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    深層崩壊の発生場所の予測 航空レーザーで危険度見極め 防災研究所 千木良雅弘教授

     今年8月、広島市北部で起きたが、豪雨や地震による山腹の崩壊は毎年のように国内外で起きている。

     斜面の浅い部分にある風化した地層が崩れる場合「表層崩壊」、深い岩盤にまで及ぶと「深層崩壊」と呼ばれる。

     膨大な土砂が時速100キロを超える速さで長い距離を流れ下るのが、深層崩壊の特徴だ。土砂が河川をせき止めて「天然ダム」を造り、下流の住民は長期間、決壊の危険性にさらされる。

     日本では2011年、紀伊半島が台風12号に見舞われて50か所以上の深層崩壊が起き、多くの犠牲者を出した。この際にできた天然ダムの一部は今も残り、決壊防止の対策が続けられている。台湾では09年、台風による豪雨で山が崩れて土石が3キロ離れた小林村の集落をのみ込み、400人以上が犠牲になった。

     紀伊半島で災害後に行った調査の結果、深層崩壊が起きる場所を事前に予測できる可能性が出てきた。斜面に特有の変形があり、そこから大規模な崩落が始まることがわかったからだ。

     通常の航空写真では樹木に隠れて地表は見えない。航空機から斜面に向けてレーザーを照射し、跳ね返ってくる間の距離を計測する「航空レーザー計測」なら、地表の起伏を10センチほどの誤差で測ることができる。

     紀伊半島では、39か所の深層崩壊発生地でたまたま、災害前にこの手法の測量が行われていた。災害後に改めて測量を行ってデータを比較すると、崩壊箇所の輪郭が災害前から山腹にできていたのが明確にわかった。

     また、輪郭部分をよく見ると、小さながけ(4割が5メートル以下)ができていた。これは、分厚い岩盤が重力によって少しずつずり下がってできたもので、これが豪雨によって一気に崩れた結果、深層崩壊が起きたと推定できる。

     90秒あまりの間に120キロもの速度で土砂が流れ下った台湾・小林村の深層崩壊でも、紀伊半島と同じような変形が災害前に起きていたことがわかっている。

     私たちは、航空レーザー計測により深層崩壊が起きそうな場所を、広い範囲で見つけることができる。

     小さながけは古い地形のへりにたくさん見つかるのだが、すべてが雨や地震で崩れるわけではない。

     今後は、より崩落の危険度の高い場所を見極める方法を見つける必要がある。

     □ちぎら・まさひろ□ 1980年、東京大理学系研究科地質学専攻修士課程修了。81年「電力中央研究所」入所。ダムや発電所設置地域の地質調査を行い、岩石の風化と岩盤の重力による変形を研究した。97年2月から現職。専門は応用地質学。

    2014年09月15日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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