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    酒のCM禁止の国も フランス、50年で飲酒量半減

    • 「依存症は、酒を売る人や飲ませる人も一緒になって取り組むべき問題です」(神戸市西区で)=長沖真未撮影
      「依存症は、酒を売る人や飲ませる人も一緒になって取り組むべき問題です」(神戸市西区で)=長沖真未撮影

    麻生克郎 さん/

    アルコール依存症の現場から(24)/

     飲酒が関係した死者は全世界で1日平均9000人、1年だと約330万人に上り、世界保健機関(WHO)は「今後も世界的な健康問題であり続ける」として、各国に対策を求めている。

     世界は飲酒問題にどう取り組み、日本とどう違うのだろう。欧米事情に詳しい垂水病院(神戸市)の麻生克郎副院長(64)に聞いた。

     「例えばお酒のCMだとフランスやスウェーデンは禁止、スペインやイタリアは部分規制。日本やアメリカは業界の自主規制ですが、アメリカにはない直接的な飲酒シーンが日本にはある。日本の規制はないよりはまし、という程度です」

     飲酒問題に熱心に取り組んでいる国はどこですか。

     「有名なのはスウェーデン。蒸留酒とワインの小売りは国の専売制で、国の直営店が中心です。年齢確認が厳しく、20歳未満や酔った人には売らない。営業時間も短い。酒を利益重視で売らない。フランスは1960年代、世界一の飲酒国でしたが、政府が健康問題としてアルコール政策を立てた。ワインの質を改善して生産量を減らし、値段を引き上げ、酒の消費量を計画的に減らした。現在、飲酒量は50年前の半分です」

     安い酒が大量に売られる日本と対照的だ。

     「日本のアルコール規制には、二つの大きな欠陥があります。一つは酒販免許で酒屋やコンビニ、スーパーで『販売』する場合のみ必要で、飲食店などで『提供』するのは野放しになっている。フランスだと、酒を販売する免許とは別に、店で酒を提供するために必要な4段階の免許があり、規制が極めて厳しい。もう一つの欠陥は、酔っている人に酒を飲ませないための規制がない。例えばアメリカではドラムショップ(酒場)法と呼ばれる法律が大半の州にあり、酔っている人に酒を販売・提供した結果、その人が起こした行動や事故で損害が生じれば店側も賠償責任を負います」

     日本では未成年と飲酒運転の観点でしか規制の発想がない。海外との大きな違いだ。

     「アメリカでは店のスタッフに依存症などについて学ぶ研修を義務づけている州もあります。日本でも、ドラマなどでは飲み屋の店主が『お客さん、飲み過ぎですよ』とたしなめるシーンもある。適量を楽しんで、と思っている店はあるはずで、そういう良心的なプロを育て、増やす制度を、まず考えるべきです」

     飲酒運転の抑止が一昔前より進んだのは、何人もの命が失われた悲惨な事故に皆が向き合ったからだ。飲酒そのものが引き起こす問題についても、国民レベルの議論を起こすべき時だ。

     大分県出身。依存症治療と並行して海外文献の翻訳もこなし、アルコール健康障害対策基本法制定では海外の情報収集を担当した。

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    2017年03月16日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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