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    生物多様性の源・生態系ネットワーク 「植物を軸に相互作用」 生態学研究センター 大串隆之教授

     生物同士が利益を与え合う、あるいは相手を捕食したり寄生したりする――といった生物間の相互作用は、生態系における種の多様性を変える。

     生態系の基本構造は、▽光合成で自らのエネルギーを得ている「植物」▽植物を食べる「植食者」▽植食者を食べる「捕食者」で成り立つ食物連鎖だが、これは生物間相互作用の一部に過ぎない。

     食物連鎖で大事なのは、植物は植食者に食べられても死なずに、変わることだ。例えば、食べられると毒性を強めたりトゲを増やしたりして防衛する。あるいはより多くの枝や葉をつける。こうした変化が食物連鎖を通じて他の生物に、間接的に利益や不利益をもたらす。

     我々は北海道の石狩川河川敷のヤナギとそれを利用する昆虫の相互作用を調べた。夏場に昆虫のアワフキがヤナギの枝の中に卵を産み付けると、枝の先端部は枯れたが、ヤナギは翌春、枝葉を増やした。すると葉を巻いて巣を作るハマキガの幼虫が増えた。成虫となったハマキガが去ると、巣にはアブラムシが入り込み、その甘露を求めるアリも増えた。その後、葉を食べるハムシの幼虫が、アリに排除され減少した。これによって、間接的な相互作用ネットワークの姿が明らかになった。我々はこれを「間接相互作用網」と名付けた。

     植物は食べられて変化することで、利用する生物にさらなる進化を促し、生物多様性を左右する。これは、生態系の本質を理解するための新たな考え方として大いに期待されている。

     □おおぐし・たかゆき□ 1983年、京都大農学博士号取得。ロンドン大研究員、北海道大助教授などを経て、98年から現職。この間、北大客員教授、ストックホルム大客員教授、京大生態学研究センター長を務めた。

    2015年06月22日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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