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    ツイートで災害推定 人工知能活用

     インターネットのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の「ツイッター※」を使って災害の発生場所をいち早く推定する技術を民間会社が開発し、新年度にも行政機関で活用される見通しとなった。東日本大震災でも情報ツールとして使われたが、正確な情報ばかりではなく、根拠のないデマが広がる要因にもなった。人工知能(AI)技術の進歩が、こうした課題を解決しつつある。(米井吾一)

     ◇キーワード収集

     〈1階は水没。大変なことになっている〉

     〈ひざ上までかった。避難所に向かいます〉

     関東・東北豪雨で茨城県常総市の鬼怒川が決壊した2015年9月10日のツイッターには被災者とみられるつぶやき(ツイート)が次々と投稿された。自治体が被害を把握する前に投稿されたものも多かった。

     富士通研究所(川崎市)は、こうした大量のネット情報(ビッグデータ)を、役所や警察、消防への電話通報とともに活用しようと12年から研究してきた。

     見たまま、聞いたままの情報を短文や写真で手軽に投稿できるツイッターは、過去の災害でも情報伝達に使われてきた。ただ、伝聞やうわさに基づく不正確な情報も多かった。

     取り入れたのは、コンピューターに人間の思考パターンを反復的に学習させ、人間に近い予測や判断をさせるAIの「機械学習」という手法だ。車の自動運転や、将棋などの対戦ソフトにも使われている。

    • 山影譲氏
      山影譲氏

     富士通研アナリティクスセンターの山影譲センター長らは、過去の複数の災害で投稿された「土砂崩れ」「浸水」などの文言を含む数十万件のつぶやきを分析。▽実際に体験した「目撃・観察」▽他人から聞いた「伝聞」▽新聞やテレビ、行政情報などの「報道・アナウンス」――などに分類した。その思考パターンをコンピューターに読み込ませ、「伝聞」など不要な情報を除くシステムを作り出した。システムは災害を経験するごとに学習し、分類の正確性が増すという。

     災害の場所は、つぶやき中の地名から類推し、投稿数が短時間に急増すれば「発生」と判定する。

     地名については、方言も判断材料だ。例えば、「福島」だけでは、福島市や大阪市福島区か判断できない。「めっちゃ(とても)」という関西弁があれば大阪の福島と推定できる。

     13年の評価試験で、近畿で起きた水害12件のうち、10件の発生をつかめた。山影さんは「レーダーや水位計などと同様に、ツイッターは災害発生を推定する『センサー』として非常に有効だ」と話す。

     今のところ、市区町村レベルでの推定が可能で、広域的な災害対応を担う国土交通省や都道府県などの利用を想定する。新年度に製品化する計画だ。

     ◇場所把握

     この技術を応用し、土砂災害の前兆をとらえようという動きもある。

     国土技術政策総合研究所(国総研、茨城県つくば市)によると、土砂災害の死者・行方不明者は、全ての自然災害の約4割に上るが、自治体の避難勧告が遅れるケースも目立つ。

     14年8月に広島市で起きた土砂災害では、最初の避難勧告が出される1時間以上前から、近くで石が転がる音などを訴えるつぶやきがあった。国総研と富士通研は、こうしたつぶやきと、レーダーの雨量データなどを組み合わせて、避難勧告の判断を支援するシステムの研究を進める。

     災害発生前のつぶやきからは、住民の心理状態も把握できる。広島市の土砂災害では、〈広島やばい。この雷雨は異常〉などのつぶやきがあった。

     国総研土砂災害研究室の国友優室長は「こうした現場の切迫性は、レーダーなどではとらえられない。自治体が、避難勧告を判断する際に参考材料の一つにできるのでは」と語る。

     ※ツイッター 米ツイッター社が提供するSNS。月間の利用者は世界で約3億人、国内は2000万~3000万人とされる。

    2016年02月22日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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