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    温かいコンビニ 関西発信(竹増貞信・ローソン社長) 

    • 竹増貞信・ローソン社長
      竹増貞信・ローソン社長

     大学卒業の23歳までを大阪府池田市で過ごした。幼少期の大阪は、阪神工業地帯の存在や、かつて日本一の商都であったプライドに加え、東京には負けないぞといった熱い思いが相まって、とても活気があったような気がする。私も、水前寺清子さんの歌のように「ぼろは着てても心の錦」、夢を持って生きていこうと思っていた。

     就職して東京に出た当初、ナンバーワン都市の東京の人は、大阪を「One of Them(多数の中の一つ)」と思っていることに憤慨した。一方、出張や帰阪した折、なんとなく大阪の元気がなくなっていく印象があり、寂しく思っていた。

     それがようやくここ3年ぐらいで大阪が元気を取り戻していると感じる。街には外国語を話す人が増え、京都や神戸、奈良にも多くの外国人が訪れている。関西人が脈々と築きあげた文化が世界から評価されているのだと実感する。

     ローソンは大阪府豊中市が発祥の地で、今もその1号店がある。今年元旦にまずそこを訪れ、その後、故中内功氏のお墓参りをさせていただき、新年の店舗巡回を開始した。発祥の地・関西をローソンが活気づけられればとの思いがあり、2年前に社長に就任してからは「近畿盛り上げ大作戦」を打ち出すなど、あの手この手の取り組みを展開している。

     関西と関東では消費者の気質が大きく異なる。関西の人は自分が値打ちがあると思えばお金を使う。一方で関東の人は自分の価値観に加え、周囲の評価も大事にする。また、100円のコーヒーを50円で買えたら、大阪の人は「50円も得した」と自慢げに話す。東京の人は50円で買えても、それを話さない人が多い印象がある。

     私自身にも関西流の行動パターンが染みついていて、スーパーで店員さんに「これ安くならへんの」とついつい聞いてしまう。肉屋さんに行ったら「ちょっとおまけして」と言い、少しでも多くしてもらえたら「やった!」と喜び、達成感に浸る。日常の買い物もエンターテインメントに変えて、「今日も得したな」と思える感性が関西にはある。

     だからといって、決して高いモノが売れないわけではない。高級チョコレートの「ゴディバ」とコラボした少し値の張るスイーツは爆発的に売れた。関西人は値打ちがあるということが大好きだ。

    • 「服部緑地公園」 絵・うらたじゅん
      「服部緑地公園」 絵・うらたじゅん

     関西の加盟店オーナーは、自分が商売人だという心意気が強い人が多い。「商売はオレのやり方でやる。果敢に挑戦しないと面白くない」という考え方が根底にある。関西にはそうしたチャレンジ精神が根付いており、経済の好循環に結びついている。地域活性化のカギになるし、今の日本全体にとっても大切なことである。

     関西には独自の文化が各地に根付いている。大阪には笑いと商売の文化がある。京都には伝統と町家の文化があり、神戸には外国の香りが漂う。それぞれが個性際立つ特徴を持っているのは、自分たちの感性や価値観を大切にしてきたからこそだろう。そうしたバックボーンを大切にしながら、常にチャレンジし続ける活気を持ち続ける関西でありたい。ハングリー精神を忘れず、絶えず情報を発信し続けることが重要だと考える。

     近年アマゾンに代表される電子商取引(eコマース)が拡大しているが、ローソンはリアルな店舗と、そこで働く人たちに支えられている。オーナーや店長の人柄がお店柄となり、お客さまに慕われるお店となる。地域の安全や子どもたちを見守ることもコンビニの大事な役割と思っている。

     共働き世帯が増え、家事にかける時間を効率化する傾向も強まっている。eコマースの宅配を家で待つよりも、近所のローソンの方が便利なことも多い。平日、仕事の行き帰りの店舗で時間を無駄にせず、生活に必要なモノが賄える。多様な働き方を支えることにもつながるだろう。地域のシニアの方が、ゆっくりと過ごす場を提供することもできる。

     関西のローソンとして、最先端のデジタル技術を活用し業務を効率化しつつ、温かい人情のあるコンビニとして発展を続けていきたい。そうした取り組みはこの関西から深められると考えている。

     

     

    ◇たけます・さだのぶ 1993年大阪大経済学部卒、三菱商事入社。米国勤務などを経て、2014年ローソン副社長。16年6月より社長。大阪府出身。48歳。

    2018年03月10日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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