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    生命、エネルギー、環境、資源にかかわる気体の科学と技術 物質-細胞統合システム拠点 北川進拠点長

     19世紀は「固体」の石炭で産業革命が起こり、20世紀は「液体」の石油の時代だった。石油などの地下資源には限りがあり、21世紀は「気体」の時代になるだろう。

     しかし気体はすぐ混ざり、拡散しやすく、固体や液体より濃度が薄い。目に見えないといった問題もある。そこで、気体を自在に扱うサイエンスが重要になる。

     私たちが1997年に開発した「多孔性材料」は、一辺が1ナノ・メートル(ナノは10億分の1)ほどの極めて小さな穴が規則正しく無数に開き、窒素や酸素、メタンガスといった気体の分子がたくさん入り、自在に出し入れもできる。

     作り方は簡単で、金属イオンと有機物の溶液などを混ぜるだけで、あっという間に結晶が組み上がる。いろんな大きさや形の穴、空間などをデザインできる。昨年に世界で発表された関連研究の論文や特許は6500件ぐらい。すごい競争になっている。

     米国でシェールガスが増産されているが、主成分のメタンはこれまで、零下160度程度の低温で液化したり、200気圧に圧縮してボンベに入れたりする必要があった。多孔性材料を使えば、室温でも約30気圧で貯蔵できる。ドイツの大手化学会社はこの材料で、メタンの貯蔵装置を開発し、燃料用として自動車に搭載しようとしている。

     気体にとって分離も非常に重要な問題だ。コーヒーに間違って塩を入れると元に戻せないように、混ざった気体の成分を分離するのは、エネルギーがいる。

     私たちは捉えたい気体の分子に合わせ、穴の大きさや形が変わる材料を開発し、混合ガスから二酸化炭素、メタン、酸素、窒素を分離できるようになった。

     開発途中だが、捉えた気体をこの材料で触媒として反応させ、別の物質に変換する研究も進んでいる。

     大気中の二酸化炭素の濃度が上昇し、地球温暖化の原因にもなっているが、将来的にはこの材料で分離、貯蔵し、水と反応させてメタノールに変えたい。化学製品の原料や燃料などにできる。多孔性材料の上に細胞を培養し、刺激を与え、生体に働くガスを欲しい時に放出させ、細胞にどう作用するのか調べる研究も始めている。

     気体の研究を進めれば、人類の生活の質を変え、豊かにできるのではないかと考えている。

     □きたがわ・すすむ□ 1979年、京都大大学院博士課程修了。学生時代に理論化学を学んだが、近畿大助手になってから専門分野を変更。以降、銅などの金属と有機物が結合した「錯体」という物質の研究を続ける。98年に京大教授、2013年から現職。

    2014年11月24日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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