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    {知る} 微細化「マイクロプラスチック」

    回収困難世界の海汚染

     5ミリ・メートル以下の小さなプラスチックの破片「マイクロプラスチック」が、世界中の海で検出されている。微小なため回収が難しく、誤飲によって生物や生態系への影響も懸念される。国際的な対応が必要で、実態把握に向けた調査が進められている。(冨山優介)

    • 大阪湾での調査で海水を採取する京都大のグループ(2015年11月)(田中周平・京都大准教授提供)
      大阪湾での調査で海水を採取する京都大のグループ(2015年11月)(田中周平・京都大准教授提供)
    • マイクロプラスチックの拡大写真。目盛りは0.18ミリ (田中周平・京都大准教授提供)
      マイクロプラスチックの拡大写真。目盛りは0.18ミリ (田中周平・京都大准教授提供)
    • 琵琶湖や大阪湾で検出されたマイクロプラスチック(田中周平・京都大准教授提供)
      琵琶湖や大阪湾で検出されたマイクロプラスチック(田中周平・京都大准教授提供)

    ■生態系に影響

     プラスチックは、主に石油を原料とする高分子がつながってできている。ペットボトルや包装フィルム、部品の材料など幅広く使われ、生活に欠かせない。化学的に安定した物質だが、紫外線や熱、波の力を繰り返し受けると微細化が進む。これがマイクロプラスチックになる。

     国内各地で調査している高田秀重・東京農工大教授(環境化学)は「プランクトンや小魚などが餌と間違えて食べると、傷つく恐れがある」と指摘。さらに、「マイクロプラスチックは汚染物質を吸着しやすい。食べた生物の体内に汚染物質を運び、ため込んでしまう」と話す。

     小魚が食べたマイクロプラスチックは、その小魚を食べる大型の生き物たちの体内に蓄積されていく。2015年にドイツで開かれた主要国首脳会議の宣言では、「海や沿岸の生物や生態系に直接影響し、潜在的には人間の健康にも影響しうる世界的な課題」と記された。

     環境省によると、日本の沿岸や沖合の各地でも検出されている。調査の一例では、日本周辺海域では1平方キロ・メートル当たり172万個が存在し、世界の海全体に比べると27倍も多かった。同省は「継続的に調査し、実態を把握していく」と説明する。

    ■南極でも

     影響は極域にも広がっている。九州大や東京海洋大の研究チームは昨年9月、南極海でマイクロプラスチックを検出したと発表した。多い場所では1平方キロ・メートル当たり28万6000個。北半球の平均的な密度に匹敵する数値だ。

     チームの磯辺篤彦・九大教授(海洋物理学)は「長い年月をかけて運ばれたものがほとんどだろう」とした上で、「人間の活動から最も遠い南極にも存在していた。地球上のどこで見つかってもおかしくないことを示している」と話す。

     田中周平・京都大准教授(環境工学)らのグループは琵琶湖や大阪湾で調査を続けている。16年、琵琶湖の南湖の6か所で行った調査では、1立方メートルの水の中に0・21~6・51個のマイクロプラスチックが見つかった。ほとんどが、レジ袋や包装フィルムなどに使われるポリエチレンやポリプロピレンだった。また、琵琶湖のワカサギを調べたところ、31匹のうち9匹の消化器官からマイクロプラスチックを検出した。

     田中准教授は「外洋と違って琵琶湖は閉鎖された水域なので、周囲で捨てられたごみなどの影響を受けやすい」と語る。今後、滋賀県と共同でさらに詳しく調査を進める予定だ。

    ■海岸でごみ回収を

     愛媛大の日向博文教授(沿岸海洋学)らのグループは、東京都・伊豆諸島の新島村の海岸で、マイクロプラスチックがどれくらい海岸にとどまるかの検証を続けている。プラスチックに見立てた小さな木片に目印を付けて散布し、追跡する。マイクロプラスチック程度の大きさなら10日ほどで海へ流れ出る一方、10センチ程度なら7、8か月滞留するという試算が得られた。

     日向教授は「海岸に長期間残るうちに、紫外線などでマイクロプラスチックになり、微細化すればすぐに海へ流れてしまう」と指摘。「海岸に捨てられたプラスチックごみを片づけることは、マイクロプラスチックの発生を抑える有効な方法だ」と話している。

    手離れた後考えて

     神戸市を拠点に、海岸のごみの調査を続けている団体「クリーンアップ関西事務局」の古川公彦・共同代表=写真=に、海岸のごみの現状を聞いた。

     我々の団体は1990年から、主に兵庫県の須磨海岸のごみの実態調査を続けている。社会人15人程度のメンバーが中心で、企業など協力してくれる団体とともに年2回、ごみの種類と量を記録している。

     プラスチック片の量は、ごみの中で常に1、2位の多さで、この十数年変わっていない。99年に鳥取砂丘で調べた際も、傾向は同じだった。数ミリ程度のものが多いが、より微細化すると回収は難しく、人の手では拾いきれないマイクロプラスチックは多くあるだろう。

     プラスチックは便利だが、化学的に安定であるために、環境の中に残り続け、生物への影響も出ている。自分の手を離れたプラスチックの行く末がどうなるのか。そこに思いを巡らせてほしい。

    2017年04月28日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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