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    山陰地方に「ひずみ集中帯」 鳥取県西部地震15年 京大防災研調査

     2000年に起きた「鳥取県西部地震(※1)」は、活断層の存在が知られていなかった場所で発生し、専門家の多くにとっても不意打ちだった。今年は発生から15年となる。未解明な点が多い山陰地方の内陸地震に対して精力的な調査や観測が続けられ、地殻変動や地盤構造の特徴が次第にわかってきた。(浜中伸之)

     ◇GPSで確認

     京都大防災研究所の西村卓也准教授(地殻変動論)は昨年1月、山陰地方の〈異変〉に気付いた。国土地理院が全国約1300か所に設置している全地球測位システム(GPS)の観測データを使って、地盤のわずかな動きやひずみの蓄積をつかもうと解析を進めていた時のことだった。

     西日本沖の太平洋では、海側のプレート(巨大な板状の岩盤)が南東から北西に向かって進み、南海トラフから陸側プレートの下へ沈み込んでいる。

     西村准教授の解析によると、このプレート運動に伴って、近畿や四国地方は北西へ1年に最大5センチ程度動き、ひずみもたまっていた。このひずみは、プレート運動の影響をあまり受けない中国地方南部では、ほとんど観測されなかった。

     これに対して、山陰地方では、東西へ帯状に延びる「ひずみ集中帯※2」が確認された。島根県東部から兵庫県北部までの約250キロに、ひずみの蓄積している領域が並んでいたのだ。

    • 鳥取県西部地震の震源域で、小型地震計の設置が進められている(3月23日、飯尾教授提供)
      鳥取県西部地震の震源域で、小型地震計の設置が進められている(3月23日、飯尾教授提供)

     この領域では地盤が東に年間4ミリほど動いていたこともわかった。西から東へ押すような力が加わっていると考えられる。

     地震の危険性がどれくらいあるのか、なぜひずみがたまるのかなど、詳しい解明はこれからだ。西村准教授らは昨年末までに、鳥取県倉吉市や鳥取市など13か所にGPSを新設した。新たなデータを基に分析を進めることにしている。

     「山陰地方では、南海トラフ沿いでのプレートの沈み込みだけでは説明できない力が働いている可能性が高い。防災上は、活断層がある地域と同じぐらいのリスクがあると考えたほうがよい。普段から地震への備えを心がけてほしい」と西村准教授は語る。

     ◇余震年間1000回

     鳥取県西部地震の震源域では今も、人間の体には感じられない小さな余震が年間1000回程度も観測されている。高感度の地震計をたくさん張り巡らせ、こうした微小地震を詳しく調べると、地下のどこでどの程度のひずみがたまっているかなど、地盤構造を解明する手がかりが得られる。

     そこで、京大、鳥取大、九州大などのグループは、今後2年間で、震源域に約1000個の地震計を設置することを決めた。直径約35キロの範囲に1キロ間隔で配置する計画で、今年3月に取り付けを始めた。

     計画が可能になったのは、グループを率いる飯尾能久よしひさ・京大防災研教授らが08年に開発した小型地震計のおかげだ。片手で持てる大きさで製作費が安く、設置方法も簡単なため、大量に置ける。高性能ながら乾電池で長期間、稼働するため、維持管理もしやすい。

     この地震計で膨大な観測記録を集め、地下の構造を詳細に分析する取り組みは以前から、鳥取、島根、岡山、広島各県で計50の観測点を設けて行われてきた。

     これまでの観測記録から、鳥取県西部地震を起こしたとみられる断層の両端付近は、地震波の伝わる速度が遅いことがわかってきた。両端付近は地盤が軟らかい証拠とみられる。逆に、両端に挟まれた間の領域は地盤が固いため揺れが大きくなった可能性が出てきた。

     飯尾教授は「高密度の観測によってさらに詳細な記録が取れれば、どの深さでひずみがたまるのかなど地下の構造がよりはっきりわかるだろう。内陸地震の解明に一歩でも近づきたい」と話す。

     「140年でM7級5回」 国が危険性再分析

     山陰地方では島根県から京都府にかけて、過去約140年間に、マグニチュード(M)7級の大地震が5回起きている。

     1925年の北但馬地震では、兵庫県豊岡市で家屋の倒壊や火災が相次ぎ、城崎温泉が壊滅的な被害を受けた。2年後には京都府北部の丹後半島で北丹後地震が発生し、被害は近畿南部や中国、四国地方など広範囲に及んだ。

     国の地震調査委員会は95年の阪神大震災以降、全国に約100ある主要活断層の危険性を分析してきた。ただ、山陰地方には主要活断層は京都府北部の山田断層帯しかなく、山陰地方全体の実態はよくわかっていない。

     全国的にも近年、主要活断層以外の地震で被害が多発しており、調査委は範囲を広げて再検討する作業に着手している。山陰を含む中国地方を見直すための調査は今年度から始める。

     ※1鳥取県西部地震 2000年10月6日に発生した。震源の深さは約9キロと浅く、地震の規模はM7・3で、阪神大震災と同じだった。同県境港市と日野町で震度6強を記録した。負傷者182人、全壊家屋435棟の被害が出た。死者はなかった。

     ※2ひずみ集中帯 大規模な地殻変動の影響で、地殻内に押されるような力がかかり、ひずみの蓄積が著しい領域。東日本の日本海側から新潟県、兵庫県に至る領域がよく知られ、ここでは阪神大震災、新潟県中越地震(2004年)、昨年の長野県北部地震などが起きている。

    2015年05月25日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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