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人生100歳時代を生ききるために 2017年5月31日(水)よみうり大手町小ホール

2017年6月28日

 長寿社会で充実した人生を楽しむ方策を考える「未来貢献プロジェクト」のシンポジウム「人生100歳時代を生ききるために 生ききる準備をしていますか?」(主催・経済産業省、共催・読売新聞社)が5月31日、東京都千代田区のよみうり大手町ホールで開かれた。

 慶応大の清家篤教授による「人生を豊かに生ききるために」と題した基調講演の後、「健康編」「お金編」の2部構成でパネルディスカッションが行われた。フリーアナウンサーの政井マヤ氏がコーディネーターを務め、富士フイルムの戸田雄三副社長、アクサ生命保険の松田貴夫取締役専務執行役、経済産業省の江崎禎英・ヘルスケア産業課長が取り組みや、今後の展望を語った。

主催:
経済産業省
共催:
読売新聞社

主催者あいさつ

「健康立国」へ政府一丸

吉本 豊氏吉本 豊氏

吉本 豊氏(経済産業省商務情報政策統括調整官)

 日本は男女ともに平均寿命が80歳を超える世界トップクラスの長寿国だ。世界の誰もが長寿を望むなか、世界に先駆けてその理想を実現しつつある。

 同時に増加の一途をたどる医療費や介護費、高齢化に伴う健康ニーズの多様化など、喫緊の対応が必要な社会問題が多数ある。政府では「健康立国の推進」へ向け、様々な政策に取り組んでいる。

 一つの役所で何かできるということではなく、あらゆる役所がすべての力を結集して取り組まないと解決できない課題だ。

 例えば、経済産業省では「次世代ヘルスケア産業協議会」を設立し、厚生労働省、観光庁などの関係機関とも連携して、必要な産業政策についての議論も行っている。

 協議会は基本理念として、「生涯現役社会の実現」を掲げている。定年で会社を辞めた後、第二の人生でも緩やかに経済活動、あるいは社会活動に参加していただく。

 誰もが役割と生きがいを持ち続け、人生を最後まで幸せに生ききることができる社会を構築することが、中心的な課題だと考えている。

 退職後も社会とつながり、健康で安心な生活を送るための環境づくりに取り組み、より豊かな社会の実現に貢献したい。

基調講演

日本の高齢化世界が注目

清家 篤氏(慶応大教授)

世界一の高齢国

清家 篤氏清家 篤氏

 日本は今、三つの点で世界に類を見ない高齢化を経験している。一つは高齢化の水準で、人口に占める65歳以上の割合が直近で約27%。今から20年しないうちに約33%、2060年ぐらいには約40%になる。日本は世界で最も高齢人口の比率が高い国であり続ける。

 もう一つは高齢化のスピードだ。日本は欧州の高齢化の先進国と比べると、だいたい2倍から4倍のスピードで高齢化が進んだ。

 三つ目は高齢化の奥行きの深さだ。高齢者に占めるさらに高齢の人の比率が高くなっている。現在、65~74歳と75歳以上の割合はほぼ1対1だが、「団塊の世代」がすべて75歳以上になる2025年には1対1・5、60年には1対2になる。

 日本で高齢化が進んだ理由は、経済が発展し、生活水準が向上したからだが、ただ長く生きればいいというわけでもない。健康な状態で長く生きる「健康寿命」、より長く働いて社会に貢献する「職業寿命」、資産を活用しながら生活する「資産寿命」が大切になってくる。

健康で長く

 長寿の基礎になるのが健康寿命だ。若い頃から気をつけ、健康診断や生活習慣病の予防に取り組むべきだ。健診などに熱心な自治体ほど、健康寿命が長いという調査結果が出ている。様々な社会活動に参加することも、健康に良いということがわかってきている。社会に貢献して、感謝されることこそが生きがいにつながる。

 健康寿命を延ばした上で、職業寿命を延ばす。日本の労働力人口は現在約6600万人だが、2030年には約5800万人に減少する恐れがある。労働力人口が減少すると、医療、介護、年金など社会保障の持続可能性が低下し、国内の生産、消費も衰えてしまう。年を取っても働く意思と能力のある人には、働き続けてもらうことが重要だ。

 幸いなことに、日本では高齢者自身の就労意欲が高い。これは他の先進国にはないありがたい条件だ。高齢者自身が「社会とつながっていたい」「健康のために働き続けたい」と考えている。できることなら、70歳代前半まで現役で働けるような職業寿命の延長が必要だ。

 資産寿命を延ばすことも求められている。日本人の貯蓄の3分の2は60歳代以上が保有しているという調査もあるが、年をとって、認知能力の問題が起きてしまうと、金融資産を持っていても運用できなくなる。

 高齢者の資金が普通預金に塩漬けにされると、投資が減少する。認知能力が低下してしまう前に、自分の意思を示して信託銀行や生命保険に預けておく仕組みを整える必要がある。

新技術の活用を

 ロボットや人工知能(AI)など新たな技術革新の波をよく「第4次産業革命」というが、海外の先進国では、新しい技術が雇用を奪うというイメージで捉えられがちだ。しかし、日本では新しい技術を活用することで労働力不足を解消し、健康寿命、職業寿命、資産寿命を延ばすことが可能になる。

 そういう意味で、日本は世界の高齢化のトップランナーだが、とてもありがたい条件に恵まれている。高齢者自身が高い就労意欲を持ち、働き続けて貢献したいという人が多い。

 まさに世界が注目する豊かな高齢社会のモデルになる。「人生100年の時代」を本当に喜ぶため、個人や企業が一体となって、健康寿命、職業寿命、資産寿命を延ばせる環境を整える必要がある。

パネルディスカッション

100歳時代に必要なこと

「抗酸化」で病気を予防

戸田 雄三氏(富士フイルム副社長 CTO(最高技術責任者))

戸田 雄三氏戸田 雄三氏

 写真フィルムの会社だった富士フイルムは、自らをトータルヘルスケアカンパニーと名付けた。診断から治療、予防まで、健康に関するすべてをカバーする。

 健康産業に参入したのは、社会の一番大事な課題だったからだ。「新風を吹かせたい」という思いで参入したので、一生懸命考えた。

 結論は、人は生きるために酸素を吸うが、その酸素によって細胞が少しずつ老いていくということ。金属がさびるように私たちの体もさびていく。年齢と共にさびるのは当然だが、急速にさびることが問題だ。原因はストレスや感染症、不必要な肥満にある。

 元気に長生きしようとしたら、ストレスをコントロールし、社会参加を通じて世の中の役に立つ必要がある。がんや糖尿病、認知症などは完全に撲滅することはできないが、免疫力や抗酸化を活用して発症を遅らせることはできる。予防的な医療を重視すべきだ。

 カラーフィルムで培った技術が抗酸化だ。カラー画像に紫外線が当たると活性酸素ができて色あせるが、競合他社に比べて色持ちがよいのは抗酸化の技術があるからだ。抗酸化の技術を活用し、化粧品やサプリメントを作った。

 フィルムは髪の毛や骨などと同じコラーゲンでできている。コラーゲンを使うことで治療に役立つ。

 カラーフィルムで培ったナノテクノロジーも生かすことができる。ナノテクノロジーでオイルの粒子をさらに細かくすることで体に吸収されやすくなり、薬の量が半分で済む。

 商品に寿命はあるが、技術には寿命はない。抗酸化やナノテクノロジー、コラーゲンなど培ってきた技術を駆使し、シミやしわ、認知症、リウマチ、白内障など、あらゆる健康の問題や病気に立ち向かっていきたい。

 心の面では、主体的に生きるための目標を持つことだ。具体的な目標を持ち、達成したら次の目標を作る。地域の自治会に参加するのなら、会計や自治会長を務めるなどの目標を持ってほしい。

 肉体や脳は老化するが心は老化しない。心の持ちようによって脳も体も大きく変わる。元気で楽しい100歳を達成しよう。

保険収入確保の一助に

松田 貴夫氏(アクサ生命保険取締役専務執行役 チーフマーケティングオフィサー)

松田 貴夫氏松田 貴夫氏

 アクサ生命保険は世界64か国で、保険や資産運用の提案を行い、1億700万人の顧客を擁している。

 日本では、給与や年金を含め退職後に得られる収入が十分でないと思っている人の割合が89%に上る。これは米国やドイツと比べても高い。特に若者の半分は、将来の公的年金に対して大変不安を覚えている。

 では、どうするか。「若い頃からしっかり貯金する」「投資で増やす」「働き続ける」という三つの選択肢がある。日本人の7割は投資によって損したくないと考えている。諸外国と違うところだ。

 若い世代はお金をためていっても、それだけでは将来不足が生じてしまうとすれば、何らかの形でリスクを取って、お金を増やさないといけない。

 保険会社は契約者に、楽しく、幸せで、健康な生活を送ってもらうという使命がある。楽しく生きるには、お金をどう使っていくかも非常に重要だ。

 我々のライフプランニングは、お客さんに夢を語っていただくところから始まる。何歳にどんな人と結婚したいのか、どんな家に住むのか、子どもは何人欲しいのか。

 使い道のないお金を用意することはあまり意味があるとは思えない。子どもにお金を残さず、死ぬまでに全額使い切りたい人もいるし、子どもに相続させたい人もいる。気持ちを聞くというのが我々のライフコンサルティングだ。

 契約者にどういうリスクを取ってもらうかは一番重要だ。20歳代では大きめのリスクを取ってもらうが、80歳代にリスクはおすすめしない。残りの人生に合わせてリスクを取ってもらいたい。

 お客さまに適切なリスクを取ってもらい、適切なリターンを得てもらうことが出来れば、保険商品も退職後の収入確保の役に立てる。一定のリスク資産を保有することで積極的な資産形成を行う「ユニットリンク」(有期型の変額保険)の提案も行っている。

 何より、契約者の楽しみにつなげていかなければいけない。人は楽しみを見つけることで行動が変わる。保険を通して、人々の楽しみをどうつくるか知恵を使っていきたい。

ワクワク感で生涯現役

江崎 禎英氏(経済産業省ヘルスケア産業課長)

江崎 禎英氏江崎 禎英氏

 高齢化にどう立ち向かうかについての関心が高いが、まずは常識を変えてほしい。誰もが健康で長生きしたいと願えば社会は必ず高齢化するが、問題は健康寿命だ。

 ある調査によると、男性の7割が年とともに体が弱り、2割が早めに体を壊す。ところが、残り1割は年を取っても元気な人たちだ。良い緊張感を持って、ワクワク感を持ち続ける人は年を取らない。生涯現役でいられる社会を作りたい。

 第二の人生を充実させるには、社会とつながってることが大事だ。まずはボランティア、そして畑仕事で土に触れること、そして体を動かすことだ。

 第二の人生になってから生活習慣を改めることは難しい。若い頃から生活を変え、笑顔でいられる状態で人生を生きてほしい。100歳になっても、80歳になっても「今が一番楽しい」と思うのは、第二の人生を生きるために一番大事だ。

 会社を定年退職すると、社会人までやめてしまう人が多いが、何も社会から切り離される必要はない。

 サービス付き高齢者住宅がはやっているが、経済産業省としては仕事付き高齢者住宅をやろうと考えている。社会とつながることで納得して人生を終えることが出来るからだ。

 具体的には、海外赴任経験を持つ人による学童保育での英語教育や、子どもに戦争体験を語ってもらう活動がある。目の前で起きたことの体験談を聞くことは、教科書でしか読んだことがない子どもたちにとっては、衝撃的なことだ。

 実は日本の年金制度では、一般の家庭であれば、退職後も月数万円稼ぐことができれば、平均寿命まで普通の生活を続けることができる。

 若い頃のようにばりばり仕事は出来なくても、高齢者には仕事を通して役に立っているという実感を持ってもらうことが一番だ。

 老人ホームを保育所の横に建て、子どもたちの見守りをやるのもいい。この施設があるからこの町は安全だとなれば、安心して親は働ける。親たちが安心して年金を払えば、退職後が楽になる。超高齢社会の理想な形になるだろう。

高齢者が輝ける社会に

政井 マヤ氏(司会・コーディネーター フリーアナウンサー)

政井 マヤ氏政井 マヤ氏

 パネルディスカッションのテーマ「100歳時代に必要なこと」を聞いた時、うれしいテーマというより、高齢化という重たいテーマだと思ったが、話を聞いて印象や意識が変わった。100歳時代に合った社会をどう作るのかを考えたい。

 お金は働いて堅実にためるのが日本人の国民性で、増やすためのリスクを取ることに慎重になりがちだ。

 ただ、これからは金融の知識を身に付けて、自分でリスクを取りながら資産を増やすという見方も必要になるだろう。長く生きることへの不安感を変えていくために、お金を増やすための情報を積極的に取っていきたい。

 高齢者は日本の財産のほとんどを持っていると言われる。高齢者の方々が、生き生きと輝いていられるのが日本にとって一番いい。

 健康寿命だけでなく、資産寿命、職業寿命を延ばし、仲間や自尊心といったものを大事にすることこそが、「100年の生涯を生ききる時代」の心の持ちようだと思う。

基調講演やパネルディスカッションに熱心に耳を傾ける来場者(よみうり大手町ホールで)
=奥西義和撮影

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