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    大地震7年四川復興に差 中心部整然と新築 山岳部遅れる再建

     中国・四川省を中心に9万人近い死者・行方不明者を出した「四川大地震※」の発生から7年が過ぎた。マグニチュード(M)8級という内陸直下型では最大級の地震からの復興は、進んでいるのか。日本記者クラブの取材団に加わり、被災地を歩いた。

    (浜中伸之)

     ◇ツアー年300万人

    • 復興した地域では新しい建物が並ぶ(11月12日、中国・四川省汶川県映秀で)=浜中伸之撮影
      復興した地域では新しい建物が並ぶ(11月12日、中国・四川省汶川県映秀で)=浜中伸之撮影

     11月12日、四川省の中心都市・成都の北西約90キロにある●川県映秀を訪ねた。四川盆地の西端で、山すその谷あいにある映秀は震源に近く、人口約1万2000人のうち6000人以上が建物の倒壊などで亡くなった。

     町の駐車場でバスから降りると、日本語や英語、韓国語などで記された観光案内図が目に付いた。地震からほぼ2年で「町は被災状況を見せることを目的とした観光地として復興した」と、被災地の案内役を務める陳艶さん(31)はいう。

     周辺の山間部に住む被災者を、政府が谷間の町に集めて住宅を再建。土産物店や飲食店、宿泊施設など観光客向けの施設も次々と整備した。住民も観光産業に携わり、災害の教訓を伝える記念館や被災した建物を見学するツアーには、今では年間約300万人が訪れるという。

     町には3階建ての新築住宅が整然と並び、かつて被災した場所だったとは思えない。飲食店と宿泊施設を経営する楊和江さん(39)は「柱が太く、地震前より建物がしっかりした。M8の地震がきても大丈夫だ」と強調した。

     ◇被災校舎を保存

     町の一角には、生徒43人を含む55人が亡くなった中学校の校舎がそのまま保存されていた。鉄筋コンクリート5階建ての建物が崩れ落ちたり、1階部分が押しつぶされたりする姿が、地震の恐ろしさを生々しく伝える。校舎は地震の2年前に建てられたばかりで、M7の地震でも耐えられると言われていたという。

    • 倒壊した校舎の前で、「つらいけれど、校舎の保存は必要です」と語る陳さん(11月12日、中国・四川省汶川県映秀で)=浜中伸之撮影
      倒壊した校舎の前で、「つらいけれど、校舎の保存は必要です」と語る陳さん(11月12日、中国・四川省汶川県映秀で)=浜中伸之撮影

     自らも地震で祖母を亡くしたという陳さんは「校舎を見るとつらい経験を思い出すが、災害の教訓を伝えるためにも必要だと思う」と話した。

     今回は、迅速に再建された建物や暮らしが回復した住民らに、取材が限定された。復興が遅れた地域がないか、いまだに厳しい生活を強いられる住民がいないか、という課題については十分に検証できなかった。

     これまでに現地調査を8回行ったという近藤誠司・関西大准教授(災害情報論)は「復興の進み具合には、地域によって差がみられる」と指摘する。

     大きな被害を受けた映秀や都江堰市など、世界から注目された地域は、政府主導の「スピード復興」の象徴として優先的に再建された。一方で、大規模な被災地から離れた地域や少数の住民が住む山岳地帯などでは、復興が遅れたという。

     近藤准教授は「日本でも災害が複数箇所に及ぶと、物資の配分などで、地域の差はある程度、出てくる。政府や自治体は、被災地ごとに異なる現状を把握し、それぞれの被災地にどんな支援ができるかをはっきり伝えるなど、できる限りきめ細かな目配りをすることが重要だ」と話す。

     ◇1000年おきにM8級 竜門山断層帯

     四川大地震を起こした活断層帯「竜門山断層帯」を巡る研究も、進んできた。最新の研究では、この断層帯では、巨大地震が繰り返し起きていることがわかってきた。

     京都大のりん愛明教授(地震地質学)は、地盤の掘削調査などから地層のずれや液状化の痕跡を調べ、地震の発生間隔を探った。その結果、過去6000年程度の間で、平均して約1000年おきにM8級の地震が発生していた可能性があることがわかったとして、10月に神戸市で開かれた日本地震学会で発表した。

     その一方、2013年には、四川大地震の震源から約150キロ南の雅安市で竜門山断層帯の一部が動き、M7級の地震が発生した。

     この地域では「プレート」と呼ばれる巨大な板状の岩盤同士が地下で衝突しているため、地震が起きやすい。林教授は「今後1000年は大地震が起きないというのではなく、四川大地震では動かなかった断層やまだ知られていない断層が動いて、阪神大震災(M7・3)級の地震が起きる可能性はある」と警告する。

     日本でも13年の兵庫県・淡路島の地震(M6・3)など、知られていなかった断層による地震は頻繁に起きている。

     国内では活断層が約2000か所あるとされるが、国がM7級以上の地震の可能性がある主要活断層としているのは約100か所だけだ。国の地震調査研究推進本部は、主要活断層以外の活断層についても危険度の見直しを進めている。

    • 四川大地震から1か月。震源の町・四川省汶川県映秀は復興が進まず、ひっそりと静まりかえる(2008年6月11日撮影)
      四川大地震から1か月。震源の町・四川省汶川県映秀は復興が進まず、ひっそりと静まりかえる(2008年6月11日撮影)

     ※四川大地震 2008年5月12日に発生。米地質調査所によると、地震の規模はM7.9。竜門山断層帯のうち、主な断層3本(長さ計約300キロ、幅約30キロ)が動いたとされる。四川省政府によると、被災は同省や甘粛省など10省(計50万平方キロ・メートル)に及んだ。死者・行方不明者は約8万7000人、負傷者は約1万8000人。

    ●さんずいへんに「文」

    2015年12月07日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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