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    【震災6年】「お姉ちゃん、いつもありがとう」

     もしも、天国へ思いが届くなら――。宮城県石巻市の佐藤珠莉じゅりさん(10)は幼稚園の時、アニメの登場人物がほほ笑むピンクのノートに、覚えたての平仮名で亡き姉・愛梨あいりさん(当時6歳)への思いをつづった。

    • 夏の日差しと海からの風が交わる電話ボックスで、珠莉さんは受話器をずっと耳に当て続けていた(7月2日、岩手県大槌町で)
      夏の日差しと海からの風が交わる電話ボックスで、珠莉さんは受話器をずっと耳に当て続けていた(7月2日、岩手県大槌町で)

     「あいりがいればたのしいのに じゅりはたのしくない あいりにかえてきてほしい ねがいはそれだけ」(原文ママ)。震災前日、初めて姉妹で留守番をしたご褒美に、イチゴサンドを頬張った姉はその4日後、幼稚園の送迎バスが津波にのまれ、焼け焦げた車内から見つかった。

     「ママ、これなーに?」小さくなった姉が納まる棺をぽんぽんとたたいた珠莉ちゃん。「早く愛梨を迎えに行って」と母・美香さん(42)にせがんだ。「愛梨はお星さまになったの」。母の言葉に、声を上げず大粒の涙を流した。

     震災から6年半。七夕の短冊やメモ帳、絵本の感想文、小学4年生になった珠莉さんの書く文章には、姉が学べなかった漢字が増えてきた。数年前まで3月になると、腹痛を訴えたり「抱っこして」とぐずったりしたが、今では「友達と帰る」と下校時の母の迎えを断ることが増えた。「幼くても遺族。あの子なりに向き合い続けてきたのかな」と美香さんは思う。

     今年7月、母子で岩手県大槌町にある「風の電話」を訪れた。震災で戻らぬ人に思いを伝える天国への黒電話を耳に当て、珠莉さんは語りかけた。

     「お姉ちゃん、いつも助けてくれてありがとう。中学生になったんだね」

     珠莉さんの心で生き続ける13歳の愛梨さんは今、どんな制服姿だろうか。

    (写真と文 関口寛人)

    • 珠莉さんがつづる姉への思いの数々。「いつまで書いてくれるんだろう」と母は大切に保管する。震災前、愛梨さんから毎日のようにもらっていた手紙や似顔絵は「永遠にもらえるもの」だと美香さんは思っていた(9月1日、宮城県石巻市で)
      珠莉さんがつづる姉への思いの数々。「いつまで書いてくれるんだろう」と母は大切に保管する。震災前、愛梨さんから毎日のようにもらっていた手紙や似顔絵は「永遠にもらえるもの」だと美香さんは思っていた(9月1日、宮城県石巻市で)
    • 震災前、写真館で着物姿を撮った(=フォトサロンあい撮影)。ピンクから水色、みかんからメロン、珠莉さんの好きなものはいつしか姉と同じになってきた。駄菓子屋に行けば2人並んで食べたきなこ棒を10本買って祭壇に供える
      震災前、写真館で着物姿を撮った(=フォトサロンあい撮影)。ピンクから水色、みかんからメロン、珠莉さんの好きなものはいつしか姉と同じになってきた。駄菓子屋に行けば2人並んで食べたきなこ棒を10本買って祭壇に供える

    2017年09月11日 15時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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