現在位置は です

本文です

漁期わずか2か月のタラを食う…秋田・にかほ市

 寒帯や亜寒帯の海に生息するタラは「鱈」と書く。東北沿岸部の冬の特産品だ。産卵期を迎える1〜2月の短い漁期、北日本沿岸の各地から出漁し、この海の恵みを使った料理が食卓をにぎわす。古くからタラ漁を行う秋田県にかほ市を訪ねた。

冬の味覚「いっぺ食ってって」

地元では「ざっぱ汁」と呼ばれるタラ汁

 にかほ市は平成17年、県南の仁賀保(にかほ)町、金浦(このうら)町、象潟(きさかた)町が合併して生まれた。「市の魚」はタラ(マダラ)。風雪舞う真冬、しけのやむ日を狙って金浦港からトロール船が出航し、体長数十センチ〜1メートル超のタラを水揚げする。産卵期を過ぎると市場価値が下がるので、漁期は年末からせいぜい2月中旬まで。2か月足らずしか味わえない。

 旧金浦町の冬の風物詩が「掛魚(かけよ)まつり」。豊漁や安全を願う住民たちが毎年立春の日、タラをつるした棒を担ぎ、地元の金浦山神社に奉納する奇祭で、「タラまつり」とも呼ばれる。祭りの起源は不明だが、金浦のタラ漁の歴史は古い。

タラの白身、アラ、内臓のほか、野菜をたっぷりを入れるタラちり

 金浦町史によると、江戸初期の正保年間に越後の人により漁法が伝えられた。当時は()を操る貧弱な木船で空模様も勘頼り。難破する船が多く、元文2年(1737)には86人が亡くなったと記録にある。その頃、タラは年貢(小作物)として納められていたという。

 「冬のタラとハタハタ、春のカレイ、夏の岩ガキ、秋のサケと、こごでは季節の物、いっぺあっがらよ。タラは白子、卵、内臓、それにアラを使うから鮮度が命。旬が短いんだ」とは金浦港の近くで旅館を営む齊藤三男さん(69)。明治24年に旅籠として齊藤さんの曾祖母が開業し、旬の食材を使った料理を出してきた。「うんめから、いっぺ食ってって」と顔をほころばせる齊藤さんに、タラちりとタラ汁の作り方を聞いた。

白身よりもアラに価値

毎年2月4日に行われる掛魚まつり(写真:にかほ市観光協会)

 タラちりは簡単だ。昆布でダシを取り、タラの白身とアラ、肝、白子のほか、野菜などを入れればできあがり。アラからダシが出るので、味付けは必要ない。ポン酢につけて食べれば無類のおいしさ。

 タラ汁はアラ(中落ちを含む骨、頭)と肝のみそ汁。昆布のダシ汁に肝を入れ、火が通ったらアラを加えてみそを溶く。ネギをのせれば完成だ。白身を入れてもいい。「金浦では、ざっぱ汁っていうんだ。ざっぱは方言で魚のアラのこと。白身よりざっぱのほうが価値があるんだす」と齊藤さん。

 これは青森県の郷土料理、じゃっぱ汁に似ている。じゃっぱは「雑把」の(なま)りで、骨や内臓などのアラを意味する。異なるのは野菜や豆腐を入れる点。にかほ市に近い山形県庄内地方のどんがら汁も同様で、どんがらがアラを表すが、白身を入れる点が違う。白身を乾燥させた棒ダラや干しダラは北前船に乗って運ばれ、京都の名物にもなった。それぞれの調理法、呼び方でタラを食べてきたのだ。

 たしかにタラ一匹から、様々な料理が作れる。骨や頭からは良いダシが取れるし、肝は汁や鍋料理と絶妙な相性だ。軟らかい白身は鍋に入れるか昆布締めにすると身がしまって抜群の味に。白子は軽く湯通しして刺し身に、卵や胃袋はしょうゆなどで味付けして酒のさかなにする。捨てるところがない。(文/福崎圭介)

 (続きは旅行読売3月号でどうぞ)

プロフィール
福崎圭介  (ふくざき・けいすけ) 
旅行読売出版社 編集部
1975年生まれ。旅の月刊総合雑誌「旅行読売」では、郷土料理をテーマにした連載「ふるさと食風土記」の執筆、撮影を担当している。好物は青魚とパスタ料理。最近また料理を始めたが、キッチンが狭くて悪戦苦闘。
2012年2月22日  読売新聞)


現在位置は です


おすすめ



 靴や時計のように、バッグをいくつか持っているという方は多いと思います。私もそうなんですが、いろいろなバッグを持っている中でも、ひとつ、本当に使い勝手が良くて長く使える“本物”があったらいいなと思いませんか。
(2012年5月22日)[全文へ]

PR情報

PR

お墓・ハカダス
ブランディア
大手町モール
キャノン