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    自分で学習 AI進化 「2045年」人類を超える?

     「人工知能(AI)※」が大きな注目を集めている。コンピューターの性能向上などで、かつてはSFの世界でしかなかった車の自動運転が実現。人に勝つのが最も難しいとされた頭脳ゲーム、囲碁でも先月プロ棋士を破り、小説も人間と共同で「執筆」した。AIという言葉が生まれてから約60年。様々な分野に進出するAIと人の関係はどのようになっていくのだろうか。(沢本梓)

     ◇自動運転

     「AIの4勝1敗」。米グーグル傘下の会社が開発した囲碁のAI「アルファ碁」が、先月の5番勝負で、韓国のトップ棋士を破った。ゲームの世界だけではなく、AIは我々の日常生活にも影響を与えようとしている。

     その一つが自動運転だ。国内では自動車メーカーや大学などの研究機関が開発を加速させている。

     能登半島の先端にある石川県珠洲市で、昨年2月から市街地の公道での自動運転車の実証実験を進めているのは、金沢大の菅沼直樹准教授(40)だ。

     同市では公共交通機関が不足。高齢化率が45%を超える住民らが移動に困っており、同大学と市が自動運転車の導入を考えている。

     国内の自動車メーカーは2020年頃、主に高速道での実現を目指している。一方、高速道に比べて、市街地の公道では歩行者に加え、頻繁に信号や標識を識別する必要があるなど制約が多い。同大学の自動運転車には信号の位置などが高精度にわかる地図、人や障害物を把握できる各種センサーを搭載。こうした情報をコンピューターが自律的に学習する「機械学習」の手法で瞬時に分析し、安全に走れるようにしている。

    • 金沢大が珠洲市の市街地で行っている自動運転車の実証実験。信号を認識し、横断歩道を渡る歩行者に注意しながら右折ができる(昨年3月、菅沼准教授提供)
      金沢大が珠洲市の市街地で行っている自動運転車の実証実験。信号を認識し、横断歩道を渡る歩行者に注意しながら右折ができる(昨年3月、菅沼准教授提供)

     すでに約1万キロ走っており、珠洲市では、20年にも交通網として定着させたい考えだ。菅沼准教授は「自動運転は公共交通の担い手がいない地方で効果を発揮する」という。

     ◇深層学習

     AIの進歩には、アルファ碁にも利用された「ディープ・ラーニング(深層学習)」という新しい手法が、大きく影響している。

     機械学習の一種で、人の脳神経回路を模擬したものだ。例えば、人がイヌやネコなどの動物を認識するのは、生まれてからそれらを数多く見ることで顔や体の特徴を抽出し、動物を見分けている。米グーグルの自動運転車でもディープ・ラーニングが利用され、車体カメラで歩行者と認識すれば、速度を落とすといった判断を下す。

     ◇共存は?

     AIが発達した未来はどうなるのか。「2045年問題」と呼ばれ、その頃にAIの能力が人を上回り、命令を聞かずに暴走して人類が滅ぼされるかもしれないと指摘する科学者もいる。人の仕事がAIに奪われるのではないかという予測もある。

     野村総合研究所の試算では、日本の労働者の約半数が就いている仕事は、10~20年内にAIやロボットで代替が可能だという。

     試算した上田恵陶奈えとな・上級コンサルタントは「創造性、経験が必要な仕事などは人間にしかできない。AIは仕事を人から奪うというより、人手不足を解消し、人の業務内容が変わると捉えるべきだ」と話す。

     ◇AI悪用想定すべき

     人工知能学会の元会長で京都大教授の西田豊明さん(61)にAIの展望などを聞いた。

    • 人工知能について語る西田教授(京都市左京区の京都大で)
      人工知能について語る西田教授(京都市左京区の京都大で)

     AIは今後、人間の感情を再現して話し相手になったり、高度な技術を教えてくれたりするようになるかもしれない。その時、人間よりAIを相手にしたいと思う人が急増するかもしれない。車の自動運転で、事故を起こした時に誰が責任を取るのか。AIが犯罪に使われたら……。AIが人間の暮らしに深く入り込んだ世界のあり方を考えるべき時にさしかかっている。

     現状では、AIの悪用を取り締まる方法はない。人工知能学会では14年、倫理委員会を設置した。「2045年問題」で懸念されるAIの暴走より、人間がAIを悪用するのを、どう防止するのが良いかを具体的に考えるべきだろう。

     人間とAIが互いの違いを超えて分かり合うための新しいコミュニケーションの仕組みの開発が今、最重要課題だ。

     ※人工知能(AI) Artificial Intelligenceの略。1956年に米国で開かれた会議で初めて使われた。コンピューターとソフトウェアを使って言葉を理解したり、膨大なデータを分析して答えを導き出したりする。ロボットを動かす頭脳など、多方面で活用され始めている。

    2016年04月01日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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