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(15)「省エネ」スタート 大きな武器に男子100メートル 朝原宣治(大阪ガス)6月で35歳になった朝原宣治は、95年イエテボリ大会に走り幅跳びで出場し12位になったのを皮切りに、五輪・世界陸上を合わせ、これで9度目の出場となる。この間、99年セビリア大会のみ、故障のため欠場している。これがなければ12年間にわたり、五輪・世界陸上、皆勤賞となっていた。 96年アトランタ五輪以降は、400メートルリレーのみ出場だった00年シドニー五輪を除き、100メートルに出場している。準決勝進出4回、2次予選敗退2回。 その朝原が、8月になって、スタートに開眼したという。4日に、加古川ナイター陸上という大会に出場した。練習の一環、タイムトライアルのような意味合いのレースだった。100メートルのレースは、2本あった。その2本目に10秒15を記録した。 1本目から2本目までの間隔が、3時間ほどあったという。その間、スタートの練習をしていた。そのとき、ふと、これまで追い求めてきた感覚のスタートができた。新たな感覚がつかめた。そのスタートを試した2本目で10秒15が出た。 朝原は、今季日本最高となる10秒15を5月の関西実業団選手権で出しており、これが今季2度目の10秒15。そのスタートの動きを説明するのは難しいという。 「わかりやすくいえば、これまでは、自分の力を使って地面を蹴って加速していたものが、何というか、自分の力を使わずに、重心を移動していくだけで、力を使わずに加速できるという感覚のものです。省エネで、加速できます」 わずか10秒前後で終わってしまう男子100メートル、省エネでいけることに、そうメリットはないと思う人もいるかもしれない。しかし、100メートルとて、省エネは、大きなテーマとなる。 91年東京大会で、日本陸連の科学委員会バイオメカニクス班が、多くのデータを収集したが、そのなかに100メートルについての10メートルごとの選手のスピードの変化をとらえた有名なデータがある。それによれば、その選手の最高速度が計測されたのは、早い選手で40〜50メートル、遅い選手で60〜70メートル。全選手の速度を平均すると40〜50メートルが最も速くなり、それを100%とすると、50〜60メートルは99・26%、60〜70メートルは99・31%で、70〜80メートルになると97・70%、大きく落ちてしまう。 40〜50メートルに最高速度がくる選手は前半型であり、60〜70メートルに最高速度がくる選手は後半型。だが、たとえ後半型の選手でも70メートル以降はスピードが落ち、その落ちをいかに小さくするかがテーマとなる。 朝原は、後半型の選手。しかし、「ゴール前、ぐんと伸びて、朝原の優勝」という表現は誤まり。他の選手との比較で、そう見えるだけで、ゴール前でスピードが上がることは、ありえない。 最高速度を記録したあとは、エネルギー不足となって、スピード低下を余儀なくされてしまう。スタートから30メートルまでの加速で、省エネできるなら、最高速度を記録した後のスピードの落ちを小さくする効果が期待できる。100メートルでも、前半を省エネでいけることは大きな武器となる。 「準決勝というのは、それは、もう何度も走っていますから」 初めて準決勝に進んだ96年アトランタ五輪以降、「目標は、決勝進出」であり続けた。35歳で、それが実現するなら、本当にすばらしいことだろう。競技年齢にも、新たな視野が開けてくる。 (おわり) (2007年8月17日 読売新聞)
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