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    仕事も地域活動も

    • (上)NPO法人の会議に出る浜田さん(右から2人目)。「地域の活動が刺激を与えてくれます」=近藤誠撮影     (下)百十四銀行員で映画監督の香西さん
      (上)NPO法人の会議に出る浜田さん(右から2人目)。「地域の活動が刺激を与えてくれます」=近藤誠撮影     (下)百十四銀行員で映画監督の香西さん

     愛媛県南西部、人口約3万6000人の八幡浜市。11月中旬、若者らでつくるNPO法人「八幡浜元気プロジェクト」(YGP)のメンバーら10人が集まった。議題は、来年開かれる「えひめいやしの南予博2016」に向け、地場産業のかまぼこをどうPRするか。

     「かまぼこ板で積み木を作るなら、高級感、特別感がほしいね」「パンフレットはとにかく、おしゃれに。企業からの協賛も募ろう」。かまぼこ板を見つめながら、表情はみな真剣だ。

     NPOの代表は、愛媛信金職員で八幡浜生まれの浜田規史のりふみ(31)。四国電力社員やデザイナーらが仕事を終えて集まり、語り合う。

     地元を元気にしたい。でも、誰もが起業できるわけじゃない。だったら、仕事以外に活動の場を――。

     それが、「2枚目の名刺」という生き方だ。

     浜田は地元高校で「商業研究部」に入部し、空き店舗に悩む商店街の活性化に取り組んだ。「何も面白いもんがない」。そんなふるさとの印象は、ふれ合いの中で「温かい人がいるまち」に変わっていった。

     山口大経済学部で地域経済論を専攻し、就職を考えた時、商店主たちの顔が浮かんだ。中小企業が主な取引先の信金に就職し、八幡浜支店に配属された。

     だが、企業の決算書を見れば、地域の衰退は如実だった。若者らを巻き込んでまちおこしを仕掛けようと、2006年にYGPの前身団体を発足させた。

     正直、活動は地味だ。

     まずは街頭に出て仲間を募ろうと、公園の清掃活動をした。YGPは徐々に知られ、住民や商店主を紹介する冊子を作るなど、アイデアを形にできるようになった。7年目には、道の駅の運営を支援する指定管理者にも選ばれた。

     浜田は、信金を辞めてまちづくりを本業にしようと考えたこともある。今は違う。人口が減る中、地域の活力を保つためには、一人が複数のことをこなした方がいい。圧倒的にサラリーマンが多い社会で今の生き方を貫き、仲間を増やしたい。そう思うからだ。

     映画監督の香西こうざい志帆(39)は、百十四銀行(高松市)の社員。香川県さぬき市で撮影し、吉田羊や森昌子らが出演する「恋とオンチの方程式」は香川のほか、東京などでも公開される。

     高松市出身。大学を出て銀行に就職したが、書くことが好きで、06年、県などが主催した「さぬき映画祭」の映像塾で脚本と映画制作を学んだ。それから地元で撮影を続けてきた。

     勤務先は副業禁止で、映画の報酬は受け取れない。仕事を終え、徹夜で編集作業をすることもある。だが、限られた予算の中でどう効率的に撮影するかなど、銀行員の経験が生かされていると感じる。「地方で働きながらでもやれることを体現したい」と胸に刻む。

     こうした生き方を全国に広めようと活動するのが、東京にあるNPO法人「二枚目の名刺」だ。

     設立時のメンバー、徳島県鳴門市出身の梅津英明(36)は東京で弁護士をしながら、海外進出を目指す徳島の中小企業を法律面で支援する団体を作ろうと構想を練る。そのためのセミナーを手弁当で引き受けたこともある。「やっぱり、徳島が好きなんです。自分を育ててくれたふるさとだから。ただ、それだけで」

     一部の大手企業の間では今、こうした仕事以外の活動への関心が高まっている。社外で得られたアイデアや人脈が本業にも好影響を与えるからという。

     信金職員の浜田は、そう実感しながらも、最近は「ワーク・ライフ・ソーシャル・バランス」という言葉を盛んに使うようになった。仕事や生活とは別に、ソーシャル(社会)のための活動が地域を活気づけ、自分の生き方も豊かにしてくれると思うからだ。

     仲間とともに、一歩ずつ。その先に、ふるさとの未来があると信じている。(敬称略、おわり)

     文・松永喜代文、斎藤七月

     ◇「未来良くしたい」若者過半数

     バブル経済崩壊後の「失われた20年」に成長した最近の若者には、社会貢献をしたいという意識が強い傾向がみられる。

     厚生労働省が2013年に行った「若者の意識に関する調査」では、急速な少子高齢化や厳しい財政状況を理由に、半数近い45.1%が「日本の未来は明るいとは考えていない」と回答。一方で、「日本の未来を良くするために行動したい」とした人も過半数に上った。ただ、「貢献したいが、どうしていいかわからない」との回答も目立った。

     生活のための本業とは別に社会的な活動をする「2枚目の名刺」は、社会を良くしたいという若者の意識が背景にあり、「パラレルキャリア」とも呼ばれる。

     ◇四国を舞台に地域再生の道筋を探る「ふるさと あしたへ」の社会面連載は、これで終わります。ご意見・ご感想は、「社会部に情報を」の連絡先へメールかファクスでお寄せください。

    2015年12月21日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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