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    放射線について 放射線生物研究センター

     ◇「生命は放射線を起源とする」渡辺正己特任教授

    • 渡辺特任教授
      渡辺特任教授

     東京電力福島第一原発事故後、放射線が生体にどのような影響を与えるかを説明する会を各地で開いてきた。「放射線は悪」という風潮もあるが、放射線が生物と切り離せない存在であることを解説したい。

     原子の共通材料は、プラスの電荷を持つ陽子と、電荷のない中性子、マイナスの電荷を持つ電子だ。陽子と中性子が真ん中に集まって原子核をつくり、その周囲を電子が回っている。

     原子の性質は陽子の数で決まるが、陽子と中性子の量のバランスが悪いと不安定になるため、余分なものを外に出して安定しようとする。その際に飛び出すのが放射線で、電子が出ればベータ線、中性子なら中性子線などとなる。

     私たちが地球で生きていくには、そうした放射性物質から逃れることはできず、食品にも様々な放射性物質が含まれている。

     では、放射線は生体にどの程度のダメージを与えるのか。1ミリ・シーベルトの放射線が体にあたると、細胞1個あたり1個超のDNAが損傷し、1ミリ・シーベルトを上回ると危ないという人がいる。

     だが、細胞の呼吸によっても1分間で約50個のDNA損傷が起きる。それでも何とかなっているのは、DNAが壊れても、それを治す機能が人間に備わっているからだ。

     「放射線ゼロ」を実現してほしいという人が多いが、自然界でゼロになることはあり得ない。

     □わたなべ・まさみ□1973年、金沢大薬学研究科修士課程を修了。東京大で博士号を取得後、長崎大教授、京都大原子炉実験所教授などを経て、2012年4月から現職。京大名誉教授。専門は放射線生物学。

     ◇「生命に備わる放射線傷害を修復する仕組み」小林純也准教授

    • 小林準教授
      小林準教授

     放射線の単位には、ベクレル、グレイ、シーベルトがある。1秒間に1個の原子が崩壊することを1ベクレルと言い、グレイは放射線が出すエネルギー量で、放射線の強さを表す。

     シーベルトはグレイと似ているが、同じエネルギーでもガンマ線やベータ線など放射線の種類によって生体に与える影響が異なるため、実際に生体に与える影響を表す単位として、放射線管理などに使っている。

     全身被曝ひばくの場合、100ミリ・シーベルト以下では体への影響はほとんどないとされる。

     放射線で生じたDNAの損傷に対抗する手段は、主に2種類ある。一つは、細胞が増えている状態だと正確に治しにくいため、細胞の増殖を止めて傷を修復し、治った後で増殖を再開する方法。

     もう一つは傷が多くて治しきれない場合、傷ついた細胞を強制的に死なせ、残った正常な細胞を増やして機能を回復する方法だ。

     DNAが傷つくことで発がんの可能性も生じるが、細胞の増殖を止めたり細胞死を起こしたりする機構に問題が起こっても、発がんにつながる恐れがある。DNAの修復は、発がんのメカニズムを明らかにするうえでも重要な研究だ。

     ただ、発がん原因に占める割合は、たばこや肥満などが大きい。我々の体には放射線に対抗する能力があり、過度に恐れると、逆にストレスによって発がんリスクが高まる。放射線の正しい理解が必要になる。

     □こばやし・じゅんや 1994年、広島大医学系研究科博士課程修了。広島大歯学部助手、米ローレンス・バークレー国立研究所研究員などを経て、2011年3月から現職。専門は放射線生物学。

    2014年12月22日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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