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【インタビュー】世界一の九州・沖縄に キリンビールマーケティング 執行役員九州統括本部長 竹内 博史氏

2015年12月1日

 キリンビールマーケティング九州統括本部(福岡市)は「世界一の九州・沖縄をつくろう。」を合言葉に九州・沖縄の歴史、文化、伝統を大切にしながら地域社会の活性化に努めています。最近では、地産地消にこだわったビール「一番搾り 福岡づくり」や世界遺産応援のデザイン缶製作が注目を集めています。未来に向けて九州・沖縄の潜在力をどう引き出していくのか。竹内博史・九州統括本部長にうかがいました。(聞き手は井川聡・読売新聞西部本社編集局次長兼経済部長)

世界遺産 応援に力

竹内 博史
85年早大法卒、キリンビール入社。人事総務部長兼キリンビールマーケティング執行役員総務部長を経て、2014年3月から現職。東京都出身。53歳。

??九州は初めての勤務だとお聞きしています。

竹内 昨年3月末に着任し、生まれて初めて九州で暮らすことになりました。豊かな自然、歴史に加えて人情がすばらしい。どこへ行っても受け入れていただき、心の温かい方が多い。また、『九州はひとつ』と言われますが、むしろ『九州はひとつひとつ』だと感じています。各県に個性がある。我々にできることを探して一生懸命盛り上げていきたいですね。

??一番気に入っているのは何でしょうか。

竹内 やはり食ですね。魚はもちろんですが、肉や野菜もいい。行く先々においしいものがあるんですね。長崎のハトシ(エビのすり身をパンに挟んで揚げた料理)、大分の鶏天、宮崎牛。熊本は馬刺しや辛子レンコンが有名ですが、私は巻いたネギを酢みそで食べる『ひと文字グルグル』が好きですね。どれもこれもビールのつまみに最高です。

??今年7月、世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」は構成資産23のうち21が九州・山口にあります。来年は「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が審議予定ですし、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」も2017年の登録を目指しています。応援に力を入れておられるそうですね。

竹内 『一番搾り』に構成資産を描いたデザイン缶を作り、1本につき1円を産業遺産国民会議などに寄付しています。明治日本の産業革命遺産では昨年9月と今年7月に、計約200万本のデザイン缶を発売しました。容器はアルミではなく、新日鉄住金八幡製鉄所製のスチール缶を使いました。地域のみなさんに喜んでもらいたいですから。

「一番搾り 福岡づくり 福岡工場限定醸造」第2弾のビール缶(裏)

産業革命遺産の構成資産をデザインしたビール缶

地産地消こだわり

??九州は人口、経済規模が全国の1割ですが、農業生産額は2割あります。特にビールの原料となる大麦は国内の3割を占める一大産地です。

竹内 通常の一番搾りは、九州産と海外産の大麦をブレンドしますが、限定販売の『福岡づくり』は、すべて福岡、佐賀、大分の大麦を使います。しかも、福岡と大分は100%当社の契約栽培です。水は福岡県朝倉市、缶は新日鉄住金八幡製鉄所製と九州産にこだわった商品です。今年5、6月に発売した第1弾が好評でしたので、今月から第2弾を発売しました。ぜひ通常の一番搾りと飲み比べてください。

??味はどう違うのですか。

竹内 地元の食材に合うよう、福岡工場(朝倉市)の醸造長が工夫を重ね、よりすっきりした味に仕上げています。アルコール度数も微妙に違います。一番搾りは『ラガー』に比べると元々すっきりしたうま味が特徴なのですが、さらにうま味成分が凝縮されています。

??福岡工場は来年50年になるとうかがいました。貴重な設備があるとも聞いています。

竹内 全国9工場のうち麦芽を作る製麦設備があるのは福岡だけです。つまり、福岡では、大麦の栽培から麦芽作り、生産まで一貫してできるわけです。地元の方とコミュニケーションを取りながらより品質の良いものを作る努力を重ねています。

??地産地消は全社的な取り組みなのですか。

竹内 そうです。9工場がそれぞれ独自の一番搾りを造っています。九州では3年前から『世界一の九州・沖縄をつくろう。』を活動の中心に据えて展開しており、世界遺産のデザイン缶や、『福岡づくり』もその中で生まれました。おかげさまで通常の一番搾りも売り上げが伸びました。飲み比べされるのでしょうか、相乗効果で全体で19%増になりました。

??九州は本格焼酎王国でもあります。ビール以外のお酒はどうですか。

竹内 酒を楽しむ文化があるのは、九州らしくていいことだと思います。当社は『氷結』など酎ハイも発売しています。昨年、宮崎県産の日向夏を使った『氷結』を発売して好評でした。ビール以外でも地産地消を進めたいと思います。

50年迎えるキリン福岡工場

福岡工場(福岡県朝倉市)の外観

二条大麦に水を含ませ、発芽させる製麦作業

福岡工場で製造される「福岡づくり」

訪日客へアピール

??地元のお祭りやイベントにも積極的に参加されているようですね。

竹内 福岡マラソンに2年連続で参加し、完走しました。3年前にランニングを始め、フルマラソン参加は昨年が初めてでした。海岸線のコースを声援を受けながら走るのは気持ち良いだろうとエントリーしました。博多祇園山笠や唐津くんちなどの祭りにも顔を出すようにしています。地域全体が盛り上がって、パワーと勢いを感じますね。昨年は福岡県宗像市で行われたみあれ祭にも参加しました。荒れた玄界灘を船でパレードするのはすごい迫力でした。

??「世界一の九州・沖縄をつくろう。」という心意気が伝わってきました。

竹内 九州や沖縄を訪れる外国人も増えています。帰国した後も九州・沖縄の文化、食の情報を発信してもらえるよう、私たちも取り組みを継続していきたいと考えています。

九州・山口の世界遺産と登録目指す遺産

明治日本の産業革命遺産

世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」の<上>三池炭鉱の万田坑(熊本県荒尾)と<下>萩反射炉(山口県萩市)

 北九州市の官営八幡製鉄所や長崎市の軍艦島(端島)など、九州・山口を中心に8県の23資産で構成され、今年7月、世界遺産に登録された。

 薩摩、長州藩が幕末に手がけた反射炉や、明治後期の三池炭鉱、三菱長崎造船所など、西洋の技術を日本の伝統と融合させた日本の重工業(製鉄・製鋼、造船、石炭産業)の発展の歴史をたどることができる。

 幕末に西欧技術を取り入れて製鉄、紡績、ガラス製造などを試みた鹿児島市の旧集成館、佐賀県には日本最古のドライドック(船渠)である幕末の三重津海軍所跡などがある。三菱長崎造船所の大型クレーンなど、これまでの日本の世界遺産にはない稼働中の資産もある。

長崎の教会群とキリスト教関連遺産

世界遺産への登録を目指す<上>大浦天主堂(長崎市)崎津教会と<下>崎津集落(熊本県天草市)

 450年以上に及ぶ、日本でのキリスト教の伝播と浸透の道筋を示す歴史的遺産で、2016年度の世界遺産登録を目指している。

 1549年にフランシスコ・ザビエルが我が国に伝えたキリスト教は、九州を中心に広まった。しかし、豊臣秀吉に始まった禁教政策は、江戸時代に強化され、キリシタンは信仰を守るために潜伏を余儀なくされた。禁教下の1865年、潜伏してキリスト教を信仰してきた信徒十数人が、大浦天主堂でプティジャン神父に信仰を告白した出来事は「信徒発見」と呼ばれる。

 キリシタン大名の有馬氏の居城「日野江城跡」(南島原市)や、島原の乱でキリシタンが籠城した「原城跡」(同)、弾圧下で信仰を守った「平戸の聖地と集落」(平戸市)など14資産で構成されている。

「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群

世界文化遺産の登録を目指す候補に決定後に開かれた海上神幸「みあれ祭」(福岡県宗像市沖で、10月1日)

 沖ノ島の古代祭祀遺跡と、宗像三女神を祭る宗像大社との連続性が分かり、島を信仰の対象とする文化的伝統が現在まで継承されてきた世界的に希有な例として、2017年の世界遺産登録を目指す国内候補に決まった。

 沖ノ島は、宗像から北西60キロの玄界灘に位置し、宗像大社の「沖津宮」として島全体が境内だ。4世紀後半~9世紀末、航海の安全を願って祭祀が行われ、新羅製の金指輪や唐三彩など8万点の奉献品が残り、国宝に指定された。「海の正倉院」とも呼ばれる。

 遺産群は、「沖ノ島(沖津宮)」、宗像市沖の大島にある「中津宮」、同市本土の宗像大社「辺津宮」、大島北端の「沖津宮遥拝所」、沖ノ島祭祀を担った豪族・宗像氏の墳墓「新原・奴山古墳群」(福津市)。沖ノ島と大島に祭られた2女神のご神体を宗像大社辺津宮に迎える海上神幸「みあれ祭」が毎年10月に行われる。

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