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    人と自然のつながり・森里海の連環 「陸の生態系水から探る」 フィールド科学教育研究センター 吉岡崇仁センター長

     フィールド科学教育研究センターでは、設立時の2004年から「森里海(もりさとうみ)連環学」の研究を進めている。森や川、海などの自然と人間社会が、どのように影響し合っているかを考える独自の学問領域と考えている。

     我々は、京都府北部の由良川流域で、森と川、海のつながりを調べている。

     「森は海の恋人」と言われている。森が川などを通じて、沿岸の生物にとって必要な栄養素を海に供給していると考えられるからだ。

    • 吉岡崇仁・フィールド科学教育研究センター長
      吉岡崇仁・フィールド科学教育研究センター長

     しかし、海の生物の栄養素である水に溶けた有機物や硝酸態窒素の濃度は、森林の多い上流に比べ、下流の方が高まり、重要な栄養分である水に溶けた鉄の濃度は森林が少ないほど増える傾向がみられた。

     これでは、必ずしも森は海の恋人と、言えない。農耕地や市街地など、人間活動が水質に影響を及ぼす流域もあるということを示しており、さらなる解明が必要になる。

     全国の渓流調査などから、水に溶けた有機物の濃度が高いほど、硝酸態窒素の濃度は低くなる関係であると指摘されている。これは森林が増えるほど窒素を吸収し、有機物を多く生み出すからだと考えられる。

     一方、1950年代と2000年代の渓流の水質を比べると、硝酸態窒素の濃度が高くなっているとの報告がある。人間活動によって森林が減ったことが原因の一つと考えられる。

     このように、水質から陸上生態系の変化を読み取ることも、「森里海連環学」の重要なテーマとなる。

     □よしおか・たかひと□ 1985年、名古屋大理学博士号取得。同大学助手、総合地球環境学研究所助教授などを経て、2007年からフィールド科学教育研究センター教授、13年から現職。専門は生物地球化学。

    2015年07月20日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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