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    ネオリベラリズム後の政治世界 「格差不満の受け皿必要」 地域研究統合情報センター 村上勇介准教授

     戦後世界では、平等な社会の実現を目指して国家が主体的に役割を果たす「大きな政府」の考え方が力を持っていたが、ここ30年ほどは経済発展を実現できず、行き詰まってきた。

     一方、1970年代以降、経済のグローバル化を受け、各国は国家の役割を縮小し、市場経済の自由化で成長を促す「ネオリベラリズム(新自由主義)」に活路を見いだそうとした。アジアでは今もこの考え方が根強い。

     しかし、新自由主義には社会の格差を拡大するという側面があり、こちらも行き詰まりを見せている。その先行例がラテンアメリカ(中南米)の現状だ。

     これらの国々は16世紀以降、長く欧州の植民地だったこともあり、元々、社会の格差が非常に大きかった。戦後、大半の国で軍事政権が政治的安定を実現させたが、経済政策は失敗し、ボリビアなどでは物価上昇率が年1万%を超えるインフレとなった。分刻みで物価が上がり紙幣は紙くずになった。

     状況を打開するため、各国は経済の自由化を積極的に進めたが、格差はさらに広がり、今度は政治の不安定化を招いた。加えて、中南米には1人のカリスマを中心にした「個人商店」のような小政党が多く、安定多数を獲得できる大政党が生まれにくい土壌がある。

     そんな中、成功例と言えるのがブラジルで、中道右派のフェルナンド・カルドゾ、中道左派のルラ・ダシルバという左右2人のカリスマが大統領になった。連合政治の下、民主主義の根本である自由と平等を巡って議論する政治が実現し、政治的バランスが生まれたのだ。

     これに対し、ペルーでは依然として小政党の乱立が続いている。日系人のアルベルト・フジモリ元大統領は、強権的に新自由主義を推進して一定の成果を上げたが、大政党は作れず、結果的に自滅してしまった。

     結論を言うと、新自由主義という「劇薬」が生み出す格差を克服し、政治的安定を実現するには、不満の受け皿となる一定の中道左派勢力が必要ということだ。日本では先の衆院選で自民党が大勝し、政治的に安定したように見えるが、中長期的には、不安定感が増していると言えるだろう。

     □むらかみ ゆうすけ 1986年、東京外大外国語学部卒。メキシコ国立自治大国際関係センターに留学後、在ペルー日本大使館専門調査員、国立民族学博物館地域研究企画交流センター助教授などを経て、2006年から現職。専門は国際政治学。

    2015年02月16日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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