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    “老い”を考える ―本邦・アジアでのフィールド医学の現場から 「生活指導で寿命4.4歳延びる」 東南アジア研究所 松林公蔵教授

     

    • 松林教授
      松林教授

     日本は超高齢社会だ。人口減少と人口構造の高齢化は、今後一層進む。1950年は、65歳以上の高齢者1人に対し、14歳以下の子どもは4、5人の割合だったが、2050年には高齢者4、5人に子ども1人の構造になるとされる。今後、多数を占めることになる高齢者の健康は、社会にとって重要な課題だ。

     従来の医療は、病気の治療が最重要だった。高知医科大にいた時、病気になって来院する高齢者を診て、「もう少し早く来てくれていたら、車いすや寝たきりの生活は避けられたのに」と感じていた。このため1990年から、病院で病人を待ち受けるのではなく、生活の場に出て行き、病気を予防する活動を始めた。

     高知県香北町(現香美市)では地域の約1800人の高齢者を健診した。食事や運動などの生活指導を行ったところ、10年後、治療や介護を必要とする高齢者が減り、医療費は約1億円削減、女性の平均寿命は4・4歳延びた。「フィールド医学」と名付けたこの取り組みは、国内各地だけでなく、医療が行き届いていないブータンなどアジアにも広がっている。

     高齢者は、病気や体の不調と付き合いながら、できるだけ介護を受けずに暮らせるようにすることが重要だ。「生活の質」を維持するため、認知症や抑うつ、糖尿病への対策がカギとなる。認知症になっても、フィールド医学での生活指導などで、生活の質をある程度保つことができることが確認されている。

     「住み慣れた場所で最期を迎えたい」と望む人が増えている。どう死を迎えるか、看取みとるかという問題には、宗教や哲学などと連携した研究も必要だろう。

     □まつばやし・こうぞう□ 1977年、京都大医学部卒業。高知医科大老年病科助手などを経て、2000年から現職。専門は老年医学。

    2016年01月25日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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