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    アジア最大級望遠鏡岡山に 4月建設本格化

     アジアで最大級となる口径3・8メートルの主鏡を持つ「光学赤外線望遠鏡※」の建設を、京都大や国立天文台などが4月から岡山県内で本格化させる。分割した鏡を高精度に並べて主鏡とする方法が国内で初めて採用される。星の爆発など突発的な天体現象をカバーし、太陽系外の惑星の観測も強化できるという。(阿部健)

     ◇18枚分割鏡

     竹林寺山にドーム 建設地は、晴天率が高いことなどから岡山県浅口市と矢掛町にまたがる竹林寺山(標高372メートル)の山頂付近が選ばれた。望遠鏡の本体は3月初旬、近くにある国立天文台岡山天体物理観測所の敷地内でいったん組み立てた後、4月以降にドームを建設し、その中に本体を設置する。

     望遠鏡は、鉄製フレームをジャングルジムのように組み上げ、下部には天体の光を集める凹型の主鏡を据え付ける。

     主鏡は、「一枚鏡」ではなく、外周部を12枚、中心部を6枚に分割した「分割鏡」とする。

     観測のため主鏡を傾かせた際や温度変化、風圧などの気象条件で、鏡と鏡の間にわずかなずれが生じる。これを分割鏡の裏にそれぞれ取り付けたセンサーで検知し、ずれを50ナノ・メートル(ナノは10億分の1)以内に調整するという。

     分割鏡は、鏡を1枚で製作、運搬するのが難しい口径10メートル程度の大型望遠鏡用に開発された技術だ。

     岡山の口径なら1枚での加工も可能だったが、京大の栗田光樹夫准教授は「将来の超大型鏡の開発も考えると、日本も独自に分割鏡を製作し、制御する技術を持つべきだ」とし、あえて分割鏡に挑んだという。

     ◇突発的現象を観測

     鉄製フレームにも工夫が施されている。

     宇宙のかなたの星を追う観測では、距離が離れているため主鏡の位置や角度のわずかなずれが、観測結果に大きな誤差を生む可能性があり、フレームや主鏡を緻密に動かす必要がある。

     このためフレームの形は、しなやかで、鏡が動いてもひずまない構造に設計。同じ大きさの望遠鏡と比べ、数分の一の重さに軽量化し、天空のどの方向にも1分以内に主鏡を向けることができ、突発的な天体現象の観測にも力を発揮する。

     京大の野上大作准教授によると、さまざまな観測に使える汎用の天体望遠鏡で3メートル以上のものはアジアになく、この地域が夜間に最大で6時間程度は、突発的な天体現象の詳細な観測が難しかった。

     例えば、宇宙最大の爆発現象とされる「ガンマ線バースト」は、130億年以上も前に発生したものが観測されているが、数秒で見えなくなった爆発もあった。「(今後も発生が予想される)この現象を観測、研究できるようになれば、星や銀河が生成した頃の状態を探ることができる」と野上准教授は期待する。

     ◇太陽系外惑星も

     太陽系外で恒星の近くを周回する地球や火星のような惑星の観測にも有効だという。

     京大によると、太陽系外の惑星は約1800個見つかっているが、ほとんどが惑星が動く時の光の変化などを間接的に観測したものだ。太陽のように輝く恒星の明るさに邪魔されるためで、直接観測ができたのは世界でまだ約10個しかない。

     今回の望遠鏡には、新しく開発した観測装置を設置し、明るさを大幅に精度よく抑えることができる。地球上の大気のゆらぎによる光のゆがみも、国立天文台がハワイに設置している口径8・2メートルの「すばる望遠鏡」よりも数倍細かく補正できるという。

     京大の長田哲也教授は「恒星と惑星の光を見分ける観測では、主鏡の大きさはあまり影響せず、観測装置の性能が重要だ。世界最高級の性能を目指したい」と話す。

     ※光学赤外線望遠鏡 目で見える可視光に加え、それより波長の長い赤外線も観測できる。一般的には主鏡の口径が大きいほど、宇宙の遠くからわずかな光でも集めることができ、性能もアップする。「理科年表」(国立天文台編、2015年版)によると、口径3メートル以上で稼働中のものは世界に約40か所ある。国内最大は兵庫県佐用町の県立大西はりま天文台の2メートル。

    2015年02月23日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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