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    料理代行 家庭のぬくもり

    • でき上がった料理について、向さん(左)の説明を聞く真由さん(奈良市内で)=守屋由子撮影
      でき上がった料理について、向さん(左)の説明を聞く真由さん(奈良市内で)=守屋由子撮影

    時間にゆとり 話し相手にも

     

     人に作ってもらうご飯はおいしい。自宅でなら、よりリラックスして食べられる。一人暮らしの独身者にいま、「自炊」「総菜を買う」「外食する」以外の第4の選択肢として、「料理代行」の利用が、少しずつ広まっている。(持丸直子)

     

     奈良市内のマンションの一室。住人の会社員、真由さん(仮名)(27)はこの日は休みで、リビングでくつろいでいた。一方、キッチンでは家事代行大手「ベアーズ」のスタッフむかい彩香さん(29)が三ツ口コンロをフル活用して煮込みハンバーグ、マーボー豆腐、サケの香草パン粉焼きを同時に作っていた。

     「向さんの作る料理は健康的でおいしい。料理のコツを教わったり、彼氏の話を聞いてもらったりします」と真由さんはうれしそうに話す。

     大学入学で実家を離れてから一人暮らし。料理を作るのがあまり好きでないのに加え、営業の仕事で帰宅が午前0時を回ることもあって昼夜ともに外食かコンビニエンスストアで買った弁当などを食べ、栄養が偏りがちだったという。

     忙しさにかまけて運動もしていなかったが、昨年から健康を考えてジムに通い始めた。そんな折、新聞やテレビで料理代行サービスの存在を知り、昨年10月、試しに同社を利用。たまたま派遣された向さんの料理と人柄が気に入り、今年から向さんを指名して隔週で利用している。

     

    1回で5日分の夕食が完成

     

     1回4時間で、主菜と副菜を組み合わせた5日分の夕食計10品が完成。材料は真由さんが事前に買いそろえておく。「野菜や肉など自分で選んだ食材で作ってもらえるので安心感がある」

     代行サービスの料理を冷蔵・冷凍して月半分くらいかけて食べ、弁当箱に詰めて会社に持っていくこともある。費用は月約2万5000円かかるが、「早く寝たり本を読んだり、ほかのことに時間を使えるから、それだけの価値がある」と真由さんは満足している。

     昨年ヒットしたテレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」では、ヒロインが行う家事代行サービスも注目された。ドラマの家事監修をしたベアーズ副社長の高橋ゆきさんによると、同社の家事代行サービス利用は年間約34万件。うち半数が子育て中の共働き世帯だが、単身者も2割近くいる。「若い人からシニアまで単身男女の利用は、前年比20%以上増で、今後もニーズは高まりそう。料理代行のような、ぬくもりのあるサービスが求められています」

     

    手料理で心安らぐ

     

     大阪市の弁護士、野田賢太郎さん(34)は、昨秋から、不定期で平均月1回ほど料理代行を利用する。「コンビニ弁当やスーパーの総菜の味には飽きた。いろんなメニューを食べられるのがうれしい」

     野田さんが利用するのは家事代行業者「カジー」で、1時間2500円(税、交通費別)。「来るスタッフは毎回違うし、『逃げ恥』のような出会いはありません」と笑いつつ、チャットで事前に「カレーをお願いします」「今回は和食で」などとやりとりし、3時間で7、8品作ってもらっているという。

     仕事の途中に事務所から徒歩5分の自宅に戻り、冷蔵していた料理を食べる日もある。「家に手料理があると思うと、何だか安心する。いつか結婚し、奥さんが料理を作ってくれたら、その手料理が一番ですけどね」

     「自炊をしなければ」と思いすぎず、料理代行の「家庭の味」で少しホッとする。気持ちや時間に余裕を持ちたい人には、心強い“助っ人”だ。

     

    調理「週ゼロ」16.4%

     

     「キユーピー」(東京)が20~69歳の単身者を対象に2014年に行った調査では、「ここ1週間で何回くらい調理をしたか」という問いに対して、「まったくしなかった」と答えたのは16.4%で、11年の前回調査時から5.9ポイント増加した。男性では50代(34.5%)、女性では30代(10.3%)が多い。

     また、調理をした人が平日夕食時に行った作業(複数回答)については、「野菜や果物を切る」(59.0%)が最多だったが、前回より約10ポイント減少。同社は、カット野菜の普及などが背景にあるとみている。

     

    自炊 簡単で節約も

     

     一人暮らしの人のためのレシピ集を出している料理研究家の柳澤英子さんは「仕事などで疲れている時、料理代行を利用するのも賢い選択の一つ。ただ、簡単で節約できて栄養バランスもとれる料理の作り方があるよ、と伝えたい」と話す。

     一人暮らしの食生活で陥りやすいのは、好きなものばかりを食べすぎて栄養が偏ること。柳澤さんは、▽同じものを3回続けて食べない▽3日間や5日間の単位で栄養バランスを考える▽赤、緑、白など色違いの食材をなるべく食べる▽レトルトカレーやインスタントラーメンを食べる際はゆでたブロッコリーやスプラウト(豆や野菜の新芽)を足す――ことを勧める。

     

    無理しすぎず楽しむ

     

     夫が亡くなった後、一人旅を楽しむようになった女性を紹介した前回の記事に、「一人旅が大好き!」という方々から感想が届きました。「夫婦で旅をするといつもけんかになるので、一人旅を始めた」という大阪市の女性(65)からは「最初は身近な場所や以前行った場所にすると、自信につながる」という助言もいただきました。ひとりの楽しみを広げる時、つい「冒険心」を発揮したくなりますが、無理しすぎない姿勢は大切な気がします。

     さて、「おなかがペコペコなのに、家にすぐ食べられるものがない」という事態によく陥る身としては、今回の料理代行サービスはとても魅力的に映りました。利用を真剣に考えています。(中舘聡子)

     

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    2017年05月11日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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