文字サイズ

    「そうだ 京都、行こう」キャンペーン(JR東海)

    • 「まだまだ京都には知られていない魅力がある」と語るJR東海営業本部の堀江隆行さん(名古屋市港区のリニア・鉄道館で)=松田賢一撮影
      「まだまだ京都には知られていない魅力がある」と語るJR東海営業本部の堀江隆行さん(名古屋市港区のリニア・鉄道館で)=松田賢一撮影

    時代読み古都へいざなう 

     

     荘厳な寺社の映像に、ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」の劇中歌「私のお気に入り」の旋律が調和する。JR東海が手がける「そうだ 京都、行こう。」キャンペーン のテレビCMには、古都の魅力が凝縮されている。心に響くフレーズで、20年以上にわたり旅情をかき立ててきた。(山村英隆) 

     

    足元の魅力 

     

     1993年の1回目は清水寺(京都市東山区)を取り上げた。夕焼けに染まる「清水の舞台」に、「パリやロスに ちょっと詳しいより 京都にうんと詳しいほうが かっこいいかもしれないな。」のキャッチコピー。誰もが背伸びしたバブル経済が終わり、足元を見つめ直していた人々の胸にストンと落ちた。

     定番の観光名所にとどまらず、毘沙門堂(同市山科区)のように全国的にはあまり知られていない場所も紹介した。キャンペーンの効果は大きく、新幹線で京都を訪れる各社の旅行商品は、利用者数が2003~12年度に約7割伸びたという。

     JR東海でプロモーションを担当する堀江隆行(35)は、「京都の皆さんの協力なしにはここまで続けられなかった。愚直にこのキャンペーンをやり続けてきたことが実を結びつつある」と話す。 

     

    新旧融合の美 

     

     堀江自身は町家を活用したカフェなど、新しさと古さの融合が京都の魅力だと感じる。月に平均3回ほど出張して、古都の奥深さに触れている。

     実はポスターなどの写真は、現在は1年前に撮り終えている。撮影場所にはカメラマンや照明スタッフらが、多い時で100人程度集まる。暗いうちから準備を進め、参拝客が集まる拝観時間までに最高の一瞬を切り取る。

     しかし、キャッチコピーはキャンペーン直前に練り上げる。堀江は「撮影してからの約1年間で、世間の微妙な流行などが変わってしまう。時代性を合わせることが大切」と説明する。神社仏閣が醸す悠久の美に、時代の空気感をちりばめていく作業だ。

     二条城(同市中京区)の桜を写した17年春のポスターには、「手のひらの小さな画面を のぞき込んでいた私を 上に向かせてくれた桜です。」のコピーを添え、スマートフォン全盛のデジタル化時代も皮肉った。 

     

    新たな方向性 

     

    16年6月には新キャンペーン「そうだ 京都は、今だ。」も始まった。従来は花見や紅葉シーズンの春と秋に、客足が集中していた。それ以外の時期の来訪を促すため、今度は文化に焦点を当てた。

     初回は大徳寺聚光院(同市北区)の国宝のふすま絵を取り上げた。16年に創建450年を迎えたのを機に、寄託先の京都国立博物館から期間限定で里帰りするタイミングを狙った。キャンペーンの反響は大きく、新たな方向性に手応えを感じた。

     堀江は「まだまだ京都には知られていない魅力がある。もっともっと多くの人に足を運んでもらい、ファンになってほしい」と胸を張った。(敬称略) 

     

     

    「そうだ 京都、行こう」キャンペーン 

     

     「平安遷都1200年」を翌年に控えた1993年に始まった。新幹線を使った遠距離恋愛がテーマの「シンデレラ・エクスプレス」などに続き、JR東海を代表するキャンペーンとなった。軽妙なキャッチコピーはコピーライターの太田恵美さん、情緒豊かな写真はカメラマンの高崎勝二さんが初回から担当。最も多く取り上げたのは東寺の5回。これまでの主なポスターは9月25日まで、名古屋市港区の「リニア・鉄道館」で展示している。 

     

    地元、沿線の皆さんと共に 

     

    厚地純夫(あつち・すみお)専務執行役員 営業本部長61 

     

     JR発足から30年が経過したが、JR東海には首都圏と中京圏、近畿圏を結ぶミッションがある。東京―名古屋―大阪間の輸送の質を上げる努力を続けないといけない。

     鉄道事業は沿線の皆さんと一緒に歩む商売だ。沿線の方々と長期にわたり連携してきた「そうだ 京都、行こう。」は、鉄道屋らしいありがたいキャンペーンといえる。

     京都には尽きることのない魅力がある。寺社や地元自治体の皆さんが協力してくれて、制作にあたるクリエイターの京都へのこだわりもすごい。だからこそ、これだけ長く続けられたのではないか。

     当社が運行する東海道新幹線は、日本経済に不可欠なサービスだ。「のぞみ」を1時間に最大10本運行しているが、出張や観光の乗客でいっぱいの状況。また、開業から50年以上が過ぎ、どこかの時点で建て替えなども必要になる。

     工事などで輸送を中断するわけにはいかず、バイパス(迂回うかい路)となるリニア中央新幹線の建設を決めた。輸送力が増せば色々な挑戦ができるので、リニアへの期待は非常に大きい。 

     

    こんな会社 

     

     1987年の国鉄分割民営化で、JR旅客6社のうち1社として誕生した。ドル箱の東海道新幹線(東京―新大阪駅)を抱えるため、売上高に占める新幹線の割合が約7割と、JR東日本(約2割)やJR西日本(約3割)を大きく上回る。建設中のリニア中央新幹線は、東京・品川―名古屋間が27年に、大阪までは最短で37年に開業予定。2017年3月期の連結売上高は1兆7569億円、従業員数は2万8593人(16年度末現在)。

    2017年05月10日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
    リンク