ
    パラフォト 平昌2018

    大企業・トヨタを動かしたパラアスリート 森井大輝

     パラリンピックのアスリートは、フォーム、プレースタイル、使う用具などが、健常者のオリンピック以上に“十人十色”だ。抱えるハンデに合わせ、いかに自分なりの工夫を加え、プレースタイルを確立できるかが勝負を分ける。そんなパラリンピックに魅せられ、撮影を続ける植原義晴さんの写真とともに、それぞれのドラマを紹介する。(文・メディア局編集部 込山駿)

    • 今季モデルのチェアスキーで、歯を食いしばってターンする森井大輝(2月、菅平高原でのジャパンパラアルペンスキー大会で)=写真提供・MA SPORTS、以下同
      今季モデルのチェアスキーで、歯を食いしばってターンする森井大輝(2月、菅平高原でのジャパンパラアルペンスキー大会で)=写真提供・MA SPORTS、以下同

    日本のモノづくり技術で挑む

    • 回転座位で、表彰台を独占した日本の「パラアルペン三銃士」こと(左から)鈴木猛史、森井、狩野亮。この光景をパラリンピックで再現したい
      回転座位で、表彰台を独占した日本の「パラアルペン三銃士」こと(左から)鈴木猛史、森井、狩野亮。この光景をパラリンピックで再現したい
    • 東京・虎ノ門で開かれた平昌パラリンピック日本選手団の壮行会で
      東京・虎ノ門で開かれた平昌パラリンピック日本選手団の壮行会で

     日本パラアルペン界のエースは、今季用いている自身専用チェアスキーの性能に、絶対の自信を持っている。「世界一格好いいチェアスキー。そう思って滑っているから、競技が楽しくて仕方がない」と声を弾ませる。

     3個目の銀メダルを獲得した2014年のソチ大会後、海外の若手選手たちのレベルアップを肌で感じるようになったという。平昌大会を、自身は37歳で迎える。その舞台で金メダルを獲得するには、何を始めるべきか。「この競技は、用具の力も大きい。『ものづくり日本』の技術力を集結させて、差をつけられれば」と、思い至った。

     ソチ大会後の夏、トヨタ自動車に入社。車づくりで培ったトヨタの技術力を競技用チェアスキー開発にも生かしてほしい――と、社内に訴えた。

     アスリートの情熱は、大企業を動かした。開発の最前線で活躍する技術者16人が、社内公募に応じて集結。取引先の部品メーカーなども加わって、15年夏、「チーム森井」が発足した。

     目指したのは、軽量化、剛性の向上、空気抵抗の減少の3本柱だ。板を除くと約13キロあったチェア部分は、構造の合理化などにより、15%近く軽量化したのに、逆に剛性は3倍に向上した。剛性が上がると、選手の重心移動などがしっかりとスキー板に伝わり、雪面の状態も明確に感じ取れるようになる。つまり、操作性が大幅に良くなった。

     空気抵抗は、車の開発で行う「風洞実験」を重ねてデータを取った。それに基づき、カーボン製のカウル(選手の脚を覆う風よけ)の形を改良したほか、レース中の合理的な姿勢も究明。コースにもよるが、タイムを0.2~0.3秒短縮できるめどが立ったという。

     選手と技術者たちが一丸となって戦う自動車のF1レースを思わせるチーム体制で、「僕が唯一、取れていないもの」と語る金メダルを狙う。

    そのほかの写真もお楽しみください。森井大輝編

    森井大輝(もりい・たいき) パラアルペンスキー日本代表。高校時代にバイク事故で脊随損傷、両下肢の機能を失う。スキーでインターハイに出場する夢が破れた失意の中、テレビで見た1998年長野パラリンピックに勇気づけられ、退院後にチェアスキーを始めた。パラリンピックは2002年ソルトレークシティー大会から4大会連続で出場し、これまでに銀3個、銅1個のメダルを獲得した。ワールドカップ(W杯)では昨季まで2季連続で年間王者。

    植原義晴のまなざし

     チェアスキーが新しくなった。W杯白馬大会で撮影した1年前はカウルなしで滑っていたのに、今季は装着している種目がある。いかにも速そうな流線形だ。

     変わったのは用具だけではない。ここまで胸板が分厚かっただろうか。二の腕も丸太のように太い。さらに一回り体が大きくなった感じがする。すごい鍛え方をしているのだろう。

     ターンの瞬間に写すと、歯を食いしばった絵柄になる確率が、ライバル選手より高いのも印象的。金メダルへの気迫が、体中からにじみ出ている。

    〈撮影者〉植原義晴(うえはら・よしはる) パラスポーツを追うフォトグラファー。出身地の横浜市で写真館を営む傍ら、2016年リオデジャネイロ・パラリンピック、17年パラアルペンスキー・ワールドカップ(W杯)白馬大会、今年のパラアイスホッケー4か国対抗戦などを撮影してきた。1970年3月25日生まれ。

    【パラフォト 平昌2018】

    ・氷上の小さなテクニシャン 上原大祐(2018年3月11日)

    ・女王ファルカショバ、信頼の高速シュプール(2018年3月14日)

    ・成田緑夢、左右違いのブーツがターンを変えた(2018年3月17日)

    2018年03月08日 14時23分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR情報
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP
    プレゼントなど特典が満載! 読売ID登録(無料)はこちら