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[実践者に聞く]京都教育大学付属桃山中学校 神崎友子先生今年度、京都教育大学付属桃山幼稚園、小学校、中学校の隣接する3つの付属校園でNIEを進めている国語科担当の神崎友子先生にお聞きしました。2003年から幅広く新聞を活用した実践をされています。 −−NIEに取り組んだきっかけは? 2003年3月に米国を中心とするイラク侵攻があり、その4月、生徒の話題にイラク戦争がよく出てきましたので、今世界で起こっていることについてリアルタイムで考えさせたいと思い、新聞を主たる教材として授業に取り入れたのがNIEをするきっかけになりました。生徒にイラク戦争に関する複数の新聞資料を提示し、「なぜ、この戦争が起こったのか」「イラク側と米国側の報道の違い」「日本の対応と今後のスタンス」などについて小グループで話し合いをさせたところ、生徒たちは資料をもとに白熱した議論を展開し、「また新聞から考えたい」という声が多く聞かれました。 ![]() その後も「海外で活躍する日本人」をテーマに海外で活躍するスポーツ選手や指揮者、登山家などの「ひと」の記事から「彼らが海外で成功した理由」や「グローバルな視点で考えたとき、社会ではどんなことが要求されるか」などを議論する中で、自分たちの将来や社会生活について考える契機となりました。 NIEでは記事を「読む」、記事について考えたことをグループやクラスで「話し合う」、自分の考えを文章として「書く」、また、記事を読み、文章を書く中で自然と漢字や語彙(ごい)などの「言葉の力」を身につけるというように、国語科の指導内容の「読む」「話す・聞く」「書く」「言語に関する事項」のすべてを含んでいます。 このようにNIEは国語科の指導内容に適した学習を展開するということ、「今」をとらえる学習であること、また様々な分野で活躍する人たちの記事が載っていることからキャリア教育にも通じていること、そして何より生徒の意欲を喚起する教材であること、これらがNIEの魅力であり、NIEを「これからの教育の一翼を担う学習活動」ととらえている理由です。 −−平成23年度の取り組みを教えて下さい。 昨年度から京都教育大学付属桃山幼稚園、小学校、中学校で国語科を軸にNIEに取り組んでいます。幼稚園では、まだ文字を学習していませんので記事や広告の写真をもとに幼児が会話したり、4コマ漫画を1コマずつ見てイメージをふくらませ、お話として組み立てたりと、想像力やことばをつむぐ力、コミュニケーション力を育てる保育環境および教材として新聞を活用しています。幼児にとって新聞は鳥かごの底にしいてあるものから、「見るもの」「いろんなものがのっているもの」に変化してきました。 小学校、中学校では、NIEに取り組んでいる中学生が、一般紙をまだ自立して読めない小学生に対して、難しい言葉や記事の内容を教えるという協同学習を行っています。 小学生の学びはもちろん、中学生も教えることで今まであいまいであった知識のとらえ直しをするなど、互恵性のある活動となっています。 また、NIEを通して、年長者は年少者に優しく接し、年少者は年長者を敬うといった、現在の子ども社会で薄れつつある「タテの関係」を育てることも視野に入れています。 −−実践を続けてきて、生徒たちに変化は見られましたか? 2006年に入学した生徒を対象に、3年間PISA型読解力の向上を目的にNIEの実践を行ってきました。実践の検証として、PISAや全国学力調査を参考にした読解力テストを定期的に作成し、実施する中で、読解力の向上、特に記述に関する無答率の低下が顕著に見られました。 −−実践効果についてはいかがですか? NIEに取り組んできた卒業生から、今でも新聞を日々の情報源として活用しているという声を聞くのが一番うれしいです。高度情報化社会の中で、さまざまな情報から自分が得たい情報を見つけ、精査しながら自らの生活に生かしていく。今後電子メディアの発達とともに紙媒体である新聞がどうなっていくかわかりませんが、今新聞で情報との接し方を学んでおくことが生徒たちの「生きる力」の基盤になると考えています。 −−今までの中で特に印象深い取り組みがありましたら教えてください。 以前、小学2年生に「いのちについて考えよう」をテーマに、臓器移植の記事について授業をしたときのことです。「臓器移植」という難しいテーマについて、8歳の子どもたちが、「もし自分が臓器をあげる立場だったら」逆に「もらう立場だったら」と、子どもの臓器を提供した親の記事や、臓器をもらって元気に過ごしている子どもの記事の説明を聞きながら真剣に考えていました。 通常の生活でこのようなことについて考えることはありませんが、「新聞」という教材は目の前にある現実の問題を提起します。こういった問題について考えるのは大人だけでなく、小さな子どもでも適切な資料があれば自分たちの問題としてしっかりとらえることができるのだと改めて感じました。 −−新聞社に要望することは。 現在、全国の1%のNIE実践校に指定された学校にしか新聞の無料購読制度はありません。1%といわず、すべての学校に新聞が届けられることを願います。 −−これからNIEを始める先生たちにメッセージをお願いします。 始めから授業の主たる教材として新聞を使おうとすると、どう使っていいかわからず、なかなか前に進めないでしょう。まずは教科や学級指導の小ネタとして新聞記事をもとに話をされてみてはいかがでしょうか。また、可能であれば新聞1紙を生徒に渡し、気になった記事を選ばせ、選んだ理由や感想を書くといった活動も生徒の自主的な学習となります。生徒が興味をもつ記事について知ることも、教材づくりのヒントになります。 <感想>神崎先生は、国語科担当として3年間<PISA型読解力の向上>を目標にNIE実践を行い、その結果、「読解力の向上」と共に、「特に記述に関する無答率の低下が顕著に見られた」など新聞活用の効果をしっかり確証しましたが、NIEを実践する国語科の先生たちにとっては心強い報告です。また、大学生と中学生、保育園児と小学生・中学生が一緒に取り組むという新しい形のNIEにも着目し、実践を通して双方が高まりあうとい形態を模索しています。先生の多彩な研究に関する実践報告を期待したいと思います。(教育支援アドバイザー 徳永祥子) (2011年7月28日 読売新聞)
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