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第12部 酒造りにかける〜広島県東広島市から<6>飛躍信じ続く挑戦

 環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加を巡る議論が沸騰していた11月初め、東京・霞が関に経済産業省の北神圭朗政務官(44)=写真=を訪ねた。

 政府は日本酒など地場産業の将来をどう考えているのか。

 北神氏は、海外を目指す蔵元の動きを評価した上で「海外からワインが来るからと、『さらに関税をかけて日本酒を守れ』というのは健全ではないでしょう。海外と競うために自分たちの技能をどう生かすかが大切です」と述べ、「その気概を持った企業は、我々も強く下支えしていきたい」と強調した。

 具体的には、経産省が6月に策定した「中小企業海外展開支援大綱」がある。各省庁が連携し、国際競争力を持った中小企業を増やそうという施策だ。

 北神氏は期待を込めて話す。「世界では健康的なイメージの和食と日本酒は、高い評価を受けている。常に挑戦できる分野であり、意欲を持った人がもっと出てきてほしい」

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広島市内の酒販店に入荷した「魂志会」の6蔵元の酒(撮影用に冷蔵庫から出しています)

 東広島市の金光酒造で、杜氏(とうじ)の金光秀起さん(36)は仕込みに励みながら、取材にこう答えた。「もちろん、いずれ海外に酒を出したい気持ちはあります。でも、まずは足固めですよ」

 現在、秀起さんは市内だけでなく、県内各地の蔵元と「魂志(こんし)会」と名付けた勉強会を開いて交流を重ねる。技に磨きをかけるため、六つの蔵元の30〜50歳代の造り手が集まって、自由に議論し、酒販店や飲食店とも意見を交換している。

 東北の名酒に魅せられ、身内の反対を押し切って機械造りから手造りに転換した経営者や、病に倒れた父の後を継ぎ、独学で仕込みを覚えて蔵を立て直した杜氏もいる。たどった道のりは不思議と皆、似ている。

 「自分が一番いい酒を造るという負けん気の強いライバルばかり」と秀起さん。2004年結成以来、六つの蔵元は、いずれも売り上げを伸ばす。

 地場産業の行く末は、TPPを追い風にできるかどうかも鍵を握りそうだ。唯一の女性で同市の今田酒造本店の杜氏、今田美穂さん(50)は「酒のおいしさを世界に広げるには、一つの蔵だけではなく、全体でレベルを上げ、魅力を発信していかなければ」と力を込める。

 秀起さんも思いは同じだ。日本酒を取り巻く厳しさは変わらないが、じっくりと上質の酒を造り続ければ、いつか大きく飛躍できると信じている。(第12部おわり)

 

 〈中小企業海外展開支援〉

 政府の新成長戦略の一つ。生き残りをかけて海外進出を目指す中小企業の競争力向上を目的とし、各国の行政手続きやマーケットの動向など入手困難な情報を提供し、人材育成や資金調達などをサポートする。政府の支援ではほかに、日本酒など地場産品の輸出を補助金などで後押しする「JAPANブランド育成支援事業」もある。

2011年12月8日  読売新聞)
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