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    炭素で蛍光効率アップ 光科学とナノサイエンスの接点 エネルギー理工学研究所 松田一成教授

     旧約聖書の中に「神は言われた。『光あれ』。こうして、光があった」とあるように、光は様々なものの原点だと考えられてきた。

     探求も古くから行われ、アリストテレスは紀元前300年代、光と色について論じた。1666年頃には、ニュートンが、プリズムで太陽光を七色の光に分けて光の性質を調べ、1905年頃、アインシュタインが光量子仮説を作った。

     電波や赤外線、虹のような可視光や、紫外線、エックス線などは電磁波と呼ばれるが、すべて光の一種だ。

     超微小なものを扱う「ナノサイエンス(ナノは10億分の1)」では、炭素材料が注目されている。

     中でも、直径1ナノ・メートル程度のカーボンナノチューブは、応用への期待が大きい。六角形の炭素原子が蜂の巣構造につながったシートを筒形に丸めたもので、丸め方によって、電気をよく通す金属にもなるし、あまり通さない半導体にもなる。

     我々は、光を使ったカーボンナノチューブの研究をしている。

     蛍光材料や発光ダイオード(LED)は、光や電気のエネルギーを使って光を発する。太陽電池は太陽光のエネルギーを受け、電気を作り出す。いずれも、エネルギーを受けた材料の中で、マイナスの電荷を持った電子と、プラスの電荷を持つ電子の抜け穴「正孔」ができる。電子が正孔に戻ろうとする時、別の光を発するのが蛍光現象で、電子と正孔が材料の外に取り出されると電気が発生する。

     カーボンナノチューブの蛍光は現在、受け取った光エネルギーに対して発する光が1%程度。とても光源には使えない。光らない理由を探ると、電子と正孔のペアが中を動き回り、端に到達すると消え、なくなってしまうことが分かった。

     電子と正孔の動きを止めればもっと光るのではと考え、カーボンナノチューブの炭素原子の並びに1個だけ、酸素原子を付け加え、そこで動きが止まるのを期待した。狙い通り、1%の蛍光効率を約20%まで上げることが出来た。

     現在、インターネットの情報伝達で使われるレーザー光は、希少元素や毒性のある元素が使われている。

     一方、炭素は大量にあって毒性もなく、非常に有利な材料だ。

     カーボンナノチューブとシリコンを使った太陽電池の作製にも取り組んでいる。ナノ材料を使った太陽電池の効率は現在、10%程度だが、約17%の高い性能を持つ太陽電池を作ることに成功した。

     光とナノサイエンスの接点で、情報技術やエネルギーの新材料を生み出す可能性を、さらに追求していく。

     □まつだ・かずなり□ 1998年、名古屋大工学研究科博士課程修了。京都大化学研究所助教授などを経て、2010年11月から現在のエネルギー理工学研究所教授。専門は、光とナノサイエンス、ナノテクノロジーの接点であるナノ光科学と、それを応用したエネルギー科学。

    2014年10月20日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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