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経営者はビジョンを熱く語れ

テクノロジーは進化したのに

 ちょうど1年前のこのコラムの題名は「スマートフォンは必須アイテム」というものでした。

 ・以前は難しかった動画の閲覧がいつでもどこでもできるようになり、個人投資家が企業情報を収集するにはスマートフォン(高機能携帯電話)は欠かせない。
 ・スマートフォンの登場は、企業側のIR(投資家向け広報活動)に対し大きな影響を与えることは確実だ。
 ・まず動画の重要性がますます高まることに対応して、動画を通じて個人投資家にどのようにしてインパクトのあるメッセージを届けるかに各企業の工夫が進んでいくだろう。
 ・スマートフォンはTwitterやFacebookといったSNSの利用を前提としているので、わかりやすくかつ迫力のあるプレゼンテーションの評判が多くの投資家に広がり、注目度が高まるという現象も出てくるかもしれない。

 こんな要旨でした。

 そんな私が世の中の動きからみるとかなり遅ればせながらですが、「iPad2」を買いました。スマートフォンでもYouTubeなど動画は閲覧できますが、やはり画面が小さいことは否めません。これに対しiPad2は画面の大きさといい、鮮明さといい、軽さと言い、私が今更言うまでもなく、手軽にどこでも動画を見るには最適です。スマートフォン、タブレット端末といったデバイスの急速な進歩は、そのうえで展開されるコンテンツやサービスをより一層魅力的なものにしていくのは間違いありません。

 しかし…

 以上述べたようなIRの進化の中で、今までにはなかったような熱さで投資家に訴えかける経営者の姿は、残念ながら少なくとも私の見ている範囲ではまだ登場していないようです。もちろん、多くの企業がそれぞれ真剣に取り組んでいることとは思いますが、まだ説明会当日のプレゼンテーションをオンデマンドで見られるに過ぎないという状況のようです。

 時間的な都合や地理的な問題から当日参加できなかった個人投資家がプレゼンを聞くことができたり、当日参加した人でも、もう一度聞いてみることができるという点では大変便利な機能ではありますが、これだけデバイスが進化している割には、残念ながら1年前とほとんど変化がないように感じます。

 たしかにIRというと、「数値の説明」に重点を置く必要性が高いという点があるかもしれませんが、もう少し「ビジョン」とか「夢」とか「哲学」といったものを伝えてもらいたいと思います。

 そういう意味では、以前から話題になってはいましたが、その死去によって改めてクローズアップされた、“Stay Hungry, Stay Foolish”で有名なスティーブ・ジョブズ氏のスタンフォード大学卒業式でのスピーチのような動画プレゼンがあったら、良いですね。

 もちろん経営者個人のキャラクターによるところが大なので、誰でも彼と同じようにできるわけではありませんし、決して同じようにやる必要はありません。自分の思いがしっかりとあるなら、それを伝えることは可能なはずです。

 IRに積極的、先進的に取り組んでいる企業の奮起を期待したいものです。

2012年2月16日  読売新聞)
プロフィール
保阪 薫
株式会社インベストメントブリッジ 代表取締役会長 社団法人日本証券アナリスト協会 検定会員
「個人投資家と企業を結ぶ架け橋」として、個人投資家向け説明会やインターネットを利用した相互理解の場を提供。
保阪さんの写真


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(2012年5月22日)[全文へ]

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