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    コイズミの学習机(コイズミファニテック)

    「リビングに置ける」追求 

     「コイズミ」ブランドの学習机 は、少子化で市場が大幅に縮小する中でも20年間、トップシェア(占有率)を守り続けている。需要を先取りした提案力が強みで、子どもの成長に合わせてサイズを変えるという新たな発想で逆風に立ち向かう。(山本照明)

     

     

     成長と共に大きく 

    • コイズミファニテックの人気商品「スタディアップデスク」(手前)を開発した北川さん(左)と池野さん(大阪市西区で)=尾崎孝撮影
      コイズミファニテックの人気商品「スタディアップデスク」(手前)を開発した北川さん(左)と池野さん(大阪市西区で)=尾崎孝撮影

     「子どもが小さい時はものすごく小さく、成長して大きくなったら、大きくなる机がつくれないか」。2014年秋、コイズミファニテックで商品開発を指揮する企画開発部長の北川康文(54)は、メンバーにこう投げかけた。

     北川がイメージしたのは、小学校入学時はリビングで、成長に従って、子ども部屋、そして書斎へと、置く場所を変えながら長く使える机だった。

     「難関中学の合格者の多くが、子ども部屋ではなく、親子が会話しやすいダイニングテーブルやこたつで勉強していた」とする調査結果がここ数年、広く知られるようになっていたことが念頭にあった。

     ただ、コイズミのアンケート調査では、学習机をリビングに置くことを検討している親は2割にとどまった。「学習机は大きい」というのが、その理由だった。

     学習机市場はピークの1980年代に年間120万台に達したが、少子化が進むにつれて減少し、現在はその半分程度。ニトリホールディングスやスウェーデンのイケアなど家具大手との競争も激しい。

     「時代の流れに対応しないと、生き残れない」。社内の危機感は強かった。

     半月後、複数の提案が集まった。それらを基にメンバーで議論を重ね、「本棚を上下に分離し、袖箱とともに机の下に収まるようにする」という基本構造が固まった。

     設計を任されたのは、原案の一つを出した池野修平(27)だ。

     机や棚、袖箱をどう組み替えればリビングに置けるサイズに収まるか。家庭でも手軽に組み替えられるようボルトは少なくしたいが、強度は保つ必要がある。構造は複雑でも、工場で生産しやすいようにしなければならない。

     池野が1か月かけて書き上げた図面を元に、試作品を作り、品質管理や営業担当者と検討を重ね、図面を書き直す作業を繰り返した。棚や袖箱の高さ、ナットの位置などを数ミリ単位で調整し、15年春、最終形が完成した。  

    記憶に残る贈り物 

     「スタディアップデスク」と名付けた学習机は、本棚を足元に収納するなどして最も小さくした場合、幅105センチ、奥行き55センチと従来の学習机より一回り小さい。袖箱や本棚をつなげて置くと、幅は129~172センチまで広げることができる。

     組み替えパターンは8通り。リビングやダイニングの落ち着いた雰囲気にも合うようシンプルなデザインにした。15年夏に発売すると、一度に子ども2人分を買っていく親もいた。池野は「今までになく、完成度も高い学習机を多くの人に届けられた」と胸を張る。

     今シーズンは組み替えパターンを10通りに増やし、より使い勝手を良くした。北川は「学習机は子どもにとって初めて買ってもらう大きなプレゼント。いつまでも記憶に残る贈り物になる。長くつきあってもらえる学習机を提案していきたい」と意気込む。(敬称略) 

     

    コイズミの学習机

     机上の棚や引き出しを備え、子どもの勉強に必要な機能をまとめた学習机が登場したのは1960年代。1966年に初めて蛍光灯を付けて発売したのがコイズミだ。78年には「6・3・3で12年」をうたい、机上棚が取り外せて、小学生から高校生まで使いやすい学習机を世に送り出した。仮面ライダーやポケモンといった人気キャラクターも活用し、90年代にはシェアトップに。「スタディアップデスク」の売れ筋の「アルフ」は税抜き12万2000円。

     

     

    ホテル向け家具も 

     

    川上隆司(かわかみ・たかし)社長 59 

    • コイズミファニテックの川上隆司社長(23日午後3時7分、大阪市西区で)=尾崎孝撮影
      コイズミファニテックの川上隆司社長(23日午後3時7分、大阪市西区で)=尾崎孝撮影

     コイズミが学習机を作り始めて50年が過ぎたが、常に業界に新しい風を起こしてきた。初めて学習机に蛍光灯を備え付け、「6・3・3で12年」をコンセプトに机の上の棚を外せる学習机も売り出した。コイズミが提案した机と本棚の組み替えは、今では当たり前になっている。

     ただ、学習机の市場は厳しい。1年間に生まれる子どもの数は100万人を割り込んでいる。小学校入学時に学習机を買う人も10年前は6割以上いたが、今は4割程度にとどまる。

     そんな中で、リビングで勉強させる家庭が増えていることに着目し、新開発したのが「スタディアップデスク」だ。教育熱心な親は増えており、学習机が必要なくなったわけではない。世の中の流れをつかみ、今後もよそがやらない新しい学習机を提案したい。

     新事業にも乗り出している。一つがホテル向けの家具だ。訪日客が増え、2020年東京五輪に向けホテルは建設ブームにある。参入して1年半だが受注は好調だ。

     デザイン性が高く、自宅に置きやすい電動ベッドにも力を入れている。立ち上がるのをサポートする電動のソファも好評だ。

     独自の発想で世の中にないものを提案してきたのが、300年の歴史を持つ小泉産業グループ。そのDNAを生かし、これからも新たな商品を生み出していきたい。 

     

    こんな会社 

     大阪市に本社を置く小泉産業グループの中核会社。小泉産業は1716年、近江出身の武士だった小泉太兵衛が行商を始めて創業。電気や石油の器具を手掛けていたが、照明や家具に本格参入。2006年、家具事業を分社してコイズミファニテックを設立した。15年度の売上高は、グループ全体で581億円、コイズミファニテックは64億円。グループの従業員数は1768人(15年度末)。

    2017年03月29日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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