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    ランニングに関するコラムやイベントの特集記事を掲載します。
    ドクター六花のランニング賛歌

    (44)不調でも全力で走る…そして強くなる

    年間30レース出場…加速するランニングライフ

    • マメの再発に苦しみながら京都マラソンを走り抜く
      マメの再発に苦しみながら京都マラソンを走り抜く

     僕が初めてレースに出場したのは1996年のこと。ほとんど練習しないで走ったハーフマラソンでしたが、()うようにしてフィニッシュした時のことは今でもありありと思い出せます。カラダは(つら)かったけど、全身を突き抜けるような爽快感と清々(すがすが)しさに、僕は大きな大きな感動を覚えました。

     その後しばらくは走らなかったのですが、2年後の1998年頃から、日常生活のなかに“走る”ことが習慣として定着してきました。最初は週に1、2回だったランニングが徐々に増え、1999年春にはフルマラソン(42.195キロ)を初めて完走。その後もランニングライフは加速度を増し、現在は週に5、6回走り、年間30レース近くを走る日々がずっと続いています。

     2007年に東京マラソンが始まってから、ランニングを取り巻く環境が大きく変わってきました。女性ランナーが増え、高機能でお洒落(しゃれ)なランニングウェアが出回るようになり、派手な演出で盛り上がる都市型マラソン大会が増えてきました。どちらかと()うと地味で渋い趣味であった“ランニング”が、華やかでお洒落なスポーツに変わってきたのです。

     「ランニングブームはいつまで続くのだろう…?」

     2007~2008年頃には一過性のものと思われていた日本人のランニング熱も、最近ではブームを凌駕(りょうが)し、ライフスタイルそして文化へと昇華している感もあります。

    「ファンランだから」…一生懸命走らないランナーが増えた

     2015年時点での日本のランナー人口は1000万を超えたと云われ、年間30万人近くがフルマラソンを完走しています。

     多くの日本人が“走る“ようになったことは大変に素晴らしく喜ばしいことなのですが、残念なことに一生懸命走らないランナーが増えているようにも感じます。

     「私はファンランだから…」

     ほとんどトレーニングしないでマラソン大会に参加し、スタート直後から談笑しながら歩く選手をけっこう見かけます。健康増進と云う目的のためであれば、<無理をしないでゆっくり走る>、更には<疲れたらすぐに歩く>と云う方法は非常に有効です。

     けれどもマラソンと云うスポーツは、もっとひたむきなものだと僕は思います。せっかくレースに出るのであれば、自分なりにトレーニングを積んで、最後まで頑張って走ることも大切だと考えています。

    制限7時間…都市型レースの“功罪”

     本気モードが低いランナーが増えた原因のひとつは、ここ数年のあいだに全国に立ち上がった都市型レースの多くが、制限時間を7時間に設定していることにあると思います。制限時間7時間とは、全行程の30~40%を歩いたとしても、フルマラソン(42.195キロ)をギリギリ完走することが出来る設定です。

    • 京都マラソンの前日にゼッケンをピックアップ
      京都マラソンの前日にゼッケンをピックアップ

     70歳のランナーが7時間かけてフルマラソンを完走することは、素晴らしいことです。反面、しっかりトレーニングを積めば4時間、5時間以内にフルマラソンを走ることが可能なランナーが、7時間近くかけて走って「フルマラソン完走しました」と公言するのにはちょっと違和感を覚えます。

     僕が適正と思うフルマラソンの制限時間は5時間。特例として60~69歳は6時間。70歳以上は7時間ではどうでしょう。

     「フルマラソン完走」の栄光は、誰でもが達成出来ることではなく、誰でもが“頑張れば”達成出来ることではないでしょうか。

     僕は年間に30近いレースを走ります。3年ほど前には11週間に13レースを走ったこともあります。これだけたくさん走っていると、すべてに絶好調で臨むことは到底不可能です。ただし、その日のベストを尽くすことを、僕は常に心掛けています。

     「絶好調ではないけど全力で走る」

     僕がレースに臨む場合の大切なポリシーです。

    大失速から2週間…京都へ“転戦”、納得のいく走りがしたい

     自己ベストを目指して大失速した別府大分毎日マラソン大会(2月1日)から2週間後、今度は京都マラソンを走りました。少しでも良い走りが出来るよう、京都マラソンまでの2週間には可能な限りの調整を試みました。

    • レースの朝。少々寒い…
      レースの朝。少々寒い…

     別府大分マラソンでは新調したシューズが合わず、マメが出来てしまったので、慎重に新しいシューズも選びました。全力でフルマラソンを走った2週間後に自己ベストを狙うことは困難ですが、キチンと納得のいく走りがしたいのです。

     2月15日午前9時、京都マラソンはスタートしました。7つの世界文化遺産を始めとした寺社仏閣や古都の自然、植物園や都大路、そして賀茂川などを巡る見どころ満載のコースを、1万7000人のランナーが走ります。

     熱狂的な応援と、素晴らしい景色が続くコースですが、アップダウンがあり、折り返しや鋭角なカーブも多い、難易度の高いコースでもあります。

     僕は3時間10~15分でのフィニッシュを目指して、1キロ4分30秒のペースでスタートしました。20キロまでは予定通りのペースで順調に走りました。まだまだ元気で気持ち良く都大路を走り続けます。

    マメが再び…悪魔の囁き「走っても、意味はないぞ」

     好事魔多し、22キロ過ぎの折り返しで、ほんのちょっと踏ん張ったところ、別府大分マラソンで出来たマメが再びビリッと痛み始めました。そこから先は一歩ずつが針を踏むような痛みです。追い打ちをかけるように冷たい雨が降ってきました。

     マメの痛みは走りを鈍らせ、1キロ4分30秒で刻んできたペースは少しずつ落ちてきます。失速する僕を後続のランナー達が次々と抜いていきました。

     立ち止まってしまいたい衝動が何度も僕を襲います。

     「マメが痛いのに走っても、意味はないぞ」

     悪魔の(ささや)きが僕の耳元で響きます。

    「苦しかったけど」駆け抜けた…小さな達成感が支え

     マラソンはメンタルの強さが要求されるスポーツです。一度でも妥協して歩いたら、次に苦しくなった時にまた歩いてしまうかもしれません。

     「この状況で頑張って走ることが、必ず次につながる」

     (くじ)けそうになる気持ちを自分で励ましながら、僕は走り続けました。

     賀茂川沿いで息をあげ、京都市役所の前で激痛に顔をしかめ、今出川通の最後の上り坂で(あえ)ぎ、京都大学の前を駆け抜け、平安神宮の赤い鳥居が見えてきました。熱狂的な沿道の声援に支えられ、42.195キロの旅が終わりました。

    • 苦しみながらも平安神宮にフィニッシュ
      苦しみながらも平安神宮にフィニッシュ
    • 走り終えたランナーでごった返すフィニッシュエリア
      走り終えたランナーでごった返すフィニッシュエリア

     3時間25分38秒…。

     フィニッシュしたあとは、マメの痛みで真っ()ぐ歩くことが出来ないほどでした。

     歓喜に沸き返るフィニッシュエリアで、僕は静かに足元のアスファルトを見つめていました。

     「苦しかったけど、最後まで頑張って走った…」

     この小さな達成感が僕を支えてくれるのです。

     マメで失速すると云う、本当に初歩的なミスで失敗した。2月のフルマラソン2レースでしたが、頑張って走ったことが少しだけ僕を強くしてくれたハズです。

    愉しい打ち上げ…どれだけ頑張って走ったのか、それが一番大切

    • ビアレストランで盛大に打ち上げ
      ビアレストランで盛大に打ち上げ
    • 皆さん、お疲れさまでした
      皆さん、お疲れさまでした

     レースのあとは気の合う仲間との(たの)しい打ち上げが待っています。僕の親戚が経営している老舗のビアレストランで、盛大に打ち上げを開催しました。

     仲間14人でビールを飲み、美味(おい)しい料理を食べ、大きな声で語りました。自己ベストで走ったランナーもいれば、故障が癒えずにほろ苦い結果に終わったランナーもいます。良い記録がでれば(うれ)しいのは当然ですが、この日までにどれだけトレーニングを積んだのか、今日のレースをどれだけ頑張って走ったのか、これが一番大切です。

     頑張った分だけ達成感は大きく、たとえ結果が伴わなかったとしても、ランナーとしての自分を強く大きくしてくれるのです。

    2015年02月27日 08時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    
    プロフィル
    福田六花 (ふくだ・りっか
     1965年2月24日、東京都生まれ。医師、ミュージシャン、ランナー。大学卒業後、外科医として勤務するうち、ストレスと暴飲暴食から93キロまで体重を増やす。31歳でランニングに夢中になり、30キロ以上のダイエットに成功。ランニングライフを極めるため、2002年に富士山麓の山梨県富士河口湖町に移住。現在は介護老人保健施設「はまなす」施設長(同町)をつとめ、マラソン、トレイルレースなど年間30レースに出場。レースのプロデュースや専門誌での連載などランニングの普及に力を注ぐ。フルマラソンのベストタイムは3時間06分01秒(2014別府大分マラソン)。 オフィシャルサイトはこちら。
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