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    原発事故備えロボ訓練 支援専門組織が発足

     5年前の東京電力福島第一原発事故を教訓に、原発で重大事故が発生した際、遠隔操作ロボットなどで、復旧作業を支援する専門組織が今月、福井県内に発足した。電力各社でつくる「電気事業連合会」(電事連)が作ったもので、全国の原発の作業員が訓練を受ける。すでに、同県敦賀市で操作訓練などを行う仮の施設をスタートさせており、今年12月までに、同県美浜町に屋外訓練場などがある専用の施設を完成させ、体制や機能を拡充する。(山崎光祥)

    • 遠隔操作で扉の鍵穴に鍵を差し込むパックボット(福井県敦賀市の原子力緊急事態支援センターで)
      遠隔操作で扉の鍵穴に鍵を差し込むパックボット(福井県敦賀市の原子力緊急事態支援センターで)

     原発事故後、復旧に当たる作業員らの被曝ひばくを防ぐには、ロボットが欠かせない。

     福島の事故では、米国製のロボット「パックボット」などを活用したが、原発内部の放射線量を測ることができたのは、事故から1か月以上たった後で、対応が遅れた。

     こうした事態を重く見た電事連は2012年7月、有事にロボットを操作して初期の災害対応を行える要員を育成する「原子力緊急事態支援組織」を設立すると発表。13年1月には、国内の各原発の担当者らにロボットの操作訓練などを施す仮の施設「原子力緊急事態支援センター」(約440平方メートル)を、日本原子力発電の研修施設内(敦賀市沓見)に開設した。

     ロボットを4種類、計8台保有。メンバーは訓練の講師ら9人で、各原発から要請があれば30分程度でセンターに参集し、出動できる体制を敷いた。センター内には、原発内部を模し、網状になった鉄製の階段や配管、制御盤などが置かれた訓練室がある。

     放射線量の高い原子炉建屋内の扉を開けて、進入する訓練では、パックボットが、アームの先のマジックハンド用のグリッパーで扉の鍵を持ち、扉の鍵穴に合わせた。その様子は、千葉工大などが開発したロボット「さくら1」のカメラで撮影され、講師が画像を見ながら遠隔操作で鍵を鍵穴に差し込み、ねじ切らないよう慎重に回して解錠した。

     他には、▽部屋を暗くしてロボット内蔵のライトとカメラを頼りに階段や迷路の中を進む▽制御盤の扉を開けて中のレバーをひねる▽重さ100キロのがれきも持ち上げられる米国製のロボット「ウォリアー」で大型のバルブを回す――といったメニューが用意されている。

     講師の一人は「床にたまった液体をスポイトで採取する訓練も検討している。メニューをさらに充実させたい」と明かした。

     

    • 新しい原子力緊急事態支援センターのイメージ図(日本原子力発電提供)
      新しい原子力緊急事態支援センターのイメージ図(日本原子力発電提供)

     同センターでの訓練は、これまでに全国の原発などで働く延べ約900人が1、2回ずつ経験。各原発で最低6人、多いところで延べ約100人がロボット操作を学んだという。

     美浜町に出来る専用の拠点施設(敷地面積2・6ヘクタール)は、現在のセンターの名称を引き継ぐ。12月までに、大型重機や小型無人機「ドローン」の無線操作を学べる屋外訓練場のほか、ヘリポートや、ロボット訓練室を備えた事務所棟の運用が順次始まる予定で、要員も21人に増える。

     2月末まで、仮施設の所長を務めた国際廃炉研究開発機構の富森すなお・研究管理部副部長は「まだ停止中の原発も多いが、そこに核燃料がある限り、常に緊張感を持って出動や資機材の保守管理などに備えている」と話す。

     ◇福島で20種投入

     福島第一原発事故後、東電は、米国のメーカーから提供されたパックボット2台に放射線量の測定器などを取り付け、11年4月17日、水素爆発を起こした1、3号機に事故後、初めて投入した。

     2台が入ったのは、原子炉建屋の1階部分。放射線量は最大で毎時57ミリ・シーベルトと高く、3号機の内部に大量の落下物が散乱していることも分かった。同26日には、1号機で建屋内の数値としては最高の毎時1120ミリ・シーベルトが記録された。

     7月にはウォリアーに掃除機を取り付け、3号機で線源とみられる砂やちりを吸い取って除染した。これまでに使われたロボットは約20種類にのぼる。

    2016年03月14日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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