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「発射誤発表」、確認怠り次々伝言

千葉県旭市にある警戒管制レーダー「FPS−5」(3日午後、読売ヘリから)=菅野靖撮影

 北朝鮮のミサイル発射に備えた厳戒態勢の中、政府は4日、「北朝鮮から飛翔体(ひしょうたい)が発射された模様」という誤った情報を発表した。防衛省の警戒管制レーダーが、ミサイルとは別の航跡を探知し、その情報が確認されないまま流れてしまったというのが経緯だ。一刻を争う状況の中で、誤った情報は、どうして伝えられたのか検証する。

 ◆発端◆

 防衛省A棟地下3階にある中央指揮所では、複数の部屋に分かれて発射情報の収集が続けられていた。4日午後0時16分、「ミサイル発射」の情報が流れた瞬間、ある部屋にいた幹部は「ウソだろう」と耳を疑ったと話す。自分の手元には発射を示す情報が何もなかったからだ。

          ◇

 危機管理への信頼を失墜させる今回の誤発表は、千葉県旭市に置かれた防衛省の最新型警戒管制レーダーが、日本海上空を通過した「何らかの航跡」を探知、それが「ミサイル発射情報として伝達された」(防衛省)ことが発端だった。

 本来、北朝鮮のミサイル発射の第一報は、高度約3万6000キロ・メートルで監視する米軍の早期警戒衛星(DSP衛星)が、ミサイルを発射した時に発せられる熱(赤外線)を探知し、その情報が在日米軍司令部(東京)を経由して防衛省中央指揮所に伝えられる。

 このほか今回は、米軍の弾道ミサイル観測機RC135Sコブラボールが、発射基地のある北朝鮮北東部の舞水端里(ムスダンリ)周辺を監視飛行し、日本海には日米のイージス艦が展開し、その上空では、航空自衛隊の空中警戒管制機(AWACS)が目を光らせていた。

 重層的な探知態勢の中で、なぜ警戒レーダーの情報が独り歩きしたのか。

 ◆ガメラレーダー◆

 発端となったレーダーはその形状から、通称「ガメラレーダー」と呼ばれる。2006年7月、北朝鮮が7発の弾道ミサイルを日本海に連射した際にも情報収集の役割を担った。

 しかし、設置場所の千葉県旭市から朝鮮半島方向にレーダーを向けた場合、途中に日本アルプスなどがあり、斜め上方に向けてセットしなければならない。06年の時は仰角を4〜6度に設定したが、ミサイルの弾道が高度100キロ程度と低く、航跡をとらえることはできなかった。

 防衛省は今回、北朝鮮の発射基地まで障害物のない秋田・男鹿半島など全国4か所の空自のレーダーで発射や航跡情報を収集し、舞水端里に照準を合わせられないガメラレーダーは、主に発射後の航跡の追尾を担うことになっていた。

 ◆緊迫の日本海◆

 北朝鮮のミサイル発射予告期間が迫る中、日本海とその上空では情報収集戦が繰り広げられている。「何らかの航跡」は、そうした状況の中で探知された。

 防衛省幹部は「日本海や朝鮮半島周辺では、日米の防衛体制やミサイル発射台の状況を撮影する民間の商業衛星や、周辺国の軍事偵察衛星が頻繁に周回している」と話す。今回の「何らかの航跡」について、「人工衛星の軌道とミサイルの軌道を見誤った可能性が高い」と打ち明ける。

 ◆複合ミス◆

 今回の誤発表には、二つの決定的なミスがある。

 その一つは「何らかの航跡を探知」という情報が、自衛隊の複数の部署を介するうちに、伝言ゲームのような形で間違って伝わってしまった点だ。とりわけガメラレーダーの情報を、ミサイル防衛(MD)システムを指揮する航空総隊司令部(東京・府中)の担当者が、「SEW(satellite early warning)入感」という米軍の早期警戒衛星からの発射情報と思い込んでしまったのは、致命的でもある。

 さらに二つ目のミスは、「航跡探知」という情報に加え、「SEW入感」という情報が航空総隊から伝えられた同省中央指揮所で、実際に早期警戒衛星が発射を探知したかどうかを確認しなかったことだ。

 米国が早期警戒衛星でミサイルの発射を探知し、日本側に情報を提供すると、警報音が鳴り響くシステムだが、当時、警報音は鳴らず、しかも日米で共有する情報関係のパソコンなら、衛星の情報は簡単に確認できるという。だが、中央指揮所の担当者は、気にとめることなく官邸につながっているマイクに、ミサイルの発射を意味する「発射」と告げてしまった。

 同省幹部は「中央指揮所に設置されている早期警戒衛星のモニターに、何の表示もないことを精査すべきだった」とミスを認めた。海自イージス艦やその他の地上レーダーでは、何も探知しておらず、海自幹部は「様々な手段で監視しており、クロスチェックさえしていれば誤報は十分に防げたはずだ」と話す。

 (編集委員 勝股秀通、政治部 五十嵐文、社会部 石間俊充)

2009年4月5日00時40分  読売新聞)

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