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    子ども専門写真館 スタジオアリス

     女性スタッフ 笑顔引き出す 

     

     タキシードや羽織はかま、お姫様のようなドレス。色鮮やかな衣装をまとった子どもたちがカメラにとびきりの笑顔を見せる。子ども専門写真館「スタジオアリス」 では、年間130万組以上が家族写真を撮影する。従来の写真館に利用者が抱いていた不満を解消し、女性スタッフの力を活用することで、新たな市場を作り出した。(松本裕平) 

     

     

    • 子供向けの写真館を展開するスタジオアリスの牧野俊介専務(奥右)と高橋信広執行役員(奥中央)(大阪市浪速区で)=浜井孝幸撮影
      子供向けの写真館を展開するスタジオアリスの牧野俊介専務(奥右)と高橋信広執行役員(奥中央)(大阪市浪速区で)=浜井孝幸撮影

     

     

     常識破り 

     

     「衣装は何着でも無料。着付けとヘアセットも無料。写真がその場で選べます」

     1992年10月。開業準備に追われていた大阪市淀川区の1号店には、こんなうたい文句が並んだチラシに対し、半信半疑の問い合わせが相次いだ。そんなことがあるわけない、だましているんじゃないか――。

     当時、1号店の店長だった専務の牧野俊介(54)は「本当だと説明してもなかなか納得してもらえなかった。それだけ画期的だった」と振り返る。

     その頃、記念写真は写真館で撮るのが一般的だったが、自分で衣装を準備しなければならなかった。写真の出来栄えをすぐに確認できない上、料金体系も不明瞭な店が多かった。それが当たり前とされていた。

     牧野らは参入にあたって、「業界の常識は世間の非常識」と、利用者の不満の種を全て取り払うことにした。衣装は和洋合わせて400種類を用意し、その場で映り具合を確認できるようにカメラの上にもう1台小型のカメラを取り付けた。

     料金も写真の大きさごとに1枚あたりの価格を明記し、自分でお気に入りのカットを選べるようにした。 

     

     

     子どもに安心感 

     

     子ども向けに特化したのは、七五三やお宮参りなど、写真を撮るイベントが多く、専門性が強みになるという狙いだった。

     3店目を出店した頃、あることに気付いた。前職がカメラマンだった男性よりも、居酒屋のアルバイトをしていた女性スタッフが撮った写真の方が出来が良かった。

     「子どもは女性の方が安心する。子どもの写真は表情が命で、カメラの経験は関係ない」(牧野)と、撮影専門の男性の採用を打ち切り、着付けやヘアセットもできる女性のみで店舗を運営することにした。

     スタジオの規格を統一し、カメラのしぼりやシャッタースピードを固定化して写真の品質を一定に保つ一方、スタッフは「子どもの笑顔を引き出す技術」に磨きをかけることに集中。それが人気につながっていった。

     現在は全国6か所に研修施設を設け、膝を折って子どもと同じ目線で話し、赤ちゃんには音の鳴るおもちゃを振って目線を誘導するなどのノウハウを学ぶ。従業員に女性が占める割合は今や97%にまで達している。

     子ども向けに特化して業績を伸ばしてきたが、2014年からは少子化や他社の参入による競争激化に対応し、新規事業の開拓を本格化させている。

     その一つが、結婚式や成人式など、大人も対象にした新業態「スタジオアリスHALULU(ハルル)」だ。無料で衣装を選び、その場で着付けやヘアセットができるなど、利用者の目線から業界の常識を打ち破って創り上げてきた「子ども専門写真館の定番」を、大人向けでも展開する。

     創業から20年以上がたち、スタジオで写真を撮った子どもたちが大人になっていたことがヒントになった。担当する執行役員の高橋信広(44)は「『大人になってもアリスで写真を撮りたい』というファンの声に応えたかった」と、狙いを話す。家族の思い出を未来に残す文化を、さらに発展させるための挑戦が続いている。(敬称略)

     

     

     

     子どもの撮影に特化した写真館。500着以上をそろえた衣装を何着でも無料で試着でき、子どもの笑顔を引き出す訓練を受けたスタッフのサービスが特長だ。

     1992年10月に大阪市淀川区で1号店を開業。韓国にも進出し、国内外で510店を展開している。現在は1歳以下の赤ちゃんを対象にした専門店のほか、成人式やブライダルなど大人の撮影に対応した業態、ペットと一緒に撮影できる出張サービスなども手がけている。 

     

     

     

     ご両親の感謝 やりがい

     

     

     川村広明(かわむら・ひろあき)社長 54

     

     子ども専門の写真館を始めた大きな理由は、家族の写真を飾る文化を作りたかったからだ。

     1号店を出して25年になるが、2016年は130万組以上の撮影をさせていただいた。家族写真の文化を日本に根付かせてきた自負はある。

     市場には多くの競合他社が参入してきたが、業界1位を維持できている要因は人材だ。うちの写真には、スタッフの接客や技術も含まれている。子どもさんがいい表情をした写真を撮れば、ご両親から感謝の言葉をもらえる。そこにやりがいを感じられる仲間を集めている。システムはまねできても、貫いてきた理念はまねできない。

     スマートフォンの普及で、いつでも簡単に写真が撮れる時代。それでもうちの店に足を運んでもらえるのは、子どもの成長の節目に写真館に行く、という行為に価値を感じてもらえているからだ。いつまでも残したいと思うのは、やはり紙の写真なのだと思う。

     新たな収益の柱に育てるため、写真データの閲覧や注文などの各種サービスをウェブ上で可能にする「オムニチャネル化」に取り組んでいる。大人向けも撮影できる業態や学校写真にも参入し、ハレの日だけでなく日常の写真も手がけている。

     これからも、写真を通じて家族の思い出を未来に残すお手伝いをしていきたい。

     

     

     

     1974年に大阪市福島区でフィルム現像ショップの運営会社として設立された。99年に現在の社名となり、2004年に株式を東京証券取引所1部に上場した。従業員の9割超が女性で、管理職でも約7割を占める。16年には厚生労働省が女性の活躍に積極的な企業を認定する「えるぼし」を取得した。16年12月期の連結売上高は387億円。従業員数は4008人(17年3月末時点)。 

    2017年05月24日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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