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    チンパンジーの社会的知性 「人間とは」探るヒント 野生動物研究センター 平田聡教授

     野生動物研究センターの施設の一つで、チンパンジーを飼育している「熊本サンクチュアリ」(熊本県)の所長を務め、チンパンジーの研究をしている。なぜ、チンパンジーなのか。ヒトと、ヒトに近い動物を見比べることで、「人間とは何か」という問いに新しい見方ができると考えるからだ。

    • 野生動物研究センター 平田聡教授
      野生動物研究センター 平田聡教授

     「社会的知性」とは、仲間と暮らす中で互いに協力したり助け合ったりすることだ。人間社会では当たり前のことだが、チンパンジーはどうなのか。日々、様々な手法で実験を繰り返している。

     例えば、食べ物を載せたブロックにひもを掛け、チンパンジー2匹に、ひもの両端を同時に引くとブロックが近づいて食べ物が手に入り、片方だけを引っ張ると、ひもはするすると抜けるという実験をした。

     チンパンジーは失敗を繰り返しながらも、最後は協力して同時にひもを引くようになる。先にひもを持った方は、もう一方がひもを持つまで待っていた。

     ただ、一方がボタンを押すと、もう一方がいる離れた場所からジュースが出てくる装置を使った実験では、うまくいかなかった。他者のために何かをするという行動は難しいようだ。

     このように、ヒトとチンパンジーには、似たところも違うところもある。それは生物学的な決まりというものだ。

     チンパンジーが仲間との付き合い方を学びながら覚えていくように、人間も社会でうまく生きていくには学習が必要だ。学校の授業や教科書のようなものはなく、私たち大人が、若い人たちが社会的知性を学べる環境を作っていかなければならない。

     □ひらた・さとし□ 2001年、京都大理学博士号取得。日本学術振興会特別研究員、林原生物化学研究所主席研究員、京大霊長類研究所特定准教授などを経て、13年9月から現職。専門は比較認知科学。

    2015年09月21日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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