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    ECCジュニア(ECC)

    • 講師から英語を教わる子どもたち(大阪市北区で)=金沢修撮影
      講師から英語を教わる子どもたち(大阪市北区で)=金沢修撮影

    知的好奇心英語で育む 

     語学教室大手のECC(大阪市)は4月、子ども向け英会話教室「ECCジュニア 」のカリキュラムを大きく変えた。2020年度に始まる小学校での英語教育の教科化に向け、英会話の習得を目指す「英語を学ぶ」ではなく、英語で様々な分野の学習をする「英語で学ぶ」に主眼を置いた。国際社会に通用する資質を育むためだ。(田畑清二) 

     

    CLIL導入 

     ECCジュニアで講師の大橋久美(30)が赤いバラのような写真を指さし、英語で問いかけた。「どの動物の卵かな?」。子どもたちは「本当に卵?」「花みたいや」と驚きを口にした。正解は「a sea slug(ウミウシ)」。日本語でも答えられる人の少ない難問だった。

     カリキュラム変更で、学びの質は大きく変わった。例えば「これはリンゴです」ではなく、「リンゴは何科ですか」と英語で考える。語学に直接関係がなくても、知的好奇心をくすぐる内容を本格的に取り入れた。理科や社会など、他教科を英語で学ぶCLILクリル(内容言語統合型学習)と呼ばれる学習法だ。

     20年度には英語に慣れ親しむ「外国語活動」の対象が小学3、4年に前倒しされ、5、6年は成績が評価される「教科」になる。「指導内容を変えないと、取り残されるという危機感があった」(ECC総合教育研究所の中尾その子チーフ)という。

     経済産業省の「特定サービス産業実態調査」によると、外国語会話教室の15年の事業所数は9896で、売上高は1723億円だった。少子化の進展で、今後は市場規模の大幅な伸びが期待できない中、異業種からの新規参入などにより競争は激化している。

     カリキュラム変更の検討を始めたのは15年頃。当時、日本でも広がり始めていたCLILの導入を決め、教材の開発に乗り出した。その際、メキシコで使われていた英語の教科書を参考にした。 

     

    写真ふんだんに 

     ただ、メキシコの公用語であるスペイン語は、言語としては英語に比較的近い。日本語は文法などが英語と大きく異なるため、メキシコの教科書を焼き直しただけでは日本人には通用しない。試しに授業で使ってみたが、文章の多さなどから「子どもがポカンとしていた」という。

     そこで、文章量を3分の1程度に減らし、写真を多用した。教材作成を担当した江原泰之(44)は写真集めに奔走した。日本文化の一例として掲載した陶器製の浴槽「つぼ風呂」の写真は、自ら堺市の銭湯で撮った。各国の昼食を紹介したページには、撮影用に自宅で作ったロシア料理「ボルシチ」の写真を載せた。

     新たな教材を1年ほど試験的に用いてみて、学習意欲アップの効果があったと江原は確信する。「未知の言葉に出合っても、あきらめずに考えようとする子どもが増えた」と手応えを感じている。

     訪日外国人の急増や東京五輪・パラリンピックの開催など、日本に押し寄せるグローバル化の波は強まる一方だ。ECCジュニアの「英語で学ぶ」挑戦に終わりはない。(敬称略) 

     

     

    ECCジュニア 

     英語ができる主婦らが、自宅などを教室代わりに活用する「ホームティーチャー」の方式で指導。教室数は全国約1万1000か所、生徒数は約32万6000人で、いずれも子ども向け英会話教室では国内最多とされる。英語をコミュニケーションの道具として使いこなす「世界標準の英語力」の習得を目標に掲げている。主な対象は2歳から中学生だが、シニア向けの「プラチナクラブ」、高校生や社会人を対象としたブランチスクールもある。 

     

     

    指導にIT融合課題 

     

     

    花房雅博(はなふさ・まさひろ)副社長 63 

     日本人は、長期間にわたって英語の授業を受けている割には英語力が低い。英語を話そうとする時、文法を先に考えるため、口の動きが止まってしまっている。

     2020年度から小学校で英語教育が教科化され、英語力を引き上げるいい機会になる。「英語ができないといけない」という意識が高まるだろう。我々のように外国語教室を展開している民間企業にとっても、追い風であることは間違いない。英語嫌いの子どもが増えないよう、指導のやり方を工夫しないといけない。

     今後は子どもの人数が減り、高齢者が増える。ECCジュニアで4月から、シニア向け教室の「プラチナクラブ」を始めた。時間や金銭に余裕のある高齢者には、旅行で使う英会話を学びたいという需要が多い。早期に会員数を5万人まで増やしたい。技術の進化は著しく、いかにIT(情報技術)を融合させた指導をするかも今後の課題だ。

     訪日外国人が増えており、日本語を学びたい外国人は多い。日本語や中国語など、英語以外の語学のニーズもある。教育を軸に、新たな事業を起こしていきたい。 

     

     

    こんな会社 

     1962年に「ECC外語学院」を大阪市住吉区で創業。社名は英語の「Education(教育)」「Communication(意思疎通と相互理解)」「Community(社会共同体)」の頭文字に由来。大学編入を目指す人向けの「ECC編入学院」なども展開。本社は大阪市北区で、2017年5月期の売上高は425億円。17年5月末現在で従業員数1464人、講師3941人、生徒40万8732人。

    2018年05月30日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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