高村薫さん「みんな ひとりに慣れないと」
未婚、単身世帯が増え「ひとり」化する社会。自らも独身の作家高村薫さん(62)に尋ねてみた。どんな未来が来ますか。(編集委員 森川暁子)
――少子化という言葉を聞かない日がありません。社会はどうなりますか。
「国力は衰退します。今みたいな社会インフラは維持できず、年寄りも働かないと回らない。でも、働くということは、社会に居場所があるということだから、そんなに不幸なことではない。介護も社会化しないと成り立たなくなりますが、例えばロボットも発達するでしょうし、暗いことばかりではないと思ってるんですけど。勝手に」
――少子化問題というと、独身としては肩身が狭く感じてしまいます。
「先進国で少子化が問題になるのは、自然な夫婦の生活だけではいかないようなライフスタイルになっているからですよね。経済の問題とか、仕事とか、価値観とか。自分が結婚してないから、えらそうに申し上げることはないけれども、当事者の女性や男性が、そんなに肩身の狭い思いをする話ではないと思う」
――ご自分の最期って、考えることはありますか。
「そんなに真剣に考えないでいます。いわゆる(だれにもみとられず亡くなる)孤独死もありえると、それさえ覚悟しておけば、だれと一緒だとか、どこでとかは想像しても意味がない。周りに人がいないことが寂しいなとか、それは全くないですね」
――でも、長期間発見されないのは困りますよね。
「それは、孤独死そのことが不幸なんじゃなくて、そこに至った最晩年が不幸であったということ。連絡がなかったら、『あの人どうした』とか、そのぐらいの社会的なつながりを持っているのが普通の暮らし方で、それがない状態だったということで」
――私などは、家族を作っておけばよかったなあと考えてしまうことがあります。
「私の場合は自分の意志で独身を貫くというのじゃなくて、周りに流されてきました。三十を過ぎてお見合いを考えたとき、父親が病気になり、それどころではなくなった。母と2人になって、養子をもらう?という話も出ましたけれど、小説家になって、とんでもなく忙しくなってしまった。それから母が病気になり、仕事をしながら看病して、はっと気付いたらひとり。一人暮らしは、うんとうれしいことも、うんと悔しいこともない。平坦(へいたん)だけれど、ストレスがない。どっちがいいかわからないですよね」
◆適切に人と距離「破滅」防げる
――ひとり、というあり方が増えるとどうなりますか。
「連れ合いを亡くしたお年寄り同士のカップルがトラブルになったり、ストーカーをしたりとかは、ひとりに慣れてない人たちの暴走だと思うんですよ。今は過渡期だけれど、ひとりになってああ寂しい、伴侶がほしいっていうんじゃなくて、ひとりに慣れないといけない。社会もそれをよしとする。そういう価値観が広まればなあと思います。適切に人と距離を取る。家族がいても、それぞれがひとりである部分を持つことで、母子依存とか、決定的な破滅を避けられるんじゃないかなっていう気がします」
――独身で更年期を迎え、不安定になる女性にしばしば出会います。
「更年期はつらいですよ。私はそのときすでに親も両方みとっていて、生きてていいことなんて何にもないだろうという感じが毎日してました。作品を発表しても、母親が生きていたときには喜んでくれる、それがなくなると、自分は何してんのかなっていう」
――それを、どうやって。
「私は3、4年周期で気分の波があって、気分の底になると、必要がないのに壁紙を張り替えたり、突然木を植えたり、ふだんはしないバカをやる。リフォームの人が『ほんとに張るんですか』っていうような花柄の壁紙を『張ります』と。コンスタントに仕事を続ける、精神的な平衡を保つ一種の努力です。更年期が過ぎると体が変わり、気分も変わる。なんとかなりますよ。生きてれば」
たかむら・かおる 「マークスの山」で直木賞、「太陽を曳(ひ)く馬」で読売文学賞受賞。
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