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    {知る}局地豪雨 前兆つかみ減災 「京」で30分前に予測/雲粒で察知

     強い雨が短時間に狭い範囲で降る「局地豪雨」が各地で相次いでいる。2014年の広島土砂災害や15年の関東・東北豪雨では多くの人命が失われた。気象庁によると、「大規模な災害が発生する恐れが強い」とされる1時間当たり80ミリを超えた豪雨は、2006~15年の10年間で180回に達し、1976~85年の1・7倍に増えた。少しでも早く前兆をつかみ、被害を小さくしようと、国内の研究機関や大学などで様々な研究開発が進んでいる。

     (浜中伸之、島田喜行)

    • 「京」で再現した2014年9月11日の神戸市上空の局地豪雨の降水状況。黄、緑、青の順で雨が強い(三好チームリーダー提供) →
      「京」で再現した2014年9月11日の神戸市上空の局地豪雨の降水状況。黄、緑、青の順で雨が強い(三好チームリーダー提供) →

     局地豪雨は、積乱雲の発達状況や雨粒の分布などをレーダーで観測し、そのデータを基に予測する。しかし、積乱雲は発生から消滅まで約30分と短く、十分なデータが得られないため、正確な予測が難しかった。

     こうした中、理化学研究所計算科学研究機構(神戸市)などのチームは、局地豪雨を30分前に予測することを目指し、システムの開発を進めている。

     チームが観測に使うのは、大阪大などに設置されている最新式のレーダー「フェーズドアレイ気象レーダ」と、2015年に運用が始まった気象庁の「ひまわり8号」だ。

    • 「京」で再現した2014年9月11日の神戸市上空の局地豪雨の降水状況。黄、緑、青の順で雨が強い(三好チームリーダー提供)
      「京」で再現した2014年9月11日の神戸市上空の局地豪雨の降水状況。黄、緑、青の順で雨が強い(三好チームリーダー提供)

     観測に必要な時間は、従来の「約5分」から「30秒」と大幅に短縮。精度も、従来の「250メートル四方」から「100メートル四方」まで上がり、より緻密な観測が可能になった。

     その分、予測に使うデータは膨大な量になる。そこで、スーパーコンピューター「けい」の出番だ。

     いつ、どこで、どれだけの雨が降るか――。京は、100通りの予測を作り、その平均値を算出。レーダーなどから届く実際の観測データと照合し、誤差を補正した上で「30分後の予測」をはじき出す。この作業を繰り返していく。

     過去の局地豪雨のデータで検証したところ、京の予測と、実際に雨が降った場所や雨量はほぼ一致した。現時点では、予測は10分ごとにしか更新できないが、データ転送の速度などの課題をクリアすれば、30秒ごとの更新も可能になるという。

     同機構の三好建正・データ同化研究チームリーダーは「システムの完成に向け、観測の道具はそろっている。近い将来、局地豪雨の予測が可能になり、被害の軽減につなげられるだろう」と意気込む。

    □■□

     京都大防災研究所と国土交通省近畿地方整備局は、積乱雲の発生をいち早く感知し、局地豪雨が起きる10分ほど前に自治体に知らせる仕組みを作った。

     京大防災研の中北英一教授は、積乱雲が発達する前には、強い上昇気流で、渦を巻く現象が起きることを発見。同省の気象レーダーを使って渦が回転する速さや雲の高さなどから、積乱雲に発達する前の「雲粒」をとらえた。

    • (上)気象レーダーで捉えた積乱雲が発達しそうな地域(オレンジ色の丸で囲った所) (下)17分後、実際に起きた局地豪雨。赤色が非常に激しい雨のエリア(いずれも大阪府能勢町で、国交省近畿地方整備局提供)
      (上)気象レーダーで捉えた積乱雲が発達しそうな地域(オレンジ色の丸で囲った所) (下)17分後、実際に起きた局地豪雨。赤色が非常に激しい雨のエリア(いずれも大阪府能勢町で、国交省近畿地方整備局提供)

     昨年8月、試験運用したところ、大阪府能勢町や大津市で豪雨になる地域を事前に特定できた。

     今年8月からは情報通信研究機構と神戸市が、職員の携帯電話にメールで通知する実証試験を始める。同市では08年、局地豪雨による川の増水で児童ら5人が亡くなっている。

     中北教授は「局地豪雨が起きる直前でも危険を伝えることができれば、それは貴重な情報となる。将来的には住民に幅広く知らせる仕組みにしたい」と話す。

    □■□

     落雷による停電時でも局地豪雨をいち早く察知できるシステムの開発も進む。

     NTTデータ中国(広島市)や古河電気工業(東京都)などは、光ファイバーを利用して、雨量や川の水位が計測できるシステムを開発した。

     現在降っている雨を即時に観測できる特殊な雨量計などを光ファイバーでつなぎ、役所などにデータを送る。電源は不要で、停電時でも使える。これまで岡山県鏡野町や徳島県美波町で導入されている。

     NTTデータ中国の担当者は「川の氾濫などの危険を知らせることに使えるかもしれない」としている。

    2016年07月29日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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