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    iPS細胞を使って「がん」のことを知る 「がん発生4遺伝子で再現」 iPS細胞研究所 山田泰広教授

     様々な細胞に変化できるiPS細胞(人工多能性幹細胞)は山中伸弥教授が、皮膚細胞に4種類の遺伝子を導入することで世界で初めて作製に成功した。

     当初の作製技術では、4種類の中にがん関連遺伝子を一つ用いたほか、遺伝子を構成するDNAが傷つく恐れがあり、「iPS細胞はがん化しやすい」とされていた。だが、がん関連遺伝子を使わず、DNAも傷つけない技術が開発され、今ではがん化の可能性はかなり小さくなった。

    • 山田泰広・京都大iPS細胞研究所教授
      山田泰広・京都大iPS細胞研究所教授

     ただし、iPS細胞もがん細胞も、無限に増殖できる性質を持つなど、共通点もある。そこで私たちは、4遺伝子を導入するiPS細胞の作製技術を、がんが発生する仕組みの解明につなげられないかと考え、研究を進めている。

     マウスに4遺伝子を導入し、その働きを薬剤で調節できる技術を開発した。4遺伝子を強く働かせると、体のあちこちにiPS細胞ができることも確認した。

     だが、4遺伝子の働きを途中で止めると、iPS細胞はできず、代わりに腎臓や肝臓などにできる人の小児がんと非常によく似ている細胞ができた。人の体内でも、これと似たような現象が何らかの原因で起きることで、小児がんが発症する可能性が考えられ、将来的に治療法の開発につながるかもしれない。

     iPS細胞は、目的の組織や臓器を作って移植する再生医療のほか、病気の特徴を再現した細胞を作り、病態の解明や創薬につなげる応用が期待されている。

     iPS細胞を用いたがん研究はあまり知られていないと思うが、がん研究でもiPS細胞はとても有用な手段だ。

     □やまだ・やすひろ□ 1997年、岐阜大医学部卒。米マサチューセッツ工科大ホワイトヘッド研究所研究員、岐阜大准教授、京都大物質―細胞統合システム拠点教授などを経て、2010年から現職。病理専門医。

    2015年05月18日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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