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    使用済み核燃料の処理について 原子炉実験所

    •     山名教授
          山名教授

     ◇「核変換のための化学分離を探る(原子力問題への化学的取組)」 山名元・教授

     国内の原子力発電の使用済み核燃料は、今後累計4万トン以上もたまる見込みで、解決策が求められている。

     1トンの使用済み核燃料の中には、ウランが分裂してできたヨウ素やセシウムなどの核分裂生成物が約40キロ、ウランが中性子を吸収してできたプルトニウムが約10キロ含まれる。アメリシウムなどの超ウラン元素と呼ばれるものも混じっている。

     これらの毒性が十分に減るまでには10万年ほどかかる。最初の1000年は半減期(放射線を出す能力が半分に減る期間)が短い核分裂生成物の毒性が主で、その後は半減期の長い超ウラン元素の毒性が主になる。

     我々は、超ウラン元素を分離回収し、粒子加速器で発生させた中性子で核分裂させ、減らすシステムの開発を目指している。実現すれば、深い地中に埋める地層処分は、管理期間が比較的短くて済むようになる。

     課題もある。超ウラン元素の分離は、水や酸を用いる従来の方法では複雑になることだ。そこで高温で溶かした塩(溶融塩)を用いる基礎研究を進めている。

     溶融塩の中で電気分解などすれば、超ウラン元素をうまく選択的に回収できる。この方法で精度の高い分離ができるようになれば、核廃棄物の問題解決に大きく貢献できるだろう。

     □やまな・はじむ□ 1981年、東北大工学研究科博士課程修了。動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)主任研究員などを経て、2002年から現職。専門は核燃料サイクル工学。

    •     森教授
          森教授

     ◇「粒子加速器と原子力」 森義治教授

     原子力発電で特に問題になるのは、使用済み核燃料に含まれる半減期の長い放射性物質だ。一般的に、軽い元素は重い元素に比べて半減期が短いため、重い元素に中性子を当てて核分裂させ、軽い元素に変えれば半減期を短くできる。

     ただし、軽いのに半減期が長いものもある。代表的なのはテクネチウム99やヨウ素129で、中性子を当てても反応を起こしにくい。

     これらの対処法として研究が進むのは、電子に似た性質だが200倍も重い素粒子「ミューオン」を加速器で発生させて照射し、別の元素に変える方法だ。例えばテクネチウム99にミューオンがくっつくとモリブデン98に変わる。これは極めて安定的な元素で、放射線を出さない。

     ミューオンの良さは、中性子とは異なり、多種多様の放射性物質を作る核分裂を引き起こさないことだ。

     1秒当たり10京(京は1兆の1万倍)個単位のミューオンを発生させれば、原発1基分の使用済み核燃料を150年ほどで処理できる計算になる。現状では国内の大型加速器施設で1万分の1程度の発生効率だが、技術的には可能だ。

     原理的にどんな放射性物質も安全な物質に変える加速器の役割は、今後ますます大きくなるだろう。

     □もり・よしはる□ 1978年、九州大工学研究科博士課程修了。東京大原子核研究所教授、高エネルギー加速器研究機構教授などを経て、2005年から現職。専門は加速器物理学。

    2014年08月18日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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