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    「変わる社会」(3)授業時間議論に活用

    個別学習効率よく

    • タブレット端末に表示されたAIが出題した問題を、黙々と解く生徒ら(東京都世田谷区の学習塾で「キュビナ・アカデミー」で)
      タブレット端末に表示されたAIが出題した問題を、黙々と解く生徒ら(東京都世田谷区の学習塾で「キュビナ・アカデミー」で)

     生徒たちは、タブレット端末に向かって人工知能(AI)が出す数学の問題を黙々と解いていた=写真=。講師の手元には、生徒の学習状況を表示する端末がある。端末が「集中力が低下」と警告した生徒には、講師が素早く近寄って「どうしたの」と声を掛けた。

     東京都世田谷区の学習塾「キュビナアカデミー」。ここで勉強を教えるのは独自に開発したAI教材「キュビナ」だ。講師は生徒のやる気を引き出す「コーチング」に集中する。中学1~3年の約50人が学ぶ。

     キュビナには1万題以上の問題を搭載。解答の正誤の判定だけでなく、生徒が書いた途中の数式も分析する。間違えると、関連する問題やヒントを出題する。図形などはアニメーションで見せ、生徒が深く理解できるよう工夫されている。

     塾に通う中学生の河端凌央りょう(14)は「間違えても何度もやり直せる。数学の苦手意識はなくなった」と話した。

     個々の能力に応じた「AI教育」で、学習効率は大幅にアップした。週2回、50分の授業で、1学年分を約4か月で終えるという。

     同塾の運営会社社長の神野元基(31)は「集団指導では個々の生徒にとって意味のある時間は、50分の授業で5分に過ぎない」と指摘。「余った時間を利用して、AIに取って代わられないように能動的に行動する力を教えたい」。AI教育で、新たな人材を育てるのが目標だ。

     AIが先生になる。そんな時代に人間に求められるものは何か。情報ネットワークが専門の近畿大理工学部教授の井口信和(53)は「AIが教えられることは家で学び、学校では議論を戦わせる。教師は、授業で『ファシリテーター』の能力が求められるようになるだろう」と見通す。

     ファシリテーターは、中立的な立場から議論が深まるように調整するまとめ役だ。「今のような一方的な授業ではなく、発言や発表を中心とする能動的学習が進むかもしれない」という。

     その第一歩として井口は、AIを搭載したロボットに授業の助手を行わせる研究を進める。学生の初歩的な質問への回答はAIに任せ、教員は、AIが抽出した学生が間違いやすい部分を中心に講義する。授業の質をより高めるための試みだ。ただ、井口は忠告した。「教師も生徒もAIが絶対正しいと頼ってしまうかもしれない。AIをうのみにして振り回されず、人間とうまく役割分担する教育が求められる」(敬称略)

    2017年04月14日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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