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    {学ぶ} 「装着ロボットスーツ」 軽くて自然な歩き心地

     装着型ロボットスーツ「HAL」が、医療や介護の現場で活躍している。4月からは、両脚に装着するタイプが筋萎縮性側索硬化症(ALS)など難病患者の歩行機能を改善する医療機器として保険適用された。HALを導入した大阪医大(大阪府高槻市)で使い心地を試してみた。(竹内芳朗)

     人気アニメ「機動戦士ガンダム」を見て育ったメカ好きの40歳。「近未来の医療を支えるロボットの代表格に」と期待されるHALへの関心は以前からあった。

     大阪医大の一室に用意された「両脚タイプ」のHAL。両手で持ち上げた。ズシリと重い。12キロほどあるという。

     人が体を動かそうとする時、その意思が脳から微弱な電気信号となって筋肉に送られる。HALでは、その信号を皮膚に貼った電極シールで検知し、筋肉の動きに同調するように装置が動いて運動を手助けする。

     両脚タイプの場合、自力で脚を動かせない人でも、電気信号が伝わる神経回路が残っていれば、歩行を助けてくれる。

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     健常者の私は、特別な許可を得て、体験させてもらった。同医大病院の理学療法士川崎拓さん(30)の助けを借りて装着した。太ももやすねなど両脚の数か所ずつに、装置本体とコードでつながった電極シールを貼る。脚の表面を覆う本体を装着し、ベルトで固定すれば完了だ。

     装着してみると、不慣れなためやや脚を動かしにくく思うが、重さは感じない。さっそく歩いてみる。

     腰にある作動ボタンを押して、1歩、2歩……と歩いてみると、装置に覆われた脚が軽くなった。ロボットというが、無理に動かされている感じはなかった。

     HALは、無意識ともいえる「歩く」という意思を瞬時に感知し、その人に必要な力だけを支援する。それが自然な歩行を可能にしていると実感できた。

     HALは脳からの電気信号で動くシステムのほかに、事前に登録した歩行などの動作を再現するシステムがある。この二つを組み合わせることで、装着者の能力に応じたサポートができるという。

     大阪医大病院では3年前から、HALを導入している。リハビリテーション科技師長の大野博司さん(55)は「立つのが難しかった患者さんが、この装置で歩く練習ができて、表情も明るくなった」と話す。

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     重い荷物などを運ぶ際に腰に装着する「腰タイプ」のHAL(重さ約3キロ)も試した。約22キロの重りを持ち上げると、装置がモゾモゾと動き、腰の筋肉が引っ張り上げられる感覚がして、腰への負担が軽くなった。

     利用者はどう感じているのか。様々なタイプのHALを計7台導入している老人保健施設「永寿ケアセンター」(大阪市平野区)を訪ねた。

     左脚タイプのHALで歩行訓練をしていた大阪市東住吉区の会社員串田晴弘さん(47)は昨春、脳出血で倒れ、左半身不随となった。

     普通のリハビリではあまり回復せず、左脚はわずかに進むくらい。1月からHALを使い始め、「以前より一歩が大きく前へ出るようになった」という。週2回、各1時間の訓練を重ね、今夏の職場復帰を目指す。

     腰タイプのHALを使う介護職員の竹岡美波さん(24)は「介助をする際、以前より軽く感じて助かる」と話す。少子高齢化が進む中、HALが活躍できる場は増えると感じる。

     ◇ドイツでも導入開始

     HALは、ロボット工学者の山海嘉之・筑波大教授が開発。山海教授が社長を務めるベンチャー「サイバーダイン」(茨城県つくば市)が製造・販売している。

     両脚タイプのHALは、リハビリに使う施設もあるが、その場合、保険は使えない。海外では2013年、欧州連合(EU)全域で医療機器として承認され、ドイツで医療現場への導入が始まっている。

     腰タイプのHALは、重労働の負担を和らげるため、介護施設や建設現場などで導入する事例が増えている。ほかにも、片方の脚や肘、膝の関節に装着するタイプもある。

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     様々な科学や技術の現場に記者が出向き、体験します。

    2016年04月15日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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