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    小惑星に弾丸試料採取 「はやぶさ2」 19年にも挑戦

     宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ2」は、2018年にも目標の小惑星に到達する。19年には地中の試料を採取する世界初の計画に挑戦する予定だ。弾丸をぶつけ、クレーターを作って採取する。弾丸の衝突の様子を高性能カメラで撮影し、衝突時に放出される物質が作る「イジェクタカーテン」と呼ばれる形を分析する計画もあり、これには神戸大などが関わる。研究者らは、「惑星の成長過程を解明する重要な手がかりを得たい」という。(沢本梓)

     ◇500メートル上空から

     はやぶさ2は、14年12月に打ち上げられた。計画では小惑星に到着後、観測や試料採取を行い、20年に地球に戻る予定だ。総飛行距離は約52億4000万キロに上る。

    • 衝突実験で、小惑星に人工的なクレーターができた瞬間のイメージ図。右下がはやぶさ2(JAXA、池下章裕氏提供)
      衝突実験で、小惑星に人工的なクレーターができた瞬間のイメージ図。右下がはやぶさ2(JAXA、池下章裕氏提供)

     はやぶさ2が目指すのは、火星と地球の間にあるC型小惑星「リュウグウ」。直径は約900メートルで、太陽系が生まれた頃の水や有機物を含むと考えられ、前回、はやぶさが到達した「イトカワ」より初期の惑星の姿を残すと期待される。

     はやぶさ2はリュウグウに到着後、3回の試料採取に挑む。1、2回目は、はやぶさ2の本体が小惑星の表面の試料を、3回目は弾丸でクレーターを作り、地中の新鮮な試料を採取することを目指す。

     この計画のため、JAXAが中心となって開発したのが小型搭載型衝突装置「SCI」だ。SCIは直径約30センチの円筒型で、計画開始時にははやぶさ2の本体から分離。最大500メートル上空から、爆薬を使って重さ約2キロの銅の弾丸を秒速2キロで小惑星に打ち込む。

     最大で直径約10メートル、深さ約2メートルのクレーターができると予想され、ちりなどが収まった約2週間後、退避していた本体がクレーター内部か周辺に着地し、小惑星内部の物質を採取する。

     JAXA宇宙科学研究所の佐伯孝尚助教(宇宙システム工学)によると、大量の爆薬を使うことへの安全確認など、開発のハードルは高かった。「最悪の場合、本体の損失につながるなどリスクはあるが、小惑星探査の分野で世界をリードしたい」とする。

    成長過程探る 弾丸を使った衝突実験に伴う「イジェクタカーテン」の分析は、神戸大理学研究科の荒川政彦教授(実験惑星科学)が中心となって行う。

    • 衝突時にできるイジェクタカーテン(荒川教授提供)
      衝突時にできるイジェクタカーテン(荒川教授提供)

     イジェクタカーテンとは、衝突で舞い上がる放出物が作る逆円すい状の形を指し、広がる速度や方向は物質によって異なる。カーテンは時間とともに広がり、一部は宇宙空間に放出され、重力で小惑星に戻るものもある。荒川教授は「イジェクタカーテンを観察すれば、惑星が衝突、破壊、合体を繰り返し、成長する過程を探ることができる」と実験の意義を語る。

    • 小惑星表面に人工的にクレーターを作る衝突実験の責任者の一人、荒川教授ら(神戸大学で)=守屋由子撮影
      小惑星表面に人工的にクレーターを作る衝突実験の責任者の一人、荒川教授ら(神戸大学で)=守屋由子撮影

     はやぶさ2には、観察精度を高めるため、広い視野を持ち、データを劣化させずに地球に送れるデジタル通信機能を備えたカメラが備えられている。カメラは衝突前に本体から離れ、約1キロ離れた場所から衝突の様子を約2時間にわたって撮影する。

     ◇地上実験年100回超

     イジェクタカーテン分析のため、荒川教授らは11年から、年100回を超える地上実験を続けてきた。研究室には最速で秒速7キロまで加速できる衝突装置を導入。岩石や石こう、粘土など様々な物質に弾丸を衝突させ、その様子をハイスピードカメラで記録し、飛び出す破片の速度などのデータを取ってきた。はやぶさ2のデータとの比較で、物質の密度や硬さ、微小重力の影響などが推測できるという。

     荒川教授は「本物の小惑星でデータを取れる機会は一生に一度。特に微小重力の影響は地上ではなかなか再現できず、非常に貴重な実験だ」と意気込む。

    2016年02月29日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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