実態が伴わない“名ばかり管理職”、残業代を請求できる?
支社長であっても管理監督者ではないとされた判例も!
管理監督者該当性を否定した裁判例として、例えば、銀行の支店長代理相当の職にある者につき、通常の出勤時間に拘束されて出退勤の自由がなく労働時間について裁量権を有しないこと、また、部下の人事考課や銀行の機密事項に関与した機会が一度もなく、経営者と一体的な立場にあるとは全くいえないことから、管理監督者には当たらないとした判例(静岡地裁昭和53年3月28日判決)があります。
また、会社の本社主任及び工場長等であった者について、大阪高等裁判所平成元年2月21日判決は、両者に支給されていた役職手当は時間外勤務手当の基礎とされていたこと、出社、退社の勤務時間等は一般従業員と全く変わらなかったこと、経営者と一体的立場にあったとはいえないこと等から、管理監督者に当たらないとしています。
さらに、話題になった裁判例として、相談者が挙げているマクドナルド判決があります。
同判決は、当該ファストフード店の店長の権限について、「店長は、店舗の責任者として、アルバイト従業員の採用やその育成、従業員の勤務シフトの決定、販売促進活動の企画、実施等に関する権限を行使し、被告の営業方針や営業戦略に即した店舗運営を遂行すべき立場にあるから、店舗運営において重要な職責を負っていることは明らかであるものの、店長の職務、権限は店舗内の事項に限られるのであって、企業経営上の必要から、経営者との一体的な立場において、労働基準法の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与されているとは認められない」としています。
また、店長の勤務態様については、「店長は、自らのスケジュールを決定する権限を有し、早退や遅刻に関して、上司であるOC(筆者注:「オペレーション・コンサルタント」の略)の許可を得る必要はないなど、形式的には労働時間に裁量があるといえるものの、実際には、店長として固有の業務を遂行するだけで相応の時間を要するうえ、上記のとおり、店舗の各営業時間帯には必ずシフトマネージャーを置かなければならないという被告の勤務態勢上の必要性から、自らシフトマネージャーとして勤務することなどにより、法定労働時間を超える長時間の時間外労働を余儀なくされるのであるから、かかる勤務実態からすると、労働時間に関する自由裁量性があったとは認められない。」としています。
さらに、店長に対する処遇については、「店長の賃金は、労働基準法の労働時間等の規定の適用を排除される管理監督者に対する待遇としては、十分であるといい難い。」と判断し、結論としては、店長は管理監督者にあたらないと判示しています。
ちなみに、参考までに、管理監督者該当性を否定した裁判例を、以下に挙げておきますが、非常に多種多様な肩書であることがおわかりいただけると思います。中には、「支社長」の肩書の人まで管理監督者該当性が否定されている例があることには驚かれる方も多いと思います。このように、形式的な肩書だけで決まるのではないということを十分に認識していただきたいと思います。
- 地方銀行「個人融資部調査役補(支店長代理相当)」(静岡地方裁判所昭和53年3月28日判決)
- 広告、販売促進及びパブリックリレーションズ等の業務を行う会社「アートディレクター」(東京地方裁判所昭和59年5月29日判決)
- 生コンクリートの製造販売等を事業とする会社「主任」(大阪高等裁判所平成元年2月21日判決)
- タクシー会社営業センター「係長」「係長補佐」(京都地方裁判所平成4年2月4日判決)
- 書籍等の訪問販売を主たる業務とする会社「販売主任」(東京地方裁判所平成9年8月1日)
- カラオケ店「店長」(大阪地判平成13年3月26日判決)
- 建設会社「現場監督」(大阪地判平成13年7月19日判決)
- 学習塾経営会社「営業課長」(札幌地判平成14年4月18判決)
- ホテル「料理長」(岡山地判平成19年3月27日判決)
- 留学・海外生活体験商品の企画,開発,販売等を業とする会社「銀座支社支社長」(東京地判平成20年9月30判決)
本件ご相談について
本件ご相談者は、「主任」の肩書をもらい、主任手当として3万円を支給されていますが、勤務実態は肩書のなかった時代と何ら変わらず、ほかの従業員より遅く出勤したり早く帰ったり自由にできるわけでもありません。労務管理を任されたり、会社の経営への関与などないわけであり、管理監督者該当性が否定される典型的な場合かと思われます。
第9回の事例での回答と同じく、相談者の方は、上記のような説明を前提にして、きちんと会社と交渉し、
| プロフィール | |
|---|---|
|
蒲 俊郎 (かば・としろう)
弁護士(第二東京弁護士会所属)
城山タワー法律事務所代表 http://www.shiroyama-tower.com/ 桐蔭法科大学院・教授 http://www.cc.toin.ac.jp/univ/law/teacher/kaba.html 桐蔭法科大学院・法科大学院長 http://www.cc.toin.ac.jp/univ/law/info/message2.html 日本法律家協会会員、日本私法学会会員、情報ネットワーク法学会会員他 専門分野は、電子商取引全般、労働事件(使用者側)、会社商事関係全般等 多数の企業の顧問弁護士として日々活動するほか、複数の上場するネット企業の社外監査役なども務める。他方、2010年4月、ロースクールのトップである法科大学院長に就任し、多忙な弁護士業務の傍ら、次の時代を担う法曹の育成にも注力している。 |
![]() |





















