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飛び出すか 世界新

 海外のトップ選手が集う世界選手権は、勝敗だけでなく記録面でも大きな注目が集まる。16年前の東京大会では、男子百メートルでカール・ルイス(米)が9秒86の世界新をマークすると、走り幅跳びでマイク・パウエル(米)も8メートル95という大ジャンプを見せ、観客を沸かせた。今回の大阪でも、世界を驚かすような記録を生む選手が現れるか。世界記録の期待がかかる選手たちを紹介する。

21回目更新「大阪で」 女子棒高跳び

エレーナ・イシンバエワ(25)ロシア

 通算20回――。室内、屋外を合わせてイシンバエワが世界記録を更新した回数だ。

 初めての「ワールド・レコード」は4年前、21歳の時だった。英国のゲーツヘッドで行われた大会で、それまでの記録を1センチ上回る4メートル82を跳んだ。

 そこから、女子棒高跳びは「イシンバエワの種目」となった。次々と記録を更新していき、05年7月には女子で初めて5メートル越えを達成。翌月の世界選手権ヘルシンキ大会で、記録を5メートル01にまで伸ばした。

 今年2月のウクライナでの室内競技会で、1年前に自らが樹立した室内世界記録を2センチ更新する4メートル93をマーク。屋外、室内合わせての世界記録樹立回数を20とした。男子棒高跳びで、「鳥人」と呼ばれたセルゲイ・ブブカ(ウクライナ)の世界記録更新回数「35」も視野に入ってきた。

 今季は当初、なかなか記録が伸びず、6月までのベストは4メートル85にとどまっていた。それが7月6日に今季世界最高となる4メートル91を跳ぶと、13日にも4メートル90をマーク。「少し悩んでいたが、技術的にも余裕を持てるようになった」。大きな試合を前に調子を上げてくるところは、さすがだ。

 今大会、ファンが何を望んでいるかは十分に自覚している。そのために、開幕する10日も前の今月15日に来日し、香川県で合宿を張って、しっかり調整に打ち込んだ。

 「大阪では世界記録に挑戦したい」。「有言実行」で偉業に挑む。

9秒77突破狙う

タイソン・ゲイ(24)米/アサファ・パウエル(24)ジャマイカ

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アサファ・パウエル

 「世界最速の男」を決める男子百メートルは、アサファ・パウエル(ジャマイカ)、タイソン・ゲイ(米)という今の世界を代表するスプリンターが激突する。

 2人はともに1982年生まれ。昨季は、パウエルがゲイに対し、5戦全勝の成績を残したが、力を伸ばしたゲイが全米選手権で短距離2冠に輝いた今季は、直接対決が実現していない。互いのライバル心が火花を散らす今大会で、パウエルの持つ世界記録(9秒77)の更新が期待される。

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タイソン・ゲイ

 パウエルは、一昨年に樹立した9秒77の世界記録を、昨季は2度マーク。今季は9秒90が最高だが、「大阪で世界記録を更新できるかもしれない」。9秒84の今季世界最高のタイムを携えて大阪に乗り込んできたゲイは、「走る時は、いつも世界新を狙っている」。6月のニューヨークでは追い風2・2メートルの参考記録ながら9秒76で走っている。

 「大阪でパウエルと会えるのが楽しみ。しっかり準備し、その一戦に集中したい」と語るゲイに対し、パウエルは「ゲイが今季、好タイムを出していることは認めるが、大阪で金メダルを取る自信はある」。

 米国は世界選手権の男子百メートルで、カール・ルイス、モーリス・グリーンがともに3連覇し、7度の優勝を飾っている。ゲイが短距離王国の威信を保つのか。パウエルが五輪、世界選手権を通じてこの種目初の金メダルをジャマイカにもたらすのか。記録とともに、金メダルの行方も目が離せない。


M・ジョンソンまで0秒32

男子400メートル ジェレミー・ウォリナー(23)米

 男女47種目で優勝を争う世界選手権。出場選手の中で「金メダル」に最も近い選手の一人が、男子四百メートルのウォリナーだろう。

 この種目の世界記録保持者マイケル・ジョンソンを育てたクライド・ハート氏が指導して、ジョンソン本人が代理人を買って出る「英才教育」で力をつけた。3年前のアテネ五輪で金メダル。翌年の世界選手権ヘルシンキ大会も優勝した。昨年はグランプリ(GP)最高峰のゴールデンリーグ6戦に全勝して、圧倒的な強さを見せつけた。

 今年は5月のGP大阪大会を44秒02で制すると、8月7日にストックホルムの大会で、世界記録にあと0秒32と迫る43秒50の世界歴代3位の好記録をマークして圧勝した。今季ランキングでは、2位以下に0秒55もの大差をつける圧倒的な記録に「完璧(かんぺき)なレース。満足できる走りだった」。「同じように走ることができれば、大阪では43秒3台のタイムが出るんじゃないかな」と意欲を見せた。

 「MJ(ジョンソン)には、世界記録(43秒18)を破る秘策は教えられてはいないんだ」と冗談めかして言うが、胸を突き出して高速回転で足を運ぶ独特の走法で大記録を刻んだ先輩の“背中”は近づいてきた。1メートル88、67キロの研ぎ澄まされた体で、ジョンソンとは対照的な流れるような美しいフォームで駆ける。「ウォリナーの時代」が幕を開けようとしている。

男子110メートル障害の劉翔 1万メートルのベケレにも期待

 男子で自らが持つ世界記録更新が期待されるのが、百十メートル障害の劉翔(中国)と、一万メートルのケネニサ・ベケレ(エチオピア)だ。

 劉翔は、昨年7月のローザンヌ国際で12秒88の世界新。アテネ五輪で男子トラック種目アジア勢初の金メダルに輝いた「アジアの昇り竜」は、長居で行われる大阪国際グランプリは4連覇中とトラックとの相性もいい。

 五千メートルの世界記録保持者でもあるベケレは、一昨年のゴールデンリーグ(ブリュッセル)で打ち立てた一万メートルの世界記録26分17秒53を突破できるか。

 女子で注目は五千メートル。14分16秒63の世界記録保持者メセレト・デファー、前回世界選手権で五千メートル、一万メートル2冠のティルネッシュ・ディババ(ともにエチオピア)が記録更新を狙う。


2007年8月24日  読売新聞)
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