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「ケイゾク」…新時代開いた刑事もの

名作へのリスペクトも

イラストレーション・いわしま ちあき

 「太陽にほえろ!」「西部警察」「あぶない刑事」「踊る大捜査線」「相棒」など、刑事が主人公、あるいは警察が舞台となっているドラマはこれまでに数多く放送されてきました。登場人物が個性的ですし、どの作品も記憶に深く刻まれています。

 今回紹介する「ケイゾク」(1999年)もすごくハマった作品のひとつ。本作は過去の刑事ドラマへのリスペクトを感じさせつつも、2000年代以降につながる斬新でエポックメイキングな刑事ドラマという意味でも、今改めて注目したい作品です。

 主人公の柴田純は、東大法学部卒のキャリア警察官。通勤中のバスの中で、ほかの人が読んでいた東大の過去問や司法試験の問題を瞬時に解いてしまう場面がありましたが、頭脳明晰(めいせき)でずば抜けた洞察力を持った天才。父親も多くの難事件を解決してきた警察官だが、実はそれは小学生だった柴田が解いたものでした。

 謎を解いた時の決めゼリフは「…あの、犯人分かっちゃったんですけど」です。それほどの天才ですが、いつも同じ服(しかも野暮ったい感じ)を着ていて、何日も風呂に入らなくても気にならないらしく、女性としての魅力はまったく感じられないキャラクターになっています。その柴田を中谷美紀が演じているんですが、そのギャップが面白く、ハマリ役に。この“柴田純”という役名、実は「太陽にほえろ!」で松田優作が演じていた“ジーパン”刑事の本名なんです。そういうところにもリスペクトが感じられますね。柴田が「なんじゃこりゃ!」って言う場面もありますから。

一見、ヒマな部署

 柴田が3か月の研修期間に配属されたのは、警視庁捜査一課弐係。捜査一課とはいえ、殺人事件などの捜査で第一線で活躍する“一係”と違い、弐係は迷宮入りしそうな事件を建前上“継続捜査”しているヒマな部署です。ここに所属する刑事たちも個性的な面々ばかり。

 柴田とコンビを組む真山徹は元公安の警部補。無愛想で仕事へのやる気もまったく感じられません。柴田に対して頭を(たた)いたり、キツくつっこんだりする場面が多く見られます。柴田が突飛(とっぴ)な行動に出た時には「しーばーたー!」と大きな声で制止することも。真山には、妹が集団に暴行されて自殺に追い込まれたという悲しい過去があります。妹を死に追いやった少年たちのリーダー、朝倉裕人(高木将大)を何年にもわたって真山は監視し続けているんです。制裁を加える機会をうかがいながら。一見クールだけど、朝倉に対する執念のような狂気さえ感じさせる真山を、渡部篤郎が見事に演じ切っています。

 その他、雅という名前の女子高生と不倫している弐係係長の野々村光太郎(竜雷太)、日本舞踊など多くの習い事をしている近藤昭男巡査(徳井優)、マル暴出身で大きな身体が特徴の谷口剛巡査部長(長江英和)が弐係のメンバーです。野々村は竜雷太が「太陽にほえろ!」で演じていたゴリさんを思わせる場面も見られます。

後半はシリアスに

 「ケイゾク」は全11話。前半から中盤にかけては、遠距離での殺人のトリックを解明したり、密室殺人の謎を解いたり、ひとりで泊まると必ず死ぬと言われている老舗旅館のからくりを見破ったり、失踪した人間の行方を霊視する超能力者と対決するなど、1話完結で物語は進んでいきます。

 ところが、世田谷区役所に勤める大沢麻衣子(西尾まり)が自殺する事件が起こり、それをきっかけに大きく展開していくことになりました。大沢は柴田の唯一の親友だったのですが、彼女の死が真山が追っている朝倉と関連があることがわかり、警察内部の人間を含めて、誰が味方で誰が敵なのかも分からないぐらい、混沌(こんとん)とした展開に…。1話完結の時はコメディー要素が多かったのですが、後半は全体的にシリアスな雰囲気になっていったのも大きな特徴と言えるでしょう。

 定年間近の警部補・壺坂邦男(泉谷しげる)、捜査一課一係の庶務・木戸彩(鈴木紗理奈)、弐係を蔑視している管理官・早乙女仁(野口五郎)といった登場人物が後半の物語を面白くしてくれている。特に野口五郎の怪演は強く印象に残りましたね。

 「ケイゾク」は連ドラとして放送された後、同年12月にスペシャルドラマ「ケイゾク/特別篇 PHANTOM〜死を契約する呪いの樹」が放送され、さらに翌2000年には映画「ケイゾク/映画Beautiful Dreamer」も劇場公開されました。それだけ反響の大きかった作品だと言えるでしょう。

続編的な作品も

 もっと「ケイゾク」の世界観を楽しむために、オススメのドラマがあります。それは2010年10月から12月にかけて放送された「SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿」です。IQ201の天才的な頭脳を持っているんですが、餃子(ぎょうざ)が大好きで人前でゲップをしたり舌打ちをしたりする女性刑事・当麻紗綾(戸田恵梨香)と元SITの堅物捜査官・瀬文焚流(加瀬亮)のコンビは、柴田と真山のコンビを彷彿(ほうふつ)とさせます。「ケイゾク」の続編的な作品ということで、野々村(竜雷太)と近藤(徳井優)も登場! 野々村はこのドラマでも雅という名前の女性と不倫しているが、どうやら「ケイゾク」の時の雅とは別人のようです。

 「ケイゾク」「SPEC」の演出を手掛けたのは、映画『20世紀少年』シリーズで監督を務めた堤幸彦。コメディーとシリアスさが混在した堤ワールドをもっと楽しみたいという方には、「TRICK」シリーズもオススメです。自称天才マジシャン・山田奈緒子(仲間由紀恵)と怖がりだけどプライドの高い物理学者・上田次郎(阿部寛)のコンビも、柴田&真山、当麻&瀬文に負けないぐらいの個性的な組み合わせです。「ケイゾク」第7話に登場した高田万由子が演じた画廊のオーナーの名前が確か“山田菜穂子(やまだなほこ)”でしたね。これも隠れたつながりなのかも。

 その他にも、小ネタがいろんなところにちりばめられているので、放送時に()た人ももう一度観てみると何かを発見できるかもしれませんね。

2012年10月8日  読売新聞)
プロフィール
田中隆信  (たなか・たかのぶ)
1969年、三重県生まれ。学年誌、音楽情報誌、ゲーム雑誌などの編集を経て、フリーランスのライター、エディターに。以後、俳優・女優・タレント・ミュージシャンを取材。小さい頃からテレビドラマが好きで、現在も録画機器を駆使して多くのドラマをチェック中! 特に好きなジャンルはミステリーとコメディー。

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