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(2)クラブ 市民会員と共に

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陸上クラブのランニング教室で市民ランナーを指導することもある嶋原

 トップアスリートと市民ランナーが、肩を並べて目標を語り、ともに駆ける――。こんな夢を描いて実業団女子駅伝の強豪・資生堂の元監督、川越学さん(45)は会社を辞め、今春に陸上クラブ「セカンドウィンドAC」を設立した。世界選手権大阪大会を目前に控え、クラブを根付かせようと奔走する。

 企業が業績悪化を理由に陸上部を廃部し、成績の伴わない選手が退部していく姿を幾度も目の当たりにしてきた。「資生堂は陸上部に配慮してくれたし、感謝している。でも、会社の意向や選手の成績に関係なく、誰もがそれぞれの目標に向けて挑戦できる環境を作りたかった」

 どんなクラブを目指すのか、数年前から悩み続けた。そんな時、理想とするスポーツクラブに出会った。それは、世界的な人気を誇るスペインサッカーの強豪「バルセロナ」。クラブの根幹をなすのが「ソシオ」と呼ばれる仕組みだ。

 ソシオはスペイン語で「パートナー」の意味。クラブを愛する市民が会費を払ってソシオとなり、バルセロナはその会費で運営されている。会員は世界中に約14万人。だから、オーナー企業は存在せず、ソシオはクラブ会長選挙への投票権を持ち、充実したスポーツ施設を利用できる。「クラブと一体の存在」だ。

 日本には、趣味や健康のために走る人は数多い。市民ランナーの情熱で、五輪や世界選手権に出場するトップ選手を支えてもらえたら――。構想は膨らんだ。

 川越さんと志をともにして資生堂から移籍した世界選手権女子マラソン代表の嶋原清子らと設立してから約4か月。所属選手が会員を指導するランニング教室を19回開き、7月には会員と長野・菅平で初めての合宿を行った。合宿中、会員から「指導のお礼に」と、嶋原に激励のワインが手渡された。「舞台は違っても、みな同じランナー。会員が懸命に走る姿に力をもらっている」と嶋原。目指す方向は見えてきた。

 難しさもある。川越さんは「知名度不足で会員が集まらず、初めてのことでノウハウもない。経営は正直、しんどい」と言う。だが、クラブから世界陸上には、嶋原とともに女子マラソン補欠の加納由理、そして英国代表のマーラ・ヤマウチが選ばれている。陸上に注目が集まる今は、大きなチャンスだ。「いつか、全国の陸上好きが集まる場所にしたい」。夢を信じている。

地域とスポーツクラブ
 ドイツでは1950年代半ばからグラウンドなどを整備する「ゴールデン・プラン」に取り組み、各地域には計8万に及ぶクラブが存在する。日本でも、サッカーJリーグが「地域密着」を理念に掲げ、地元市民に施設を利用してもらうなどの取り組みをしている。
2007年8月15日  読売新聞)
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