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    戦略的成長は可能か 「出生率アップ、移民も模索を」 経済研究所 三野和雄教授

     「失われた20年」と呼ばれる低成長が続いた。

     1990年と2011年を比較すると、世界経済に占める日本の国内総生産(GDP)は13・8%から8・3%に下がり、国民1人当たりの実質GDPは経済協力開発機構(OECD)加盟国中3位から17位に転落した。

     経済学者は犯人捜しを続けてきたが、原因は一つではない。バブル崩壊後、企業は防衛的になって貯蓄が増え、技術革新などへの投資を控えた。一方で産業内や企業内での生産性は低下し、財政も悪化している。雇用形態が変わり非正規社員が増え、賃金も下がった。

     ◇若者・女性の活躍促進

     池田内閣が、国民所得倍増計画を推進した時代は日本も高度成長期だった。この時代を境に、60年には約16兆円だった名目GDPが70年には約60兆円になった。計画は企業と家計の成長意識を刺激し、カンフル剤となる有効な戦略だった。

     安倍内閣の経済政策を見てみよう。

     昨年発表された「日本再興戦略」には民間投資の活性化や若者・女性の活躍促進、研究支援体制の充実化など多くの政策が盛り込まれている。

     「失われた20年」を「30年」にしないため、10年以内を見据えた戦略が重要だ。財政再建に反したり効果が表れるまで時間を要したりする戦略はそぐわない。

     そうすると、日本再興戦略では、総需要を刺激する民間投資の活性化や、賃金上昇による消費需要増加をもたらす若者・女性の活躍促進などが効果的だ。

     ◇政治のリーダーシップ

     10年を超える長期戦略も忘れてはならない。

     特に人口問題への対処は持続的な経済成長のために重要だ。人口減少と高齢化が同時に進む日本では、労働力の低下や社会保障負担の増大などを招く。何よりも、新しいものやアイデアを生み出す力が衰退する。出生率引き上げの政策に加え、移民の受け入れも模索するべきだろう。

     これらを実行できれば戦略的成長は可能だ。ただし戦略の多くは既得権益層の抵抗と、しわ寄せを被る層を生み出す可能性が高い。政治の強力なリーダーシップと、しわ寄せを被る層の支援体制確立が必要だ。

     □みの・かずお□ 1973年、関西学院大経済学部卒。広島大助教授、神戸大教授などを経て2009年から現職。専門はマクロ経済学。14年6月から日本経済学会副会長。

    2014年06月23日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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